妊娠中に情緒不安定になるのはなぜ?
妊娠中に情緒不安定になる原因にはマタニティブルーと妊娠うつ病である可能性があります。
マタニティブルーと妊娠うつ病について解説します。
マタニティブルー
マタニティブルーは妊娠中や出産後に起こる「一過性」の情緒不安定な状態のことです。正式名称は「マタニティブルーズ」といい、出産後におこる不安症のことをいいます。
しかし、近年では妊娠中や産後の不安症をまとめてマタニティブルーと呼んでいます。
マタニティブルーで現れる症状は下記です。
<身体的な症状>
- 不眠
- 食欲不振
- 過食
- 倦怠感
- 動悸
- 息切れ
- 頭痛
<精神的な症状>
- 気分が落ち込む
- 涙が出る
- 恐怖心や不安感
- 集中力の低下
- イライラする
- 自己嫌悪を抱く
- やる気がでない
- 忘れっぽくなる
マタニティブルーになる原因はホルモンバランスの変化やストレス、体力低下・睡眠不足が考えられます。
- ホルモンバランスの変化
出産前後は急激にホルモンバランスが変化します。急激な変化によって自律神経のはたらきが乱れ、情緒不安定につながるのです。
- ストレス
妊娠したことによって生活が大きく変化したり、行動が制限されたり、育児や母親としての責任にプレッシャーを感じたりなど、ストレスになることが増えます。
- 体力低下、睡眠不足
つわりで食事がしっかりとれなかったり、体の変化などで行動が制限されたりして体力が低下します。
また、まとまった睡眠時間が確保できず、睡眠不足になることもあります。
体力低下や睡眠不足によって、生活リズムが乱れて自律神経のはたらきが低下したり、ストレスを発散できなかったりといいことはありません。
もともと精神的疾患を抱えている人やサポートが得られない人、家族関係に問題がある人などがストレスを感じやすく、マタニティブルーになりやすいです。
マタニティブルーになりやすい時期は、妊娠初期~中期または産後1ヶ月と言われています。一過性のものなので、2週間程度で症状が治まります。
症状が長引くようであれば妊娠うつ病の可能性が高いので、かかりつけ医に相談しましょう。
妊娠うつ病
妊娠うつ病はマタニティブルーとは違い、病気です。情緒不安定な状態が3週間以上続くようであれば、妊娠うつ病である可能性が高いです。
下記症状が続くようであれば、医師に診てもらいましょう。
- 気持ちの浮き沈みが激しい
- 産後のことを考えると不安になる
- イライラする
- 食欲にムラがある
- 涙がでる
- 他者との交流が億劫になる
- やる気がでなくなる
- 眠れなくなる
妊娠うつ病になる原因は、身体の変化による身体的ストレスと精神的ストレスがあります。
<身体的ストレス>
- お腹が大きくなるなどの体の変化
- つわりや食欲不振
- 眠れない
- 体がだるい
- 便秘や下痢
<精神的ストレス>
- 出産後の生活に対する不安
- 子育てに対する不安
- パートナーが非協力的
- 母親になるプレッシャー
- 健康な赤ちゃんが生まれてくれるかという心配
妊娠中は身体的にも精神的にもストレスを感じることが多いです。
特に、過去に精神疾患になったことがある方や責任感が強い方、真面目な方は妊娠うつ病にもなりやすい傾向にあります。
妊娠うつ病は治療をする必要があります。情緒不安定な状態を放置せず、主治医に相談しましょう。
妊娠中の情緒不安定なときに起こる症状
妊娠中に情緒不安定になると、イライラしたり涙が止まらなかったり、メンタルが弱くなったりと様々な症状が現れます。
また、旦那さんがわかってくれず、それが原因でストレスがたまってしまうこともあります。
これから解説する症状が現れたら、情緒不安定になっている可能性が高いです。
情緒不安定な状態でいると、自分が病気になったり胎児に影響を与えたりといいことはありません。
自分の感情を無視せずに、休養をとるようにしましょう。
妊娠中の情緒不安定なときに起こる症状:イライラする
妊娠中は、情緒不安定になりやすく、普段は気にならないことも気になってしまったり神経質になったりと、イライラしやすくなります。
特にマタニティブルーの症状が現れ始める妊娠中期はイライラがひどいと感じる女性が多いです。
イライラする原因として、以下3点が考えられます。
- ホルモンバランスの乱れ
妊娠を維持するために、ホルモンが分泌されます。ホルモンが分泌されることで、妊娠前とホルモンバランスが変化するのです。
ホルモンバランスの変化が原因で、情緒不安定になりイライラすると考えられます。
- 精神的ストレス
妊娠による体型の変化やお腹の赤ちゃんの心配、出産への不安などによる精神的なストレスもイライラの原因となります。
また、食べ物や行動の制限なども精神的ストレスになります。
全てのものを制限しなければいけないわけではないので、制限しなくてもいい範囲を見つけ、ストレスをため込まないようにしましょう。
- 体力低下、睡眠不足
つわりで食事がしっかりとれなかったり、体の変化などで行動が制限されたりして体力が低下します。また、まとまった睡眠時間が確保できず、睡眠不足になることもあります。
体力低下や睡眠不足も情緒不安定になる要因です。
散歩やストレッチ、昼寝などをするだけでも気持ちの安定につながります。
妊娠中の情緒不安定なときに起こる症状:泣く、涙が止まらない
妊娠中に泣いてしまったり、涙が止まらなくなってしまったりすることがあります。妊娠中に涙が止まらないのは、マタニティブルーの特徴のひとつです。
ホルモンバランスや精神的ストレスによって、感情の起伏が激しくなり涙がでてしまうのです。
情緒不安定になり涙が止まらなくなってしまうのは、あなただけではありません。多くの妊婦さんが経験していることなので、自分がおかしいと思わないようにしましょう。
妊娠中の情緒不安定なときに起こる症状:旦那さんへのストレスがたまる
旦那さんがつらさや不安な気持ちをわかってくれないことが、ストレスになることもあります。
旦那さんは妊娠をしているわけではないので、つらさや不安な気持ちがわからずに、妊娠前と同じように接してきてしまうかもしれません。
また、知識がなく気にさわるような発言もしてしまうかもしれません。
妊娠中の情緒不安定になっているときは普段気にならないことも気になってしまうため、ひとつひとつの発言や行動にイライラしてストレスが溜ってしまいます。
ストレスがたまると自分の体にも赤ちゃんにも悪影響です。
妊娠中は情緒不安定になること、不安に感じていることなどは隠さずに共有しましょう。一緒に考えて解決していくことが大切です。
妊娠中の情緒不安定なときに起こる症状:メンタルが弱くなる
妊娠前と比べて、小さなことで気持ちが落ち込んだり涙が止まらなかったりと、メンタルが弱くなったと感じることが多くなった経験があるのではないでしょうか。
それは妊娠によるホルモンバランスの乱れや精神的ストレス、体力低下・睡眠不足によるものです。
ホルモンバランスの乱れや精神的ストレスによって、妊娠前であれば気にならなかったことも気にしてしまうようになり、不安やつらさで涙が止まらなくなることもあります。
メンタルが弱くなると、小さなことにもダメージを負ってしまいつらい思いをするかと思います。
妊娠中にメンタルが弱いと感じてしまったときは自分を責めずに、軽く運動をしたり思いっきり泣いてみたりと発散できる方法を見つけましょう。
妊娠中で情緒不安定なときの仕事の仕方
妊娠中でも仕事をする人は多いのではないでしょうか。妊娠中は体調がよくなったり悪くなったりと安定しないことが多く、今まで通り働けない可能性があります。
仕事による疲れやストレスは体によくありません。体に負担をかけないように仕事内容や業務時間など、環境を見直す必要があります。
仕事環境を改善するために2つの法律があります。
1つ目が母体保護法です。母体保護法は働く妊婦のための規則で、労働基準法で定められています。
母体保護法では産前・産後休業や負担の少ない業務への変更、労働時間などについて定められています。
2つ目は、男女雇用機会均等法における母性健康管理の措置というものです。
これは通勤時間の緩和や休憩時間の確保、妊婦の不利益取り扱いの禁止などについて定められています。
母体保護法と男女雇用機会均等法における母性健康管理の措置については、下記リンクから確認できます。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/seisaku05/01.html
これらの法律を使うためには、まず主治医に相談しましょう。
主治医が仕事について措置が必要だと判断すると、「母健連絡カード」に必要な事項を記載してくれます。
記載してもらった母健連絡カードを職場に提出すると、事業主は記載事項に応じて措置をしてくれます。
妊娠した状態で仕事をするのは不安が多くあると思いますが、守ってくれる法律があるので活用していきましょう。
妊娠中のストレスは胎児に影響を与えるか?
妊娠中にストレスを感じていると胎児に影響を与えると言われています。
一時的なストレスであれば問題ありませんが、継続的にストレスを感じていると胎児に悪影響を与えかねません。
どのような影響があるのか解説します。
- 栄養不足
ストレスを感じると交感神経優位になり、血管が収縮します。交感神経優位になると、血液は心臓や脳などに優先的に流れます。
消化器や赤ちゃんがいる子宮への血流は後回しになり、血流が低下してしまうのです。胎児は子宮に流れる血液から胎盤を通して栄養を取り込んでいます。
そのため、血液量が少なくなると栄養が足りなくなり、栄養不足になってしまいます。
- 発達障害
ストレスを感じるとコルチゾールというホルモンが分泌されます。コルチゾールは本来は胎盤で防がれて、赤ちゃんには伝わりません。
しかし、妊娠早期で胎盤が未熟だったり、合併症で胎盤がうまく機能しなかったりすると、コルチゾールが胎児まで伝わってしまうかもしれません。
伝わってしまうと、神経系の発達に影響を与えてしまうと言われています。
このようにストレスをずっと抱えていると赤ちゃんにも影響を与えてしまいます。
母も子も健康でいるために、ストレスをためこまないようにすることが大切です。
妊娠中の情緒不安定なときの解消法・対処法
前述した通り、妊娠中に情緒不安定になる原因には、マタニティブルーと妊娠うつ病があります。
マタニティブルーと妊娠うつ病では対処法が異なるので、それぞれの対処法について説明します。
また、治療以外にも日常生活の中で情緒不安定な状態を解消できる方法があります。日常生活で気をつけることも説明するので、参考にしてみてください。
マタニティブルー
前述の通り、マタニティブルーは一過性の情緒不安定な状態のことです。
そのため、マタニティブルーの解決法は、心と体を休めることが大切になります。
多くの妊婦さんがマタニティブルーを経験します。
「赤ちゃんがお腹にいるのにうれしくない」や「母親としてやっていけるのだろうか」と不安になる自分を追い込まずに、多くの人が経験していることだと認識しましょう。
みんなが経験していると思えば、少し気持ちが楽になりますよね。他にも、誰かに相談したり、ゆっくり休んだり、軽く運動したりすることで症状が治まっていきます。
妊娠うつ病
妊娠うつ病は治療が必要です。妊娠うつ病の治療には、薬物療法と心理療法があります。
<薬物療法>
薬物療法では主に向精神薬を使用することが多いです。向精神薬には、抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬、気分安定薬などがあり、ひとりひとりの症状に合わせて服用します。
妊娠中は、自分の飲んだ薬が赤ちゃんに影響を与えるのではないかと不安になる方も多いのではないでしょうか。
たしかに、薬の飲むことで先天奇形や出生時低体重などのリスクが高まる可能性はあります。しかし、向精神薬のなかには妊娠中でも安全に服用できるものもあります。
薬=悪影響と思い込み、適切な治療を実施しないでいると、母親の不安やうつ状態が赤ちゃんに伝わり情緒面や行動面に影響を与えてしまうかもしれません。
薬物治療を実施するときは、医師の説明をしっかり聞き、薬の利点と危険性を理解したうえで治療をしていきましょう。
<心理療法>
心理療法では認知行動療法を行います。
認知行動療法は、物事に対する考え方やとらえ方に歪みが生じてしまった状態を修正する治療法です。
認知行動療法では、認知の歪みのきっかけを明らかにしてから、認知の歪みに気づいてもらいます。
認知の歪みに気づいたあとは、柔軟に考え方やとらえ方を変化できるようにしていきます。
症状の現れ方を記録したり日記をつけたりしてもらうことで、客観的に自分を見つめることができるのです。
このような治療をしていくことで、認知の歪みを修正して余裕をもった生活ができるようになることが最終目標です。
日常生活で気をつけること
マタニティブルーも妊娠うつ病も、対処するためには日常生活で気をつけることがあります。
- 規則正しい生活をする
妊娠中はつわりや食欲不振で栄養バランスが偏ったり、睡眠不足で生活リズムが崩れることがあります。
そうなると情緒不安定な状態になりやすくなり、症状が改善していきません。
規則正しい生活を送ることで、症状が悪化するのを防げるので規則正しく生活するように心がけましょう。
- 誰かに相談する
真面目な方や責任感が強い方が情緒不安定になりやすいです。ひとりで抱え込んでしまう傾向にあり、より症状が進行していきます。
不安なことがあったらひとりで抱え込まず、主治医や家族、先輩ママさんに相談してみましょう。誰かに話すだけで心が軽くなります。
- 周りからのサポートを受ける
妊娠中は家庭や仕事のことだけでなく、自分の体のこともより一層気にかける必要があります。自分ひとりだけでこなすのには限界があります。
限界がくる前に周りからサポートしてもらいましょう。誰かに頼ることは悪いことではありません。
できるだけパートナーや両親からサポートしてもらえるように、事前に環境を整えておくことが大切です。
Q&A
妊娠中に情緒不安定で泣くのはなぜですか?
妊娠中に情緒不安定で泣いてしまうのは、妊娠によるホルモンバランスの乱れと精神的ストレスが原因です。
妊娠を維持するために数種類のホルモンが分泌されて、ホルモンバランスが乱れます。急激な変化によって自律神経のはたらきが乱れ、情緒不安定になるのです。
また、妊娠したことによる生活の変化や行動制限、育児の不安、母親になることへのプレッシャーなど精神的ストレスもたまります。
これらの原因によって情緒不安定になり涙が出てしまうのです。
情緒不安定な状態が2週間ほどでおさまるようであれば、マタニティブルーですが、3週間以上続くようであれば妊娠うつ病である可能性があります。
妊娠うつ病にならないよう、情緒不安定になったら放置せず主治医に相談しましょう。
妊娠中の情緒不安定 いつまで?
情緒不安定な状態がいつまで続くのかは、人によります。
マタニティブルーのように情緒不安定な状態が一過性であれば、2週間ほどで自然と治まるといわれています。
しかし、妊娠うつ病になってしまうと産後も情緒不安定な状態が続くかもしれません。
また、過去に精神不調になったことがある人や真面目な人、責任感が強い人などは妊娠うつ病になりやすいです。
そのため、情緒が安定しても、また情緒不安定になる可能性があります。
自分の判断で治療を中止せず、医師の指示のもと治療を続けていきましょう。
妊娠中は精神的に不安定になる?
妊娠中は精神的に不安定になる人が多いです。
不安定になる原因として、ホルモンバランスの乱れや精神的ストレス、体力低下・睡眠不足が考えられます。
精神的に不安定な状態が続くと、妊娠うつ病になってしまうかもしれません。
妊娠うつ病になると治療が必要になります。
そうならないためにも、規則正しい生活を送ること、1人で抱え込まず誰かに相談すること、周囲からのサポートをうけることを意識して生活していきましょう。
妊娠中に精神不安定だと赤ちゃんにどのような影響がありますか?
妊娠中の精神不安定な状態が赤ちゃんに及ぼす影響として、以下2点が考えられます。
- 栄養不足
ストレスを感じると交感神経優位になり、血管が収縮します。交感神経優位になると、血液は心臓や脳などに優先的に流れます。
消化器や赤ちゃんがいる子宮への血流は後回しになり、血流が低下してしまうのです。胎児は子宮に流れる血液から胎盤を通して栄養を取り込んでいます。
そのため、血液量が少なくなると栄養が足りなくなり、栄養不足になってしまいます。
- 発達障害
ストレスを感じるとコルチゾールというホルモンが分泌されます。コルチゾールは本来は胎盤で防がれて、赤ちゃんには伝わりません。
しかし、妊娠早期で胎盤が未熟だったり、合併症で胎盤がうまく機能しなかったりすると、コルチゾールが胎児まで伝わってしまうかもしれません。
伝わってしまうと、神経系の発達に影響を与えてしまうと言われています。
母親の体だけでなく赤ちゃんの体にも影響があります。どちらの体も守るために、精神不安定な状態を放置しないようにしましょう。
まとめ
妊娠中に情緒不安定になる原因と対処法、胎児への影響について解説しました。
妊娠中はホルモンバランスの乱れや精神的ストレス、体力低下・睡眠不足によって、感情の起伏が激しくなり不安定な状態になります。
情緒不安定でストレスとためこんでいると、赤ちゃんにもよくありません。
多くの妊婦が情緒不安定になります。
出産や育児に不安を感じているのはあなただけではありません。
1人で抱え込まずに、誰かに相談したりサポートをうけたりして、規則正しい生活を送っていきましょう。