海外の薬事情|個人輸入のリスクや注意点を徹底解説
日本の薬事情
日本では政府が薬の効能と無害性を保証し、何かおきた際には保障する体制が整っています。その体制を担うのは、医薬品医療機器総合機構(PMDA)。
PMDAは、医薬品医療機器等法という法律に基づいて医薬品や医療機器の安全性や有効性を審査・承認するだけでなく、健康被害救済や安全対策を担当しています。
海外でもPMDAのような機関が薬の審査・承認をする国は少なくありませんが、認可薬の効能と安全性を保証する国はとてもまれです。
現在の法律では国内で一般的に流通している医薬品や医療機器は、PMDAの承認を受けなければいけないとされています。
審査・承認にあたっては国内外で開発・販売された医薬品や医療機器を日本人に使用しても問題ないかという、人種・体格差による有害性がないかも調べているのです。
現在、国内で流通しているOTCと処方箋医薬品を合わせると、その数は約25000品目を超えます。
ちなみにPMDAが承認する医療機器は、家庭で使用するコンタクトレンズ・マッサージ機・補聴器なども対象です。
PMDAは膨大な数の医薬品や医療機器をチェックし、流通後のトラブルまで監視しているのです。
参考 PMDA https://www.pmda.go.jp/about-pmda/index.html
海外の薬事情
海外で販売・流通する薬の審査・承認は、日本ほど厳しくはありません。
海外では患者には薬を選択する権利と自己責任が保障されている反面、副作用が問題になってもその責任は製薬会社と薬を選んだ患者にあるというスタンス。
国が薬を認可するシステムがあっても、もし副作用やトラブルが問題になったケースでも日本のように国が保証するシステムがない国がほとんどなのです。
加えて日本や先進国では、国が未認可の薬が流通していないか監視する体制が整っています。
しかし、途上国はその監視体制も甘く、アジアやアフリカ・南米では流通する薬の30%程度が偽薬という驚きの報告もあります。
海外の薬事情をよく理解したうえで、海外製の医薬品や医療機器を使用したいですね。
薬の個人輸入で押さえておきたい3つのポイント
海外で流通する薬の安全性や有効性に対する認識は、国内とは大きくことなっています。
海外の薬を使用する際に、日本国内で流通する薬と同じように考え安易に使用するのは避けてください。
近年、インターネットを通じて海外から薬を購入する、いわゆる個人輸入する人が増えています。
さらに、旅行先で購入した医薬品や化粧品・医療機器を持ち帰ることも個人輸入に該当します。
しかし、薬の個人輸入に関するさまざまな情報をお持ちでない方が少なくありません。
ここからは『薬の個人輸入で押さえておきたい3つのポイント』と題し、以下の3点について解説します。
- 薬の個人輸入の基本ルール
- 薬の個人輸入のリスク
- 薬の個人輸入に関する相談窓口
1.薬の個人輸入の基本ルール
インターネットサイトを利用しての購入、旅行の際にお土産として持ち帰る。
いずれの方法でも、医薬品の個人輸入は「自分自身での使用のみ認められる」とされています。
販売目的で輸入する場合や一定の数量を超えて輸入する場合には、法律に基づいて厚生労働大臣や都道府県知事の承認と薬監証明書や輸入確認証の取得が必須です。
参考 医薬品等の輸入手続きについて 関東信越厚生局
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/iji/yakkanhp-kaishu-2016-3.html
特例として以下の範囲内については税関の確認のみで輸入できます。
特例として以下の範囲内については税関の確認のみで輸入できます。
医薬品 | 外用薬 (毒薬、劇薬及び処方箋薬をのぞく) | 標準サイズで1品目24個以内 |
毒薬、劇薬又は処方箋薬 | 用法用量からみて1ヶ月分以内 | |
上記以外の医薬品・医薬部外品 | 用法用量からみて2ヶ月分以内 | |
化粧品 | 標準サイズで1品目24個以内 | |
医療機器 | 家庭用医療機器(電気マッサージ器など) | 1セット |
使い捨て医療機器(生理用タンポン、使い捨てコンタクトレンズなど) | 2ヶ月分以内 | |
体外用診断薬(排卵検査薬など) | 2ヶ月分以内 | |
再生医療等製品 | 用法・用量・使用方法からみて1か月分以内のもの |
医薬品・医薬部外品であっても、数量に関わらず厚生労働省の確認が必要な薬もあります。
これらは未承認の医薬品や、医師の指導のもとに適切に使用しなければ健康被害のおそれがある薬、重大な健康被害のおそれがある医薬品成分が検出された薬などが該当します。
詳しくは、こちらの使用を参照ください。
参考 数量にかかわらず厚生労働省の確認を必要とする医薬品の改正について 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000790481.pdf
また国内では医薬部外品とみなされている養毛剤、浴用剤、ドリンク剤、サプリメントやビタミン剤も製品によっては医薬頻成分が含まれていたり、医薬品と同等の効果・効能をうたっている場合には、医薬品に該当する可能性があるため注意が必要です。
さらに麻薬や向精神薬、医薬品覚せい剤原料については、医師から処方された本人が携帯して入国する場合を除いて、個人輸入は禁止されています。
これらの薬物については、誰かに依頼して持ち込んでもらう、インターネット通販で取り寄せることも禁止されていて、違反すると処罰の対象となります。
そのほかにも、以下のようなワシントン条約に基づき絶滅のおそれのある野生動植物を原料とした薬も輸入できません。
- 犀角(サイカク:サイの角)
- 麝香(ジャコウ:ジャコウジカの分泌物)
- 虎骨(ココツ:トラの骨)
- 熊胆(ユウタン:クマの胆のう)
引用:医薬品等の個人輸入について 厚生労働省
2.薬の個人輸入のリスク
「SNSで効果がある噂だけど、日本では売っていない」
「国内で買うよりも安く購入できる」など
薬を個人輸入する理由はさまざまですが、個人輸入には次のようなリスクがあることを理解しておきましょう。
- 日本の医薬品医療機器等法に基づく品質・有効性・安全性の確認がされていない
- 虚偽または誇大な効能・効果をうたっている可能性がある
- 不衛生な場所や方法で製造された危険性がある
- 正規のメーカー品を装ったニセ薬の可能性がある
- 副作用や不具合などの対処方法や補償が不明である
- 輸入業者とのトラブルがおこる可能性がある
過去には、日本で安全性や効果・効能が確認されていない薬を個人で輸入し、服用・使用したことでさまざまな健康被害が報告されています。
- ダイエット効果が期待できる錠剤、カプセル剤
⇒胸のドキドキ、めまい、死亡
- ダイエット薬や強壮用剤
⇒肝機能障害、頭痛、めまい、低血糖など
- RU486(内服妊娠中絶薬)
⇒膣からの大量出血
厚生労働省は個人輸入やインターネット購入による健康被害を、以下のホームページで公表しています。個人輸入を考えている方は、ぜひ一度お読みください。
参考:健康被害情報 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/daietto/index.html
個人輸入やインターネット購入による健康被害 あやしいヤクブツ連絡ネット
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/health_damage/index.html
3.薬の個人輸入に関する相談窓口
海外から薬を持ち込む、医薬品をインターネット経由で個人輸入する場合、さまざまな手続きだけでなくリスクや危険性が伴います。
正規の輸入手続きをしなければ、厳重に処罰される可能性があります。
薬の個人輸入に関しては、事前に各地域の地方厚生局薬監視専門官に相談しましょう。
関東信越厚生局(函館税関、東京税関及び横浜税関)
電話:048-740-0800 FAX:048-601-1336
近畿厚生局(名古屋税関、大阪税関、神戸税関、門司税関及び長崎税関)
電話:06-6942-4096 FAX:06-6942-2472
九州厚生局沖縄麻薬取締支所(沖縄地区税関)
電話:098-854-2584 FAX:098-834-8978
薬の種類や成分・量によっては、体に負担がかかったり想定外の副作用がおこる可能性があります。
本当にその薬を持ち込んだり、個人輸入する必要があるのか、国内に同等の効果・効能が期待できる薬はないのか、事前に医師に相談しましょう。
個人輸入には注意点がたくさん。薬の処方・服用は専門医に相談を!
国内と海外では、薬の効果・効能・保障に関する考えやスタンスが異なっています。
海外と比較すると、日本のシステムは厳しくわずらわしいように感じるかもしれませんが、ですが、一人ひとりの健康を守るために作られたシステムであることを理解しましょう。
個人輸入に関する正しい知識を持ち、困った場合にはお一人で判断せず、かかりつけ医師や専門機関に確認・相談してください。