トリプタノールってどんな薬?
トリプタノールは三環系抗うつ薬です。ノルアドレナリンやセロトニンの働きを改善することで、脳内の神経伝達がスムーズになるとされています。
うつ病、うつ状態の方に効果が期待できる薬です。
また、慢性疼痛にも効果が認められており、痛みがある方への治療薬として使われることもあります。
効果が24時間と長いため、服用回数が1日1回と少ないこと、胃への負担が少ないこともメリットとしてあげられます。
副作用として、強い眠気やめまい、立ちくらみ、喉の渇きなどが報告されており、内服タイミングは就寝前にすることが多いようです。
効果を感じるまでに2週間ほどの期間がかかるため、すぐに効果を感じることは難しい薬です。
トリプタノールは抗うつ薬の種類の中で、「三環系抗うつ薬」に分類されます。
三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で第一世代と呼ばれ、1960年頃に発売され長い期間使用されている薬です。
その後第二世代、第三世代と経て、現在は第四世代である「SNRI」が発売されました。
第三世代、第四世代の抗うつ薬は副作用の出現が少なく、かつ効果を期待できる薬となっており、現在うつ病治療薬の第一選択とされています。[1]
しかしトリプタノールをはじめとする三環系抗うつ薬も優れた効果を発揮するケースがあるため、患者さんの状態をみて適切と判断した薬を医師が処方しています。
更年期障害を解説
更年期障害とは閉経を挟んで前後10年、40~60代の方に起こると言われています。原因はエストロゲンの分泌が急激に減少することです。
ホットフラッシュなどの自律神経失調症の症状とともに、家庭や社会環境のストレスから情緒不安定、うつ症状などの精神症状を引き起こします。[2]
更年期障害の代表的な症状は以下になります。
自律神経失調症 |
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精神症状 |
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自律神経失調症と更年期障害
更年期障害の症状と自律神経失調症の症状は似ています。なぜなら女性ホルモンの分泌と自律神経をコントロールするのが、同じ脳の視床下部だからです。
女性ホルモンが減少することで脳がパニックを起こすと、自律神経のバランスも同時に崩してしまうことがあります。
自律神経とは自分の意志では働かせることのできない神経のことを指します。
具体的には血圧や心拍、体温や血液の流れなどの生命維持のために必要な働きを調整している神経のことです。
自律神経は交感神経と副交感神経の2つの神経からできています。交感神経は体の活動、副交感神経は体の休息に対して働きます。
自律神経失調症とはこの交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまう状態のことです。バランスが崩れることで身体、心に様々な不調が表れます。
動悸、生理不順、めまいや倦怠感、不眠、イライラ、不安感などが主な症状です。これらの症状は更年期障害の代表的な症状と同じとなっています。
更年期障害にトリプタノールが効くのか?
更年期障害の薬物療法として第一選択とされているのは、ホルモン補充療法(HRT)です。
更年期障害の原因である減少した女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)を補う治療となります。
女性ホルモンを補充することは、ホットフラッシュや発汗、 動悸など自律神経系の症状を改善すること以外にも効果を発揮します。
閉経後に骨が脆くなる骨粗しょう症の予防や改善に効果があり、脂質異常を改善、肌のハリやうるおいの改善にも効果があるといわれているのです。
また漢方薬が有効であるケースも多いとされています。漢方薬は原因を治療する薬ではありませんが、今ある症状を改善することを目的としている薬です。
効果を感じるまでに時間がかかるデメリットはありますが、辛い症状に合わせて医師と相談して薬を選択することができます。
そして抗うつ薬は更年期障害の症状のなかの、気分の落ち込み、意欲の低下、イライラや情緒不安定、不眠などの精神症状に対して使用されます。
現在抗うつ薬として最初に選択されるのは、副作用が少なく効果が期待できるセロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)です。
トリプタノールは三環系抗うつ薬なので、これには該当しません。しかしトリプタノールには、慢性疼痛に対する効果が期待できます。
更年期障害の方には頭痛を訴える方もいるため、この効果を期待して処方されるケースがあります。
また、トリプタノールの副作用である眠気を逆に利用することで、不眠の解消をはかるという結果も期待できます。
抗うつ薬の第一選択がトリプタノールでなかったとしても、患者さんの状態をみて必要だと判断された場合にトリプタノールが処方されるケースがあるのです。
トリプタノールは何科で処方してもらえる?
更年期障害を疑った場合、最初に受診するのは婦人科です。婦人科で診察を受けて更年期障害と診断された場合、ホルモン補充療法や漢方などの治療が開始されます。
受診時に更年期障害の症状の一つであるうつ症状があった場合、抗うつ剤の処方も検討されます。
抗うつ剤の種類については医師が必要と判断した薬を処方するため、必ずしもトリプタノールが処方されるわけではありません。
仮に更年期障害と気づかずにうつ症状が主訴で受診を検討した場合、メンタルクリニックを検索するでしょう。
受診した際に問診でうつ症状以外の症状から「更年期障害」と診断される可能性もあります。
そのままメンタルクリニックで必要と判断された薬を処方されることや、婦人科への受診をすすめられるケースもあります。
トリプタノールは2023年9月時点で限定出荷となっていることが、製造販売元の日医工から発表されました。
理由としては、製造委託先であるクオリテックファーマからの入荷が滞っているためです。入荷が滞っている原因については明らかになっていません。
トリプタノールの口コミをチェック!
それではネットで噂されているトリプタノールの口コミについて解説していきます。
トリプタノールが最強と言われる理由は?
「最強」の意味はさまざまあります。
現在抗うつ薬として選択されている新しい第四世代が発売される以前、まだ三環系抗うつ薬が主流だった頃は抗うつ楽の強さランキングでトリプタノールが1位でした。
他に、副作用が「最強」という意味もあります。
トリプタノールは副作用の眠気が強く出ることでも有名ですが、逆手にとって不眠によく効くということで最強と口コミに出たことが考えられます。
トリプタノールを服用すると痩せるの?
トリプタノールを服用開始した数か月は、副作用として胃腸障害が出やすいとされています。そのため食欲が減退し痩せる傾向がみられるのです。
しかし長期的にみると副作用が落ち着き、精神状態が改善することで食欲が増進し、結果太りやすいともいわれています。
「トリプタノール 眠すぎる」の真実
トリプタノールは抗うつ薬の中でも、副作用である眠気がかなり強く出ると言われています。
口コミの中には、「眠気が昼まで残り、日中の活動に支障を与えた」というものありました。
しかし、この副作用を逆に利用してうつ性不眠に対して処方されるケースもあるのです。
Q&A
ここからはトリプタノールと更年期障害に対するQ&Aを紹介します。
更年期の不眠を改善するにはどうしたらいいですか?
更年期になると女性ホルモンの分泌が減少するとともに、自律神経の乱れもあらわれてしまいます。
自律神経が乱れることで、寝つきが悪くなる、夜中に目が覚める、日中眠気が残るなどの症状がでます。
更年期における不眠を解消するには、日常生活を改善できるポイントをみつけて実施していきましょう。
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起床後はカーテンを開けて、日光を浴びる
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運動をする
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夕食を食べるタイミングは寝る3時間前まで
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入浴をする
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スマホやパソコンは寝る2時間前まで
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食生活を整える
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トリプタノールは効くまでにどれくらいかかりますか?
トリプタノールなどの抗うつ薬は即効性がないものがほとんどです。服用を開始してから、効果を感じるまでに2~4週間ほどかかるといわれています。
しかしその期間に副作用である眠気やめまいなどの症状が起こることがあります。
なかなか効果を感じられずに副作用だけがでてくると、体に合わないのではないかと思う方もいるでしょう。
しかし、効果が出るまでに時間がかかることを理解し、焦らず4週間ほど服用を続けていきましょう。
トリプタノールは1日に何回服用しますか?
トリプタノールをうつ状態の方が服用する場合、「成人1日30~75mgを初期用量とし、1日150mgまで漸増し、分割経口投与する。」とされています。[4]
医師がトリプタノールを処方する場合、1日1回就寝前と指示することが多いようです。服用タイミングが就寝前となっているのは、副作用に眠気が出るためです。
しかし服用方法はその方の状況によって異なるため、医師から指示された方法を守りましょう。
更年期障害の不眠に効く薬は?
更年期障害の方の多くが不眠を訴えているといわれています。
更年期障害が原因の不眠に対しては、女性ホルモンを補充するホルモン補充療法により改善したということが多いとの報告があります。
うつ症状の一つである不安が原因で不眠となっているケースに対しては、抗うつ薬が有効です。また、睡眠鎮静薬を使用するケースもあります。
まとめ
こちらの記事では更年期障害とトリプタノールの関係性について解説していきました。
更年期障害と診断された場合、必ずしもトリプタノールや他の抗うつ薬が処方されるわけではありません。症状に合わせて必要だと医師が判断した場合に処方されます。
更年期障害はどの方にも同じ症状が現れるわけではなく、症状も重症度も違ってきます。今ある症状が更年期障害と気づかずに、長い期間苦しむ方もいるかもしれません。
更年期障害の一つであるうつ症状が悪化し、入院をしてしまうケースもあるので、40代に近い年齢の方は、自分の症状が更年期障害の症状に当てはまらないかチェックしてみてください。
症状に対する薬を投与するだけでなく、根本的な原因である女性ホルモンの減少を治療することで辛い症状が緩和されることが期待できます。
心当たりのある方は一度医療機関に相談をしましょう。
参考文献
[1]ファルマシア・53巻・7号 抗うつ剤の種類・特徴とその限界