パニック障害とは?
パニック障害とは、何の前触れもなく動悸や呼吸ができなくなる、吐き気、手足の震えなど、日常的にパニック発作を繰り返す疾患です。
パニック障害に罹患する人は100人に1人の割合で発作をおこしてしまうという、罹患率が高い病気です。
性別では女性の方が男性の2~3倍と多く、発症リスクが高い年代は男女ともに20~30代と言われています。つまり、若い女性で発症している人が多い傾向があるのです。
生きているうちにパニック発作を起こす人は全人口の約11%と多くはありません。
しかしその中で4分の1程度の人がパニック発作を繰り返し、慢性的となってパニック障害を引き起こします。
一度パニック発作が起きて日常的に繰り返してしまうと、自分を自分でコントロールできなくなり、このまま死んでしまうのではないかと思うほどの重度なパニック発作に悩まされてしまう人もいるのです。
そのためパニック発作が起きやすい場所などを自分自身でしっかり把握し、避けなければなりません。
パニック障害が重篤化し、外出できないリスクも高まるので治療は必ず受けることをおすすめします。
パニック障害の症状は?
パニック障害の症状は、パニック発作と予期不安、広場恐怖といった3種類の症状があります。この3つの症状は、パニック障害の一連の流れで起きる症状です。
パニック障害と言われておりますが、以前は心臓神経症や過呼吸症候群という病名で呼ばれていました。
パニック障害は薬物療法が有効ということが分かり、1980年にパニック障害という独立した病気として扱われているようです。
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パニック障害
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予期不安
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広場恐怖
それぞれ、ご紹介します。
パニック発作
パニック発作は、何の前触れもなく突然、動悸や呼吸困難、吐き気、めまいなどの症状が現われ、とても強い恐怖と不安感を抱きます。
パニック発作はだいたい5〜20分程で治まりますが、自分はこのまま死んでしまうのではないか、自分自身のコントロールができないという耐えられない恐怖感を伴うことが多いです。
そのためパニック発作を疑った人は、早期に医療機関を受診するようにしましょう。
予期不安
予期不安は、パニック発作を起こし「あの恐怖が襲ってくるかもしれない」と漠然的に思うことです。
例えば、医療機関に到着し診察を受ける頃にはパニック発作が治まり、検査の結果も異状なしと言われ自宅に帰されることも少なくありません。
しかしその後もパニック発作は続き、また発作が起きるのではと過度に不安な状態になります。
またパニック発作が改善しても、予期不安は残ることがあるので注意しましょう。
広場恐怖
広場恐怖は、パニック発作を起こした人が発作を起こした場所や発作を起こした場所に助けが得られない場所を恐怖と感じてしまうことです。
例えばバスや電車、高速道路の運転などパニック発作を起こしてその場所から離れられないような場所は必然的に行けなくなります。
そのような経験から1人で外出することは困難となり、日常生活に支障をきたすことになってしまうのです。自分が今どんな症状なのか、病院で受診し治療を行いましょう。
パニック障害になりやすい人の特徴とは?
パニック障害になりやすい人の特徴は、精神的不安や恐怖心が強い人や、精神的ストレスが原因となって発症する傾向にあります。
さらに精神的なストレスだけではなく、肉体的な疲労などが深く関係しているときもパニック障害を発症しやすいと言われています。
パニック障害になりやすい人の特徴は、以下の通りです。
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精神的に追い詰められている
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真面目で完璧主義
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人間関係のストレスを感じている
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こだわりが強い
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感受性が高い
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肉体的な疲れを感じている
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過去にうつ病などに罹ったことがある
元々の性格が発症の要因となるケースも多いので、注意しましょう。
パニック障害の症状をセルフチェック
パニック障害に罹患しているかをチェックすることができます。以下の症状が4つ以上当てはまる場合、医療機関での診察を受けることをおすすめします。
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動悸を感じる
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発汗がある
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身震いを感じる
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息切れ感、息苦しさを感じる
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喉が詰まる感じ(窒息感)がある
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胸部の不快感、胸痛を感じる
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腹部の不快感や嘔気を感じる
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めまい・ふらつき・気が遠のく感じがある
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周りが現実で無い感じ・自分自身の体から離れる感じがある
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コントロールを失ったり、気が狂うのではないかという恐怖がある
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死ぬのではないかという恐怖を感じる
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体のしびれる感じなどの異常感覚がある
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身体が冷く感じたり、熱く感じたりする
パニック障害の症状が、単発的で稀に発症する程度ならほとんど心配ありません。
しかし定期的に発症したり頻繁に症状がみられる場合は病院への受診を早めに行うことをおすすめします。
パニック症状が起こる原因
パニック障害を起こす原因と考えられることが、3つあります。
もともとの性格が要因となり、パニック障害を発症してしまうケースも多いです。
しかし丈夫な健康体を持っていても、日々の疲れや睡眠不足などが引き金となり、パニック症状が起こることもあると言われています。
またホルモンバランスが崩れた影響で、パニック症状を起こすことも考えられています。
そのためホルモンバランスの影響を受けやすい女性が、パニック症状を起こす確率も高いです。
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ストレス
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神経質
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遺伝的要素
この3つについて、解説します。
ストレス
ストレスは、パニック障害の直接の原因ではありません。
しかし日常でストレスが溜まったり、仕事や生活上の大きな変化があったりすると、発作の症状が出やすくなることがあります。
ストレスが溜まったままパニック発作を繰り返すと、日常生活を送ることができなくなる可能性も高くなってしまうのです。
また疲労がたまっていると、発作を起こしやすい傾向がみられます。これは疲労物質の乳酸の濃度が高くなるためと考えられます。
神経質
パニック障害を発症してしまう人の中には、普通の人より神経質もしくは心配性な性格の人が多い傾向にあります。
しかし神経質や心配性の性格とは、元々の性格ではなくパニック障害によって変化した可能性も十分にあるのです。
パニック障害の症状が落ち着くと、元々の性格に戻ることもあります。
遺伝的要素
パニック障害の原因の1つに、遺伝的要素も含まれています。
遺伝的要素がすべての原因というわけではなく、一部が関係していると言われているだけで詳細については解明されていません。
しかしパニック障害にかかりやすい体質は存在し、一等親である親や兄弟の発症率は17.3%と報告されています。人口の約8割が遺伝的要素で発症してしまうリスクが高いです。
パニック障害に罹患する特定した遺伝子は見つかっていませんが、多因子遺伝の可能性があるのではないかと、考えられています。
パニック障害の症状の対処法は?
パニック障害は、突然何の前触れもなく発症します。体は健康なのに、死ぬかもしれないほどの過呼吸や心臓が痛くなるほどの動悸が起こる、精神疾患です。
発症してから治まるまで約10分程度と短い時間ですが、恐怖や不安が相まって発症してしまっている本人にとっては苦痛の時間と言えるでしょう。
そんな時は、54321法を試してみると良いようです。54321法は、パニック発作から意識をそらし意識の矛先を変えることで、不安感を遠ざけるのに有効だと言われています。
54321法の手順は、以下の通りです。
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目に見えるものを5つ、口に出してみる
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耳に聞こえるものを5つ、口に出してみる
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肌に感じるもの(電車の振動を足裏に感じる、スカートの裾が足に触れているなど)を5つ、口に出してみる
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同じように次はそれぞれ3つずつ、2つずつ、1つずつ、戻ってまた5つずつと繰り返していく
またバスや家では、いつでも逃げられる出口に近い場所に移動したり過呼吸になると呼吸が早くなるので、深く深呼吸をしたりと対処しましょう。
自力で治ることも
何の前触れもなく起こるパニック障害は、対処法を知っているだけで自力で治すことも可能です。
しかし、簡単にできることではないので症状が定期的に出る場合は、病院へ診察に行くことをおすすめします。
自力でパニック障害を治そうと試みても、かなりの時間がかかることや1人で治療するというストレスにより、逆効果になってしまうケースもあるので注意が必要です。
さらにパニック障害が重症化してしまうと、自力で治すことは不可能に近くどんどん悪化していく一方です。
その後症状が改善されれば病院に行く必要はありませんが、定期的に続くようであれば早めに病院へ受診しましょう。
病院を受診することで、自力での治療より早く改善できる見込みがあります。
パニック障害の症状を治す方法
パニック障害の治療法は、薬物療法と行動療法の2種類の治療法で行います。2種類の治療法を組み合わせることで、改善へ導くことが標準です。
薬物療法で偏桃体の必要以上の活性化を防ぎ、パニック発作の症状を改善します。
偏桃体とは、側頭葉の中の構造であり、恐怖や不安などの負の感情に深く関わる部分です。
そのため、偏桃体が正常に機能しなくなり必要以上に活性してしまうと、様々な精神疾患を発症してしまいます。偏桃体の活性化を防ぐためにも、薬物療法は必須となります。
また行動療法により、予期不安があった場所や状況に徐々にチャレンジし克服していきます。無理にやるのではなく、焦らずゆっくり治療をしていくことがポイントです。
自分と担当医で目標を決め治療を開始すると、いい方向へ改善されるでしょう。
他にも認知療法などの治療方法もあり、その患者に合わせた治療法をすることが完治への近道です。
パニック発作を起こさないためにも、規則正しい生活を心がけ睡眠と適度な運動を心がけると良いようです。
パニック障害の人に言ってはいけない言葉
パニック障害は、自分をコントロールできない精神疾患でいつ発症するか分かりません。
しかし、周りがパニック障害をよく知らず環境に慣れてしまい、つい言ってしまいがちな言葉や当事者を傷つけるような言葉をかけられてしまうこともあります。
「またか」「体には問題ない」「気の持ちよう」「甘えではないか」など、酷い言葉を浴びせられると患者はさらに酷い発作を起こしかねません。
もちろんパニック障害に限らず状況によって言ってはいけない言葉を口にするのは良くないですが、特にパニック障害の人には、絶対に言ってはいけない言葉です。
周りの方も寄り添ってあげられると良いでしょう。パニック障害に対して、適切な知識を理解し労り、治療に協力する事が大切です。
自分ではどうにもできずコントロールも出来ないため、パニック障害の人は常に不安な気持ちを持っています。パニック障害に追い打ちをかけるような言動は慎みましょう。
Q&A
パニック障害の症状は?
パニック障害の症状は、動悸や息苦しさ、めまい、吐き気などの症状が現われ、自分がこのまま死んでしまうのではないかと、不安感や恐怖感も現れます。
繰り返し起こるパニック発作と予期不安を解消することにより、症状は落ち着いて来るでしょう。
何の前触れもなく動悸や息苦しさが現れる事をパニック発作と言います。
発作が起きたため病院を受診しようとしても、到着した途端発作が治まってしまうことも多く、そのまま問題ないと言われることも少なくありません。
そして受診後にまた発作が起きるのではないかと過度に不安な状態になる回数が増えていくケースがあるのですが、これを予期不安と呼びますこのような状態が続くと1人での外出ができなくなり、学校や会社に行けなくなるという広場恐怖に陥ってしまう可能性があるのです。
パニック発作を発症したら落ち着いて深呼吸をしたり、パニック発作から意識をそらすような行動をとりましょう。
パニック障害の初期症状は?
パニック障害の初期症状は、パニック発作による動悸や呼吸困難などがあげられます。
このような発作を繰り返すうちに「またパニック発作を発症したらどうしよう」と予期不安が強烈に強まります。
日々の生活の中で、1人で部屋にいるときに動悸を感じたり、人混みの中にいるときに気分が悪くなり吐き気がしたりするとパニック障害を起こしやすいです。
また自動車を運転中にトンネルや高速道路で手汗、動悸、逃げ場がない不安感などでパニック発作を発症することもパニック障害の初期症状だと考えられます。
すると、発作が起きそうな場所や状況を避けはじめ、1人で行動できなくなることも増えてきてしまうのです。
パニック障害は日常生活の中で起こり、発症する患者も少なくありません。頻繁に症状が現れる場合は、早めに病院へ受診しましょう。
パニック障害になるきっかけは?
パニック障害になるきっかけは、強烈なストレスなどによる外因的要素だけでなく神経質であったりこだわりが強いなどの性格や遺伝的な要素が関係しています。
例えばテレビに出演するとき、異常に心臓がバクバクして緊張するのもパニック発作の1つです。
パニック発作の場合、強いストレスや緊張によりドキドキして過呼吸のようになってしまうことがあります。
しかしパニック障害になってしまうと、リラックスしている状態や睡眠時にも発症することも多く、リラックスパニックとも呼ばれます。
できるだけ強いストレスや極度の緊張を控え、気持ち的に穏やかな生活を心がけながら規則正しい生活を心がけましょう。
パニック発作はどんな時に起こりますか?
パニック発作は突然起こる発作なので、睡眠中やリラックスしているときでも発症する恐れがあります。
何度もパニック発作を繰り返していると慢性的になり、その場所や状況をまた経験すると緊張が高まり、発作が出やすい状況を作りかねません。
パニック発作が起きる場所や環境で多いのがエレベーターの中や人混み、狭いトンネルなどにいるときに発作が起こる傾向にあります。
また、少し慌てているときに「パニックになった」と言うこともありますが、パニック発作の場合は軽い気持ちで言えるような症状ではなく、本人は命の危険を感じることがほとんどです。
いつもとは違うパニックの症状やどうにもならない不安感や恐怖が生じたときは、早急に病院で受診することをおすすめします。
自力でパニック発作が治ることもありますが、その治療期間が長引いたり、逆に悪化したりします。
その結果治りも遅くなり、定期的にパニック発作を繰り返すなどして、うつ病などの病気を併発する可能性が高いです。
パニック発作を繰り返さないためにも、病院で治療を行いゆっくり完治を目指しましょう。
まとめ
パニック障害の症状や原因、セルフチェックから治療法までをご紹介しました。
日々の生活の中で誰にでも起こり得るパニック障害は、ストレス社会の大きな問題になっています。
パニック障害は何の前触れもなく現われ、動悸や息切れ、めまいなどを発症しうつ病を併発してしまう可能性があります。
その症状も人それぞれで、パニック発作や予期不安を頻繁に発症し、1人では外に出られない事も多いです。
またパニック発作を起こすたびに、周りから「またか。」「気持ちの問題」「気のせい」などと言われ精神的に傷つくことも少なくありません。
その一つ一つの言葉が強いストレスとなり、パニック障害を悪化させることもあると、ぞれぞれが理解しておかなければいけません。
症状が続くようであれば、早めに病院へ受診し治療を開始しましょう。
パニック障害の治療法は薬物療法と行動療法を中心に様々な治療法を併用していくため、罹患した人に合った治療法を専門医師と相談しながらゆっくり改善していきましょう。
パニック障害の治療に、焦りは禁物です。時間をかけて社会復帰できるよう、治療に専念することをおすすめします。
参考文献