むずむず脚症候群って何?原因、症状、治療法について解説

公開日: 2024/01/08 更新日: 2024/05/22
夜中、静かに横になっていると足がむずむずする。動かしたくてたまらない。そんな症状でお困りではありませんか? それはむずむず脚症候群かもしれません。レストレスレッグス症候群(Restless legs syndrome, RLS)や下肢静止不能症候群とも呼ばれている病気です。 この特徴的な名前の疾患は、それ自体が命に関わるものではありません。しかし、不快な足の症状のせいでなかなか眠れず、睡眠不足に悩まされる方も多いです。 本記事ではむずむず脚症候群の症状や原因、治療について解説をしていきます。
目次

むずむず脚症候群の症状とは?

むずむず脚症候群の症状の中心は、下肢の異常な感覚と、それに伴う「下肢を動かさずにはいられない衝動」が起こることです[1]。

この症状は安静にしていると悪くなり、動かすと楽になります。

主に夕〜夜中にかけて症状が出現したり増悪したりするのが特徴です。患者さんは脚を動かし続けたり、歩き回ったりしてしまいます。

寝ている間は睡眠が妨げられ、起きている時でも日常生活に大きな支障をきたすのです。

脚の異常な感覚を病名の通り「むずむず」と表現することもありますが、違ったように捉える患者さんも多くいます。

例えば、うずく・熱い・冷たい・痛い・痒い・虫がはうような、など人によって様々な訴えがあります。

症状は皮膚の表面よりも、脚の奥の方からくるような感覚とされることが多いです。

人によっては腕や腰など他の部位にも症状が現れる方もいます。そのような場合でも、脚の症状は必須です。

むずむず脚症候群の診断基準は?どんな検査が必要?

むずむず脚症候群の診断のためには、下記の診断基準の項目をすべて満たす必要があります[2,3]。

  1. 脚を動かしたいという強い欲求が存在すること;通常は、不快な下肢の異常な感覚にともなってこの欲求が出てくること
  2. 横になったり座ったりなど安静にした状態で出現したり増悪したりすること
  3. 症状は歩くなど運動することによって軽くなること
  4. 夕〜夜間に症状が出てきたり悪くなったりすること
  5. 上記の1~4が、他の病気や行動の主要な症状としては説明ができないこと

基本的には特徴的な症状から診断をつけることができます。家族歴や治療薬への反応性を参考にすることもあります。日中の眠気が強くないことも特徴です。

診断のための検査として、代表的なのは終夜ポリグラフ検査(polysomnography:PSG)です[4]。

むずむず脚症候群の方では、周期性四肢運動(periodic leg movement (in sleep))が多く認められます。

PSGでは、寝ている間に前脛骨筋(膝の下、前脛の部分の筋肉)の筋電図をとることで、周期性四肢運動の頻度がわかるのです。

起きている時に周期性四肢運動を評価する方法としては、指示不動検査(suggested immobilization test:SIT)があります[4]。

むずむず脚症候群の症状が起こりやすい夜9時ごろから1時間ほど行う検査です。

検査を受ける方は、安楽椅子などに、両足を伸ばして背中をもたれかからせ、楽な姿勢で座ります。

その状態で目を開けたままじっとして、筋電図を測定することで、周期性四肢運動がどの程度生じるかを見るのです。

同時に、定期的にどのくらい不快な症状があるかを記録してもらいます。むずむず脚症候群の患者さんでは、周期性四肢運動が多く生じ、また不快感も強く認められるのです。

これらの診断のための検査のほかに、別の病気が隠れていないか、治療できる原因がないかなどを調べるため、血液検査や各種の画像検査などを行うこともあります。

むずむず脚症候群の原因は?病気の成り立ちについて解説

むずむず脚症候群はまだはっきりわかっていないところが多い病気です。

ただ、脳内の神経シグナルを伝える神経伝達物質である「ドパミン」の機能が障害されることが一つの原因ではないかと考えられています[1]。

むずむず脚症候群は2種類ある?「特発性」と「二次性」

むずむず脚症候群では、背景に別の病気などが隠れている二次性と、ほかに明らかな要因がはっきりしない特発性とに分けられます[1]。

それぞれの違いについて解説をしていきましょう。

子供や若い人に多い特発性むずむず脚症候群

特発性は45歳までの比較的若い年齢層に多く、子供でも起こることがあります。多くは家族歴があり、遺伝の要素が考えられているのです。

両親や兄弟姉妹などの第一度近親者にむずむず脚症候群がある人は、ない人と比べて3〜5倍むずむず脚症候群を発症しやすいことがわかっています[5]。

進行は比較的ゆっくりで、治療が非常に効きやすいのが特徴です。

小さな子供の場合、自分で症状をうまく口に出せないことがあります。

寝るときにずっと脚を動かす、脚をさすってあげないと眠れないなどの症状として現れることがあります。

また、成長痛だと思われていたものの一部が、むずむず脚症候群の症状であったことがわかってきているのです。

日中に症状が起こると、学校の授業中にじっとしていられなくなります。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)と思われていた子供が、実はむずむず脚症候群だったということもあるのです[1]。

貧血、妊娠、病気が原因?二次性むずむず脚症候群

背景に何らかの病気が隠れている二次性むずむず脚症候群は、45歳以降に発症することが多いです。進行が早く、特発性に比べて治療効果が乏しいとされています。

むずむず脚症候群を引き起こす病気や状態の例を挙げます[1]。

  • 鉄欠乏

鉄欠乏はむずむず脚症候群の大きな要因です。

ドパミンの機能の異常に鉄が足りないことが関与すると考えられています。鉄が足りなくなる原因として、胃の切除や慢性の消化管出血、女性の月経などが挙げられます。

一部の患者さんでは、鉄が充足するだけでむずむず脚症候群が改善することがわかっているのです。

たとえ、血液検査で貧血がなくても、油断してはいけません。なぜなら、鉄が足りなくなってから貧血が起こるまで、少しタイムラグがあるからです。

鉄が足りているかどうかは、体の中にどのくらいの鉄のストックである「貯蔵鉄」があるかを調べることでわかります。

  • 神経疾患

パーキンソン病や多発性硬化症などさまざまな神経の病気とむずむず脚症候群との関連が指摘されています。

  • 腎不全

透析患者さんの2割程度にむずむず脚症候群が認められると報告されているのです。透析患者さんの場合は比較的重症になりやすいといわれています。

  • 妊娠

妊娠中の女性では1〜3割程度に認められるとされています。また、妊婦さんでは特発性のむずむず脚症候群も増悪する可能性が示唆されているのです。

妊娠中は鉄欠乏性貧血が起こりやすいほか、葉酸不足になりやすいことも関連しているのではないかとされています。

  • 膠原病・リウマチ性疾患

膠原病とは、自分の免疫が自分の体を攻撃してしまうことで起こる自己免疫疾患群で、筋肉や関節、皮膚などさまざまな部位に症状が現れるものです。

代表的なのは関節リウマチです。関節リウマチではむずむず脚症候群の合併が多く報告されています。

他にも、唾液腺や涙腺がおかされて眼や口の乾きが生じるシェーグレン症候群や、手足の先から皮膚が固くなっていく強皮症という疾患などで、むずむず脚症候群の合併の報告があります。

  • 線維筋痛症

線維筋痛症とは、明らかな原因がないにもかかわらず全身のあちこちに強い痛みが生じ、それが長く続く病気です。

線維筋痛症では高頻度でむずむず脚症候群が認められるとされています。ある研究ではおよそ67%の患者にむずむず脚症候群を認めたと報告がなされたのです。

この二つの疾患が合併すると、睡眠障害や日中の眠気がより強くなりやすく、生活に大きな支障をきたします。

  • 2型糖尿病

2型糖尿病では神経障害が起こりやすく、その結果としてむずむず脚症候群が多いのではないかとされているのです。

  • 消化管疾患

吸収不良を起こすような病気や胃の切除後、消化管出血などでは鉄をはじめとした栄養素が不足するため、むずむず脚症候群を認めることがあります。

  • うつ病

うつ病ではむずむず脚症候群が起こりやすいことが指摘されています。さらには、むずむず脚症候群の患者さんがうつ病を発症しやすいこともわかっているのです。

また、うつ病の治療薬の多くが、むずむず脚症候群を引き起こします。うつ病治療薬の多くは、セロトニンという神経伝達物質を増やす働きをします。

セロトニンは脊髄の交感神経系に興奮をもたらすのです。交感神経が活発になると、筋肉内の感覚を受け取る”筋紡錘”という器官が過剰に亢進します。

その結果、筋肉の痛みや異常感覚があるように感じられ、むずむず脚症候群の症状につながると考えられているのです。

なお、抗うつ薬などの副作用で起こりやすい「アカシジア」はむずむず脚症候群と非常に紛らわしいことがあります。

アカシジアとは、抗うつ薬、抗精神病薬、一部、胃腸薬などによって起こる症状です[6]。足や体がそわそわする・いらいらする感じがあり、じっとしていられなくなります。

動きたくてたまらなくなり、絶えず動き回ろうとします。貧乏ゆすりなども症状の一つです。むずむず脚症候群と違うのは、昼も夜も症状が出ることです。

また、むずむず脚症候群の場合は脚をバタバタしたり擦り合わせたりなどの下肢の症状が中心なのに対し、アカシジアではさまざまな部位の運動をしようとするところも異なります[4]。

  • 抗ヒスタミン薬

アレルギーの薬としてよく使われているものです。鼻汁を抑えるため、風邪薬などにも入っています。

この抗ヒスタミン薬もむずむず脚症候群を引き起こしたり、症状を悪化させるとされているのです。

  • その他の薬剤

吐き気どめや一部の高血圧の薬、脂質異常症の薬、痛み止めなどでもむずむず脚症候群が誘発されることが報告されています。

むずむず脚症候群を悪化させる嗜好品について

様々な嗜好品がむずむず脚症候群を悪化させます[1]。注意するべきものを見ていきましょう。

お酒は控えめに

アルコールはむずむず脚症候群の症状を悪くすることがわかっています。寝酒をされる方もいますが、逆効果です。

タバコはやめましょう

煙草を吸うことで体に取り込まれるニコチンはむずむず脚症候群の増悪因子です。紙巻きタバコだけでなく、加熱式タバコにも含まれています。

タバコの他の健康被害への懸念も併せて、禁煙が望まれます。タバコの数を減らす節煙では効果はありません。

タバコは自力で辞めようとしても、ニコチン依存症になっていてやめられないこともあります。どうしても一人で難しい時は、禁煙外来を受診するのも一つの方法です。

人によっては保険適応で、1万5千円〜2万円程度で禁煙治療を受けることができます[7]。

チョコレートもだめ?カフェインについて

カフェインもむずむず脚症候群を悪化させる一因です。寝る前の摂取は避けましょう。

カフェイン=コーヒーと思われがちですが、エナジードリンクやお茶などにも含まれることがあります。

また、チョコレートにも含まれていますので、食べ過ぎは禁物です。特に「ハイカカオ」をうたったものはカフェインが多い傾向にあります。

むずむず脚症候群の治療について

原因となっている病気を探してその治療を行うことが、最優先で行うことです。

原因となりそうな薬を内服している場合は、別のものに置き換えるなどして減らしたり中止したりすることを考えます。鉄欠乏があればその対応も必要です。

上記で改善しない場合や特発性の場合は、まずは薬以外の治療を試みます。それでも良くならなければ、そこでようやく薬物治療を検討することになるのです。

薬以外の治療法は?

まずは薬を使わず、生活指導などで症状が改善するかどうかを見ます。下記のような点を指導していきます[1]。

  • 増悪因子となるような嗜好品を減らす・やめる
  • 規則的な就寝、起床習慣をつける
  • 眠る前に激しい運動をしない
  • 就寝前に短時間だけ歩く
  • 普段から適度な運動をする(運動不足も激しすぎる運動も悪影響)
  • 体重管理をする
  • 可能であれば、少し遅い時間に就寝するようにする
  • 鉄分の多い食事を心がける

軽症の場合はこのようなことに気をつけるだけでも症状が良くなることがあります。

アクエリアスやポカリスエットが効くって本当?

残念ながら、アクエリアスやポカリスエットなどがむずむず脚症候群に良いという確固たる証拠はありません。

どうしても、足がむずむずして寝れないときの対処法

様々なことに気をつけても、症状が起こってしまうこともあるでしょう。その際はまず少し起き上がったり歩いたりして症状を落ち着けましょう。

温かいシャワー、あるいは冷たいシャワーを浴びると良くなる方もいます。脚をマッサージしたりストレッチしたりすることも効果的です。

むずむず脚症候群の薬物療法は?

生活指導のみで改善しなければ投薬を考えます。代表的な治療薬をご紹介しましょう[1]。

  • ドパミンアゴニスト

元々はパーキンソン病の治療薬として使用されてきたものです。むずむず脚症候群の発症と関わるといわれるドパミンの受容体に働きかけ、ドパミンの作用を補完します。

ドパミンアゴニストは、麦角系と非麦角系という二つのタイプに分けられます。

第一選択薬となるのは非麦角系のお薬です。

「プラミペキソール」(商品名:ビ・シフロール)は内服薬で、最も早くむずむず脚症候群に保険適応なった薬です。1日1回、寝る2〜3時間前に内服します。

プラミペキソールは、最初はごく少量から始めて、1週間以上かけて増量し、症状を見ながら調整していく薬です。注意するべき副作用として突発性睡眠があります。

予期せず眠ってしまうことが起こるのです。車の運転や機械の操作、高いところでの作業などは避けた方が良いでしょう。

また内服を始めたばかりの時は、めまいや立ちくらみなど起立性低血圧の症状が認められることがあります[8]。

「ロチゴチン」(商品名:ニュープロ)はプラミペキソールと同様、非麦角系のドパミンアゴニストです。

この薬は内服ではなく、パッチ、つまり貼り付けて使うタイプの薬になります。1日1枚、肩や腕、お腹、脇腹、お尻、太もものどこかに貼ります。

最初は一番少ない量の製剤から開始し、1週間以上経って増量するところは、プラミペキソールと一緒です。

貼っている間、ゆっくりと薬効成分が放出されるので、血中濃度が安定しやすいです。夜間だけでなく、日中の症状も抑えてくれます。

反面、パッチ製剤ですので、貼ったところがかぶれてしまうことがあるのが欠点です[9]。

麦角系は長く使うと心臓の弁膜症を起こすリスクがあることから、非麦角系が使えない時や効果不十分なときに使用されます。

使用するときは、定期的に心臓の検査を受けることが必要です[1]。

非麦角系・麦角系共通の副作用として、悪心嘔吐などの消化器症状が挙げられます。吐き気止めを一緒に内服することで軽減することができます。

他に、共通で起こり得るのが幻覚や衝動制御障害です。

衝動制御障害とは、強い衝動が抑えられなくなり、ギャンブル依存症や買い物依存症になったり、暴食をしてしまったりすることです。性欲の亢進が認められることもあります。

社会生活に大きな支障をきたすため、このような症状が起こったら、主治医に相談して薬の調整や変更をしてもらってください。

もう一つ、注意しなければならないことがあります。augmentationという状態です。

治療前よりも症状が悪化したり、範囲が広がったり、早い時間から症状が出てきてしまったりすることを指します。長期の連用で起こります。

augmentationを防ぐために、少量ずつ慎重に使用しなければいけません。また、もしも出現してしまった場合、用量の調節や他の薬への変更が必要になります。

決して、ご自身の判断で調整したりやめたりせず、主治医と相談してください。

  • レボドパ製剤

こちらもパーキンソン病のお薬です。ドパミンの前駆物質で、脳に入るとドパミンに変換されます。

脳以外のところでドパミンに変換されるのを防ぐ薬を配合した製剤も開発されています。

短時間で作用が切れてしまうので、レボドパのみで治療しようとすると、使用量が増えたり回数が増えたりするリスクがあるのです。

レボドパでもaugmentationが起こるため、高用量の使用は望ましくありません。必要時のみに使う形にして、できるかぎり連用は避ける必要があります。

また、レボドパでも幻覚や衝動制御障害の報告があるため、これらにも注意が必要です。

  • ガバペンチン

ガバペンチン(商品名:ガバペン)は、元々は抗てんかん薬として開発された薬です。神経の興奮を引き起こす神経伝達物質が放出されるのを抑えます。

その結果、むずむず脚症候群の症状を抑制するのではないかと考えられています。

ドパミンアゴニストやレボドパとは違う部分に作用するので、これらの薬剤の効果が不十分な場合などに使用されてきました。

ただし、同じ量を使っても血中濃度の個人差が大きく、投与量を決めるのに血中濃度測定が必要です。

また、保険適応上はてんかんのみに使用できる薬剤で、しかも他の抗てんかん薬と併用しなければならないという決まりがあります。

そのため、治療薬として使用するのに少しハードルがある薬でした。

2012年にこのガバペンチンのプロドラックであるガバペンチン エナカルビル(商品名:レグナイト)が、むずむず脚症候群の治療薬として発売されました。

プロドラックとは、体の中に取り込まれることで代謝を受け、有効な形になる薬のことを指します。

ガバペンチン エナカルビルは、ガバペンチンとは違った経路で吸収され、代謝を受けます。その結果、ガバペンチンとしての血中濃度が安定しやすくなっているのです[10]。

  • クロナゼパム

こちらも元はてんかんの薬です。クロナゼパム(商品名:リボトリール・ランドセン)はベンゾジアゼピン系と呼ばれる薬に分類されます。

ベンゾジアゼピンは睡眠薬や抗不安薬、鎮静薬などとして用いられることの多い薬です。

そのため、クロナゼパムは特に不眠症状の強いむずむず脚症候群の患者さんの治療の選択肢となっています。ただし、保険適応上はむずむず脚症候群の適応はありません。

ドパミンアゴニストの効果が不十分な場合などに用いられることが多い薬です。

クロナゼパムは比較的長時間作用が持続するため、夜に飲んでも翌日の日中まで眠気などを持ち越すことがあります。

このほか、医療用麻薬であるオピオイドなどに、一定の効果がある可能性が報告されています。

ただし、麻薬としての管理が必要で処方のハードルが高く、保険適応もないことから日本では一般的には処方されません。

また、不眠症などで用いられる「抑肝散」という漢方薬も用いられることがあります[11]。

むずむず脚症候群における鉄剤の重要性

もう一つ、これらとは別に処方をされる薬があります。鉄剤です。

鉄欠乏があり、食事などで改善できない場合は内服の鉄剤の処方を行います。鉄が足りているかどうかは、貧血の数値だけでなく、「フェリチン」という検査値を参考にします。

フェリチンは貯蔵鉄を反映した検査です。体の中の鉄が少なくなると、貧血が進むよりも先にこのフェリチンが低くなります。

フェリチンが少なくとも50〜75 ng/mLを切らないようにします。それより少なければ鉄剤の使用を考えることになるのです[12]。

Q  A

むずむず脚症候群の原因は?

どのような仕組みで起こるのかはまだわかっていない部分もありますが、「ドパミン」という神経伝達物質(神経シグナルを伝えるもの)の機能の異常が関わっていると考えられています[1]。

ドパミンの機能には鉄が関わるため、鉄が不足しているとむずむず脚症候群が起こりやすくなります。

胃潰瘍などがある方、食事が偏っている方、また女性では月経の影響でも鉄不足が起こるのです。

貧血が起こる前から鉄不足が生じていることもあるので、体の中の貯蔵鉄を測定する検査が必要です。

お子さんや若い方では遺伝的な要因が影響しているかもしれません。

両親や兄弟姉妹などの第一度近親者にむずむず脚症候群がある人は、ない人と比べて3〜5倍むずむず脚症候群を発症しやすいことがわかっています[5]。

このような遺伝の影響がある場合の発症は、多くは45歳ごろまでと比較的早めです。進行はゆっくりで、治療にも反応しやすいという特徴があります。

45歳以降では何かしらの病気が隠れていることも多いです[1]。妊娠中の方、透析を受けている方でも、むずむず脚症候群が起こりやすいことがわかっています。

また、抗うつ薬やアレルギーなどに処方される抗ヒスタミン薬など、いくつかの薬は、むずむず脚症候群を引き起こしたり、悪化させたりすることがあるのです。

内服薬の見直しも重要になります。

むずむず脚症候群の症状の抑え方は?

症状が強く出た時には、軽く歩くと改善することが多いです。

温かいお風呂に入ったり、冷たいシャワーを浴びたりすると良くなる方もいます(温める方がいいか冷やすほうがいいかは人により異なります)。

脚のマッサージやストレッチなども効果的です。

症状を悪化させるアルコールは極力避けるべきです。タバコも悪化させる要因となります。禁煙が必要です。また、寝る前のカフェイン摂取も控えましょう。

起きている時間に症状が出て困るようであれば、ゲームなど別のものに集中し、気を逸らすと良いでしょう[1]。

むずむず脚症候群の治し方は?

まずは薬を使わず、生活指導などで症状が改善するかどうかを見ます。下記のような点を指導していきます。

  • 増悪因子となるような嗜好品を減らす・やめる
  • 規則的な就寝、起床習慣をつける
  • 眠る前に激しい運動をしない
  • 就寝前に短時間だけ歩く
  • 普段から適度な運動をする
  • 体重管理をする

軽症の場合はこのようなことに気をつけるだけでも症状が良くなることがあります[1]。これで良くならなければ、主治医の先生と薬による治療について相談をしましょう。

むずむず脚症候群のセルフチェックは?

下記のような症状があればむずむず脚症候群の可能性が高くなります[2]。

  1. 下肢を動かしたくてたまらないという衝動にかられる
  2. 横になったり座ったりなど安静にした状態で症状が出てくる、あるいは悪くなる
  3. 症状は歩くなど運動することによって軽くなる
  4. 夕〜夜間に症状が出てきたり悪くなったりしやすい

思い当たるようであれば、一度受診をすることをお勧めします。

お子さんの場合は、症状がはっきりと自分で言えないこともあるので、このような症状チェックだけでは見逃してしまうかもしれません。

寝る時に脚を絶えず動かしていたり、脚をさすってあげないと眠れなかったりする場合は、むずむず脚症候群が隠れている可能性があります[1]。

気になる場合は診察を受けましょう。

むずむず脚症候群だと思ったら何科を受診すればいい?

多くの場合は、神経内科が専門です。睡眠外来を行っている一部の精神科でも対応可能な施設があります。

病院によって診療できるかどうかは異なるため、一度問い合わせてみると良いでしょう。

お子さんの場合は、まずはかかりつけの小児科の先生に相談し、対応可能な小児神経などの専門の医師に紹介してもらうと良いかもしれません。

まとめ

むずむず脚症候群は睡眠を妨げ、生活の質を下げるリスクがある疾患です。

生活習慣の改善、鉄を豊富に含む食事、適度な運動などである程度症状を落ち着かせることができるかもしれません。

もしも「むずむず脚症候群かも」と思ったら、一人で悩まず専門医の受診をしてみてください。

参考文献

[1]黒岩 義之, ほか. 神経治療学.29(1): 71-109, 2012.

[2]Allen RP, et al. Sleep Med. 15:860-873, 2014.

[3]鈴木 圭輔, 渡邉 菜穂美, 平田 幸一.Derma. 275: 135-140, 2018.

[4]植木 洋一郎, 林田 健一. 睡眠医療7(1); 21-27, 2013.

[5]Allen RP, et al. Sleep Med. 4:101-119, 2013.

[6]厚生労働省. 重篤副作用疾病別対応マニュアル アカシジア. 2010.

[7]日本循環器学会, 日本肺癌学会, 日本癌学会, 日本呼吸器学会. 禁煙治療のための標準手順書 第8.1版, 2021.

[8]ビ・シフロール錠0.125mg/ビ・シフロール錠0.5mg 添付文書. 2022年11月改訂(第1版).

[9]ニュープロパッチ2.25mg/ニュープロパッチ4.5mg/ニュープロパッチ9mg/ニュープロパッチ13.5mg/ニュープロパッチ18mg 添付文書. 2022年6月改訂(第2版).

[10]柿元周一郎, ほか. 日本薬理学雑誌.140; 85-92, 2012.

[11]小曽根基裕. 医学のあゆみ. 242(6/7); 545-550, 2012.

[12]井上雄一. 医学のあゆみ. 281(10); 971-978, 2022.

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