軽度うつ病の原因と症状は?自分でできる対処法や休職すべきかどうかも解説

公開日: 2024/01/10 更新日: 2024/05/22
気分が落ち込んでつらい、食欲がなく眠れない。もしかして軽いうつ病かな、と悩んでいませんか? 悩んでいるその症状は、軽症うつ病の症状かもしれません。 軽症うつ病は、症状を苦痛に感じながら日常生活や仕事は多少効率が落ちても継続できます。 症状の悪化や慢性化を防ぐには、正しい知識と適切な治療が必要です。 本記事では、軽症うつ病について症状や治療法を解説します。 休職するかどうか、判断方法についても記載していますので、ぜひ最後まで読んでください。

軽度うつ病の原因と症状

軽症うつ病の原因と症状について詳しく解説します。

軽度うつ病の原因

軽症うつ病の原因は明確ではありませんが、うつ病発症要因の1つとして遺伝が考えられています。

うつ病に罹患した養子の研究では、養子先の親族より、生物学的近親者の方がうつ病の頻度は優位に高かった、という報告がされています。[1]

ただし、すべてのうつ病が遺伝するわけではありません。

うつ病発症には、性格や環境要因などの危険因子が複雑に関係していると考えられています。

"うつ病発症における危険因子

一般集団

  • 離婚または別離

  • 配偶者の死

  • うつ病の既往

  • 家族歴

  • 人生における大きなストレスフルな出来事

  • 薬物乱用

  • 社会的孤立

  • 11歳以前の母親の喪失

  • 社会的支援体制の変化

女性

  • 低い教育水準

  • 不安定な婚姻状況

  • 分娩後

男性

  • 対人関係の変化

[1]

うつ病がなぜ特定の個人に発症するのか、原因やリスクは解明されていません。

うつ病の原因として、代謝異常に関連した仮説や、脳内の神経細胞に関連する仮説として、神経科学的変化が提唱されてきました。

しかし、研究が進むにつれて、仮説の矛盾も指摘されています。うつ病の原因については、今後も研究が続けられるでしょう。

軽度うつ病の症状

食欲の異常や不眠、睡眠過多などが軽症うつ病の症状です。精神障害診断統計マニュアル(DSM-5)をもとに症状を紹介します。

軽症うつ病の症状は主に以下の通りです。

  • 意欲低下

  • 抑うつ気分や興味関心が失われている

  • 食欲の異常

  • 不眠、睡眠過多

  • 軽い運動でも疲れやすい

  • 焦り

  • 集中力が低下する

  • 死にたいと思う

自分でできる対処法

うつ病の症状を自覚した際に、自分でできる対処法として「厚労省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトうつ病を防ぐ」では、「ストレスに気を付ける」などの予防につながる行動を4つ紹介しています。

うつ病を防ぐ対処法4つ[2]

  1. ストレスに気を付ける

疲れが取れにくい、熟睡感がないなどの症状を普段から自分で自覚できるように、時々自分の生活を振り返ってみると良いです。

  1. 仕事のストレスの軽減を図る

1人で仕事を抱え込まず、周囲の人に頼ることも重要です。物事を自責的に考える傾向が強い場合、考え方のくせを見直すと良いでしょう。

  1. 相談をする

うつ症状を自覚した場合は、身近な医療者や医療機関を受診して相談しましょう。相談相手がいない場合は、「こころの耳の相談窓口」も利用できます。[13]

  1. 情報を得る

最近では、インターネット上でうつ病の情報が手軽に手に入ります。ストレス対処法などを参考にするのは良いでしょう。ただし、出所不明な情報もあるため鵜呑みにするのは危険です。辛い症状を感じているならば、医療機関を受診し正しい知識のもと医師と相談しながら対処していきましょう。

軽症うつ病の診断基準

精神障害診断統計マニュアル(DSM-5)によると、基本の症状9つと日常生活の障害の程度で、うつ病は診断されます。

軽症うつ病の診断基準

①症状が以下の1,2のいずれかに必ず該当し、3-9の症状と合わせて5つ以上当てはまる。

  1. ほぼ1日中みられる抑うつ気分

  2. ほぼ1日中みられる,全てまたはほぼ全ての活動における興味または喜びの著明な減退

  3. 有意な(5%超)体重増加もしくは体重減少または食欲の減退もしくは亢進

  4. 不眠(しばしば睡眠維持障害)または過眠

  5. 他者により観察される(自己報告ではない)精神運動焦燥または制止

  6. 疲労感または気力減退

  7. 無価値感または過剰もしくは不適切な罪悪感

  8. 思考力もしくは集中力の減退または決断困難

  9. 死もしくは自殺についての反復思考,自殺企図,または自殺を実行するための具体的計画
    [4]

②日常生活は、少しの障害のみで概ね問題なく送れている状態が、2週間以上ほとんど1日中出現している状態

うつ病の診断は医師が行います。ここで紹介した診断基準は、あくまでも一例でありうつ病の診断は精神障害診断統計マニュアルに限ったものではありません。

うつ症状があり、生活が辛いと感じる方は近くのクリニックや医療機関で診察を受けましょう。[3]

軽症うつ病エピソードとは?

うつ病エピソードとは、国際疾病分類第10版(ICD10)が定める診断基準です。

うつ病エピソードのうち2、3種類の症状が存在し、症状に悩まされているが、ほとんどの活動は可能状態が軽症うつ病エピソードです。

該当する症状の数と重症度により軽症、中等症または重症と特定されます。

うつ病エピソード

  • 患者が気分沈んでいたりやる気が起きず、何事にも面倒と感じる

  • 生活を楽しんだり、何かに興味を持ち、集中できない状態

  • 最小限の努力をしただけでも後では常に著明な疲労感を生じる状態

  • 睡眠や食欲が障害される

  • 自尊心と自信が低下し、軽症型でも何らかの罪の意識又は自己無価値感が常に存在する

  • ほぼ毎日、一日中気分が沈み物事への興味や嬉しいという感情が失われている

  • 朝は普通の時間よりも数時間も早く目覚めてしまう

  • 感情が高ぶり落ち着きがなく荒々しくなる

  • 体重減少、性欲喪失状態

[5]

うつ病の重症度評価は慎重に行う

うつ病の重症度は、基準となる症状の数だけでなく、日常生活にどの程度の障害があるかどうかも評価されます。

精神障害診断統計マニュアル(DSM-5)では、9項目のうち5項目に当てはまる場合軽症、6、7項目に当てはまる場合中等症。

8項目以上に当てはまる場合重症の目安としています。

うつ病重症度の基準として、症状の該当数と、日常生活の障害の程度を以下の表にまとめました。

うつ病重症度の基準

重症度

軽症

中等症

重症

精神障害診断統計マニュアル(DSM-5)

9項目の該当数

5項目以上

6-7項目

8項目以上

生活の障害の程度

患者は症状に悩まされはするが,恐らくほとんどの活動は遂行が可能な状態

患者は日常的活動を続けることに恐らく多大の困難を感じている状態

幻覚,妄想,精神運動性抑制又は昏迷が非常に重症なので通常の社会的活動は不可能な状態

[5]

うつ病は、重症度により治療法が変わります。自分で重症度を判断するのはよくありません。

うつ症状の自覚があり、生活が辛いと感じる方は近くの精神科や心療内科で診察を受けましょう。

軽症うつ病の治療

うつ病の治療は、患者に病気と治療の正しい理解を伝え、好ましい対処行動を促す心理教育が基本です。

軽症うつ病の治療は、心理教育と合わせて薬物療法や認知行動療法があります。

単一的ではなく診察を重ねて、うつ病の心理、社会的要因の関連性を考慮し治療が選択されます。[3]

軽症うつ病に内服薬は不要の場合もある

軽症うつ病では、内服薬が必要ない場合もあります。

薬物療法が効果的と判断された場合、処方される内服薬は副作用が少なく飲み続けやすい薬です。

軽症うつ病に用いられる薬の一例

薬剤名

ジェイゾロフト・パキシルなどのSSRI

サインバルタなどのSNRI

ミルタザピンなどの新規抗うつ薬

効果

脳内の神経伝達を改善し、意欲を高め、憂鬱な気分などを改善する薬

脳内の神経伝達を改善し、意欲を高め、憂鬱な気分などを改善する薬

脳内の神経伝達を改善し、憂うつな気分を和らげて不安、いらいら、不眠などの症状を改善する薬

副作用

吐き気や嘔吐

眠気やめまいなど

眠気や頭痛

動悸など

紅斑や疲労

体重増加など

薬物療法は、正しい用法用量を守り飲み続けることで効果を発揮します。自己判断で内服を中断したり、手軽に買える市販薬に頼るのはよくありません。

副作用と思われる症状が出現した場合は、担当医に相談しましょう。[7][8][11]

認知行動療法が併用されることも

軽症うつ病の精神療法は、認知行動療法が有効とされています。

認知療法・認知行動療法とは、人間の気分や行動が認知のあり方(ものの考え方や受け取り方)の影響を受けることから認知の偏りを修正し、問題解決を手助けすることによって精神疾患を治療することを目的とした構造化された精神療法

[12]

つまり、認知行動療法で、自分の悪い思い込みや偏った考え方を正し、症状の改善につなげるのです。

方法としては、対面の面接で行います。1回の所要時間は30分程度。16回から20回面接し、状態によっては延長することもある治療です。

面接の内容を実生活で試し、修正していくことで成果が得られます。治療開始の際に、医師の説明をよく理解することが重要です。[12]

軽いうつ病で仕事は休むべき?軽度うつ病での休職期間

休職や休養が、軽症うつ病に効果的かどうかは臨床で意見が分かれます。

会社の上司が問題でうつ症状を呈している場合や、職場のストレスがきっかけでうつ症状がみられる場合、その誘因を遠ざけることで症状改善が見込まれるなら、医師から休職するよう指示があるでしょう。

しかし、軽症うつ病では患者の持つ自己回復力(レジリエンス)の促進、という観点から休養とは反対に、活動を促すことが刺激となり、症状が改善するとも言われています。

不適切な休養や休職が、軽症うつ病の場合、症状の蔓延や悪化につながる恐れがあります。休職や休む期間については、利点や欠点を医師に確認し慎重に決めましょう。

診断書が必要な場合は、前もって医師に依頼すると良いです。[3]

うつ病の人へNGな接し方

うつ病の人へ避けるべき接し方は、「励まし」と「気晴らしの誘い」です。うつ病の場合、励まされても自分は期待に応えられないと否定的に考えます。

「がんばれ」と言われても何から頑張ればいいのかわからず、できない自分はだめだと自分を責める可能性があります。

また外出に誘われると断れず、気晴らしのはずがより疲れを招く結果になりやすいです。

うつ病になっても人前では明るくできる?

軽症うつ病の場合、症状があっても生活できるのが特徴です。本人は辛いと感じていても周囲からは、明るく見える場合もあるでしょう。

うつ症状を感じていて、2週間以上、常に辛い状態が続いてる場合は、無理せず医療機関を受診しましょう。

Q&A

軽度うつ病に関する質問をまとめました。

軽いうつ病の症状は?

軽症うつ病の症状は、気分が抑うつである、興味や喜びが失われ何かに集中できない状態に加えて自信の喪失、食欲が減退し、易疲労感、不眠や睡眠過多などがあります。[3]

プチ鬱とは何ですか?

プチ鬱は、マスメディアが作った造語です。

フランス語で小さいという意味の「プティ」に「鬱」を付けて、うつ病とは診断できないほどの抑うつ症状があるときに、使う言葉とされてます。

ただしこの定義に当てはまるといって、自分の症状を過少評価するのは危険です。また「〇〇鬱」という造語はインターネット上にあふれています。

手軽に調べられて自分にあてはめてみたくなりますが、病状を自分で判断するのは危険なのでやめましょう。[3][9]

軽いうつ病はどのくらいで治る?軽度うつ病の治療期間は?

軽症うつ病の治療期間は、個々の症状や治療内容により違います。

治療期間の一例

  • 認知行動療法を受ける場合、16週間以上続けると効果的と言われている

  • 薬物療法を確実に行った場合は、数か月で改善が見られたという報告がある

治療期間は、少なくとも数か月間は必要と認識しておきましょう。正確な治療期間を知りたい場合、まずは自分の症状や治療をよく理解し、医師に確認する必要があります。[10]

鬱っぽいと感じたら、どうしたらいいですか?

鬱っぽい症状が2週間以上続く場合は、医療機関を受診しましょう。

メンタルクリニックなどの医療機関は、検査や受付の都合上、予約が必要な場合もあるので、電話で確認するとスムーズです。

診察をうけることで、病気が背景にある場合、早期に支援が受けられます。

無理を続けると症状悪化を招く可能性もあるため、鬱っぽいと感じている場合は精神科や心療内科を受診しましょう。

まとめ

軽症うつ病について症状や原因、対処法を解説しました。

ほぼ1日中、抑うつ気分や興味が失われている状態に加えて、食欲や睡眠の異常、疲れやすさ、焦り、集中力の低下、死にたい気持ちが2週間以上続く場合、軽症うつ病の可能性があります。

軽症うつ病は、症状の苦痛を感じていても生活が送れます。うつ症状を感じた場合、ストレスに気を付けたり、相談することでうつ病を予防できるとされています。

ただし、軽症うつ病であるかどうかは、自分で判断できません。

うつ症状を感じ、生活がつらい状態が2週間以上続いている場合、クリニックなどの医療機関を受診しましょう。

軽症うつ病の治療は診療を重ね、個々の症状に合わせて対応していきます。

体の不調を担当医に話し、理解してもらうことが軽症うつ病治療の第一歩です。思い悩んでいることを素直に相談し、治療に臨みましょう。

参考元

[1]うつ病のメカニズム

[2]厚労省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトうつ病を防ぐ

[3]日本うつ病学会治療ガイドライン

[4]https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/08-精神障害/気分障害/抑うつ障害群

[5]第Ⅴ章精神及び行動の障害(F00-F99)

[6]SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)の解説|日経メディカル処方薬事典

[7]ミルタザピン錠15mg「EE」の基本情報(薬効分類・副作用・添付文書など)|日経メディカル処方薬事典

[8]SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)の解説|日経メディカル処方薬事典

[9]「プチうつ気分」を訴える女性たち:現代社会とメンタルヘルス(<特集>第15回国際女性心身医学会および第36回日本女性心身医学会学術集会報告)

[10]軽症うつ病の実態

[11]SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の解説|日経メディカル処方薬事典

[12]うつ病の認知療法・認知行動療法治療者用マニュアル(厚生労働省)

[13]働く人の「こころの耳相談」

[14]うつ病患者への対応について

引用

[1]うつ病のメカニズム

[4]]https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/08-精神障害/気分障害/抑うつ障害群

[12]うつ病の認知療法・認知行動療法治療者用マニュアル(厚生労働省)

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