障害年金とは?
障害年金とは、病気やケガによって、日常生活や仕事などが制限されるようになった場合に受給できる年金です。
障害年金には大きく分けて障害基礎年金と障害厚生年金があります。20歳以上で、かつ国民年金を払っている人であれば受け取ることができる年金です。
詳しい受給条件を説明していきます。
障害年金はどんな人がもらえるの?受給条件とは?
障害年金は、原則として20歳から65歳になるまで(65歳の誕生日の2日前まで)請求できます。
受給条件は初診日に国民年金の被保険者であること。つまり、国民年金の納付をしているすべての人が対象です。
納付できていない人は、障害年金を受け取れない可能性があります。
国民年金には基礎年金(すべての国民)と厚生年金(会社員・公務員)があります。
国民基礎年金のみしか払っていない人(会社員や公務員以外の人。自営業者など)は障害厚生年金は受け取ることができません。
障害等級1級と2級の人は障害基礎年金+障害厚生年金を受給でき、3級の人と障害手当金は障害厚生年金のみ受給できます。
障害年金の等級とは?
障害年金には障害の程度によって等級が定められています。
等級は1級〜3級があり、1級が最も障害の程度が重いです。1級〜3級に当てはまらないが、障害が残る場合は障害手当金を受け取ることができます。
障害等級1級の受給要件とは?
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次に掲げる視覚障害(※1)
イ.両眼の視力がそれぞれ0.03以下のもの
ロ.一眼の視力が0.04、他眼の視力が手動弁以下のもの
ハ.ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼の1/4(※2)視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつ1/2(※2)視標による両眼中心視野角度が28度以下のもの
ニ.自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの -
両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
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両上肢の機能に著しい障害を有するもの
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両上肢の全ての指を欠くもの
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両上肢の全ての指の機能に著しい障害を有するもの
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両下肢の機能に著しい障害を有するもの
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両下肢を足関節以上で欠くもの
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体幹の機能に座っていることができない程度又は立ちあがることができない程度の障害を有するもの
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前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
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精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
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身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの”[1]
上記の様に病気やケガによって、自分自身で日常生活を行うことが困難な場合、障害等級1級となります。
障害等級2級の受給要件とは?
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次に掲げる視覚障害(※1)
イ.両眼の視力がそれぞれ0.07以下のもの
ロ.一眼の視力が0.08、他眼の視力が手動弁以下のもの
ハ.ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼の1/4(※2)視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつ1/2(※2)視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの
ニ.自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの -
両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
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平衡機能に著しい障害を有するもの
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そしゃくの機能を欠くもの
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音声又は言語機能に著しい障害を有するもの
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両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの
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両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの
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一上肢の機能に著しい障害を有するもの
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一上肢の全ての指を欠くもの
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一上肢の全ての指の機能に著しい障害を有するもの
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両下肢の全ての指を欠くもの
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一下肢の機能に著しい障害を有するもの
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一下肢を足関節以上で欠くもの
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体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの
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前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
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精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
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身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの”[1]
上記の様に、病気やケガによって日常生活に支障がある場合は障害等級2級となります。
障害等級3級の受給要件とは?
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次に掲げる視覚障害(※1)
イ.両眼の視力がそれぞれ0.1以下に減じたもの
ロ.ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼の1/4(※2)視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下に減じたもの
ハ.自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下に減じたもの -
両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの
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そしゃく又は言語の機能に相当程度の障害を残すもの
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脊柱せきちゅうの機能に著しい障害を残すもの
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一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの
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一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの
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長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
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一上肢のおや指及びひとさし指を失ったもの(※3)又はおや指若しくはひとさし指を併せ一上肢の3指以上を失ったもの(※3)
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おや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの(※4)
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一下肢をリスフラン関節以上で失ったもの
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両下肢の10趾しの用を廃したもの(※5)
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前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
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精神又は神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
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傷病が治らないで、身体の機能又は精神若しくは神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものであって、厚生労働大臣が定めるもの”[1]
上記の様に、病気やケガによって仕事に支障がある場合は、障害等級3級となります。
障害手当金の受給要件とは?
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両眼の視力がそれぞれ0.6以下に減じたもの(※1)
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1眼の視力が0.1以下に減じたもの(※1)
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両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
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両眼による視野が2分の1以上欠損したもの、ゴールドマン型視野計による測定の結果、1/2(※2)視標による両眼中心視野角度が56度以下に減じたもの又は自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が100点以下若しくは両眼中心視野視認点数が40点以下に減じたもの
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両眼の調節機能及び輻輳ふくそう機能に著しい障害を残すもの
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1耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの
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そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの
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鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
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脊柱の機能に障害を残すもの
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一上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの
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一下肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの
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一下肢を3センチメートル以上短縮したもの
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長管状骨に著しい転位変形を残すもの
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一上肢の2指以上を失ったもの(※3)
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一上肢のひとさし指を失ったもの(※3)
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一上肢の3指以上の用を廃したもの(※4)
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ひとさし指を併せ一上肢の2指の用を廃したもの(※4)
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一上肢のおや指の用を廃したもの(※4)
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一下肢の第1趾又は他の4趾以上を失ったもの(※5)
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一下肢の5趾の用を廃したもの(※6)
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前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
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精神又は神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの”[1]
上記の様に、体の一部を欠損したり、病気やケガによって労働に制限を受けるが、3級よりは軽度な状態である場合、障害手当金の受給者となります。
精神疾患の場合は障害年金はもらえるの?
「うつ病」「双極性障害」「統合失調症」などの精神疾患や発達障害の方も受給が可能です。
精神疾患によって障害等級1級〜3級のような状態になり、精神疾患によって働くことが困難になった場合や、日常生活に制限を受ける場合は受給可能です。
等級の基準は難しく、医師の判断となります。
障害年金をもらえない人は?いつまでもらえるの?
障害の程度によって、障害年金の対象となっても障害年金をもらえない可能性があります。それぞれ詳しくみていきいます。
国民年金を納付していない人
障害年金をもらえない人は、国民年金を納付していない人です。原則、保険料納付済み期間+保険料免除期間が、全被保険期間の2/3以上でないといけません。
特例として、原則の要件に満たない人のうち、直近1年間に保険料の滞納がない人はであれば受給可能です。
この期間保険料を納付していない場合、障害年金を受け取ることはできません。
障害年金はいつまでもらえるの?
障害年金の受給が終了するのは以下の2点です。
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受給者が亡くなる月まで
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障害の等級が変更となり、3級以下となった場合
基本的に障害等級に当てはまれば、障害年金は一生受給することができます。しかし、障害等級が3級以下となってしまった場合、障害年金を受給できなくなってしまいます。
障害年金受給開始後、年金証書に次回診断書提出年月というものが書かれます。
その時に最新の診断書を提出しなければいけません。その後審査で障害等級が3級以下となった場合、障害年金は受給できなくなってしまいます。
障害年金のもらえる金額は?
障害年金の対象になった場合、いくらもらえるのか気になりますよね?
前にもお話した様に障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金があります。それぞれもらえる金額が違います。
障害基礎年金のもらえる金額は?
1級のもらえる金額は?
1年間で、「976,125円+子の加算額(第1子、第2子は228,700円、第3子以降は各76,200円)」をもらえます。
ここでいう「子」とは、障害年金を受給する人によって生計を維持されている18歳未満の子どものことをいいます。
2級のもらえる金額は?
1年間で、「795,000円+子の加算額」をもらえます。この加算額は1級の時と同じです。
障害厚生年金のもらえる金額は?
障害厚生年金はこれまでの月収の金額が影響します。
計算方法は下記のAの金額をもとに計算します。
A=2003年3月以前の平均月収×7.125÷1000×2003年3月以前の国民年金の被保険者の月収「+」2003年4月以降の平均月収×5.481÷1000×2003年4月以降の国民年金の被保険者の月収
1級の場合
1年間で「A×1.25倍+配偶者加給年金金額(配偶者がいる場合、228,700円)」をもらえます。
2級の場合
1年間で「A +配偶者加給年金金額(配偶者がいる場合、228,700円)」をもらえます。
3級の場合
1年間で「A」をもらえます。
障害手当金の場合
「A×2」を一回もらうことができます。
障害年金をもらうメリット・デメリットは?
それでは障害年金をもらうメリットとデメリットはなんでしょうか?それぞれ詳しく解説します。
障害年金をもらうメリット
障害年金をもらうことによるメリットはなんでしょう?メリットをそれぞれ詳しく解説します。
収入を安定して得られる
障害年金は病気やケガによって働くことが困難になった人や、仕事に制限を受けた人が受給できる制度です。十分に働くことができなくても障害年金によって、安定した収入がを得られることができます。
働きながら受給できる
障害年金は働きながらでも受給できます。それによって障害年金と合わせてこれまで通りの収入を得られます。
税金がかからない
通常の年金には税金がかかりますが、障害年金は非課税となるため税金を払う必要がありません。
障害年金をもらうデメリットは?
生活保護費が減る
障害年金の受給を希望されている方で障害年金を受給したい方もいるでしょう。
この場合、生活保護費自体は減りますが、障害手当と合わせて調整がされるため、トータルの収入は変わりません。
傷病手当を受給することができない
障害年金と同じ理由の病気やケガの場合、傷病手当金と障害年金は同時に受給できません。受給は障害年金のみとなります。
労災給付が減額される
仕事中や仕事によるケガや病気の場合、労災給付も受け取ることができます。障害年金と労災給付は併用できますが、労災給付は減額されます。
児童扶養手当がもらえない。もしくは減額される
障害年金の、子の加算部分の金額が児童手当を超える場合は差額が受給され、超えない場合は、受給されません。
また、障害厚生年金3級の場合は、厚生年金支給額と児童手当を比較し、児童手当が多い場合は差額が支給され、超えない場合は、児童手当は支給されません。
死亡一時金と寡婦年金が支給されなくなる
障害年金を受給している場合、死亡一時金と寡婦年金の二つは受給できなくなります。
障害年金の申請方法は?
市町村役場に
- 年金請求書
- 基礎年金番号通知書または年金手帳などの基礎年金番号がわかるもの
- 受給者の生年月日を明らかにできるもの(戸籍抄本・戸籍謄本・住民票など)
- 医師の診断書
- 受診状況等の証明書(初診日が証明できるもの。初診日にかかった病院の医師に作成してもらう)
- 受取先金融機関の通帳
- 病歴・就労状況等申立書(自分で記載する)
以上の7点を提出することで申請できます。
そのため、あらかじめ医療機関を受診する必要があります。また、初診日の証明が必要となるため、注意が必要です。
Q&A
よくある質問にお答えします。
障害年金はどうしたらもらえるのですか?
国民年金に加入し、一定期間納付を行っており、仕事や日常生活に支障が出る病気やケガをした場合に受給できます。
障害年金の月額はいくらですか?
障害等級1級は月額8,1343円、2級は6,5075円もらえます。これに加えて、子供の人数分の加算額が一人あたり、月額18,725円、第3子以降は1人あたり月額6,241円もらえます。
障害年金は一生もらえますか?
基本的には亡くなるまで受給できます。しかし、障害年金は数年毎に診断書の提出を求められます。その際に、障害等級が3級以降に変更となった場合には受給できなくなります。
まとめ
障害年金は、国民年金を納付している人で、病気やケガ、精神疾患によって、生活に制限を受ける場合は誰でも受給することができます。
病気やケガ、精神疾患でこれまで通り働くことができず、収入が減ってしまった場合は障害年金を申請しましょう。
参考文献
[1]日本年金機構 障害年金等級表 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/tokyuhyo.html