熱が上がったり下がったりするのもマイコプラズマ肺炎のせい?症状をチェック
マイコプラズマ肺炎は咳だけでなく、発熱や頭痛、倦怠感などの症状があらわれます。また、熱が上がったり下がったりするという特徴を持つ呼吸器感染症です。
約80%は14歳以下の子どもや若い人に多くみられ、感染した際は、胸部風邪の症状があらわれます。季節性はなく1年を通して発生し、冬にやや増加する傾向があります。[1]
マイコプラズマ肺炎の症状を表に示しました。
全ての症状が必ずあらわれるというわけではありませんが、ご自身の症状をチェックしてみましょう。
主な症状 |
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その他の症状 |
現れる頻度 |
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25% |
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6~17% |
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40% |
マイコプラズマ肺炎は感染するまでに2~3週間と潜伏期間が長いことが特徴です。
また、発症すると発熱や頭痛、倦怠感など風邪によく似た初期症状が現れ、3~5日経過してから咳が出始めます。
咳は徐々に強くなって乾いた咳から湿った咳に変わり、熱が下がったあとも3~4週間にわたり続くこともあります。[2]
マイコプラズマ肺炎は、「肺炎」と名がついていますが、通常の肺炎とは異なります。
気管支や肺胞の外にある間質という組織で炎症を起こすため、聴診器で胸の音を聞いたときに肺炎に特徴的な「ゼロゼロ」「ゼイゼイ」という音が聞こえません。
ただし、肺胞に炎症が広がると聴診で異常音が聞こえるようになります。
症状が軽い場合は異常がなく、確定診断に時間がかかるケースもあります。
マイコプラズマに感染しても重症になるケースは少なく、気管支炎などの軽い症状で済むことがほとんどです。
寝込むほど症状が重くなるわけではないため、気づかずに外出する人が多いため、「歩く肺炎」と呼ばれます。[6]
しかし、大人と子どもでは症状の違いがあり、大人の方が症状がひどくなるケースもあります。一部の人は重症の肺炎に進行する可能性も少なくありません。
合併症を引き起こすこともあるため注意すべき疾患と言えるでしょう。
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長い潜伏期間
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大人と子どもの違い
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合併症を引き起こす可能性
これらの詳細について、順を追って解説していきます。
関連記事:「マイコプラズマ肺炎の症状は?かぜとの違いを解説」
関連記事:「中国で大流行の「歩く肺炎」マイコプラズマ肺炎に要注意」
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長い潜伏期間
マイコプラズマ肺炎の潜伏期間が2~3週間と長いです。
短期間一緒に過ごしても感染する確率は低く、家庭内はもちろんのこと、学校や大学寮、軍事関連施設、長期介護施設、病院など人が多く密接して過ごす施設で感染が拡大しやすいです。
周囲に感染した人がいたら、マイコプラズマ肺炎がうつる期間(2~3週間)は体調の変化に注意が必要する必要があります。
初期症状は風邪とよく似ており、症状も軽いためマイコプラズマに感染していると気付かないことも少なくありません。発熱や頭痛、倦怠感、乾いた咳が出始めたら要注意です。
先述したように、マイコプラズマに感染し発症しても寝込むほど症状が重くなることはあまりないため「歩く肺炎」と呼ばれています。
マイコプラズマ肺炎が疑われるような症状があらわれている人がいたら、自分や家族など周囲の人に感染させないためにもマスクをするなどして咳エチケットをおこないましょう。
関連記事:「中国で大流行の「歩く肺炎」マイコプラズマ肺炎に要注意」
大人と子どもで症状の違い
マイコプラズマ肺炎は子どもに多く見られる感染症ですが、大人も感染する可能性があります。症状は子どもとほとんど同じですが、大人と子どもでは異なる特徴が3点あります。
ここでは、大人の症状の特徴をご紹介します。
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症状が悪化しやすい
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湿った咳にかわる
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熱が上がったり下がったりする
ひとつめは症状が「悪化しやすい」ことです。
大人、特に高齢者は症状が悪化しやすいです。重症の肺炎になると胸に水が溜まる胸水貯留や呼吸不全を引き起こす可能性があります。
ふたつめは「湿った咳にかわる」ことです。
マイコプラズマ肺炎では、乾いた咳が長期間続くという特徴的な症状があります。
しかし、大人の場合は気道の炎症によって分泌物が増加し、乾いた咳から痰が絡んだような湿った咳になることがあります。
みっつめは「熱が上がったり下がったりする」ことです。
1日中熱が出ているわけではなく、熱が上がったり下がったりする「弛張熱(しちょうねつ)」という現象がみられることがあります。
子どもの場合は比較的症状は軽く、ほとんどのケースが外来で治療が可能です。一方、大人は症状が悪化しやすく、重症化して入院が必要になる場合もあるため注意しましょう。
関連記事:「熱はないが、マイコプラズマ肺炎の可能性?症状の見分け方と対処法を解説」
関連記事:「大人のマイコプラズマ肺炎の特徴とは?症状チェックシートでセルフチェック」
マイコプラズマ肺炎は合併症を引き起こすことも
マイコプラズマ肺炎は重症化が比較的少ない感染症ですが、一部の人で以下の合併症を引き起こす可能性があります。[2]
【比較的多く出現する合併症】
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気管支喘息
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気管支炎
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発疹
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鼻炎
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中耳炎
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副鼻腔炎
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消化器症状(食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢等)
【稀な合併症】
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重症肺炎
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無菌性髄膜炎
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胸膜炎
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肝炎
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膵炎
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心筋炎
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関節炎
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溶血性貧血
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ギラン・バレー症候群(手や足に力が入らなくなる末梢神経の障害)
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スティーブンス・ジョンソン症候群(眼、鼻、口唇・口腔、外陰部などの粘膜にただれが生じ、全身の皮膚に赤い斑点、水ぶくれなどが多発する病気)
重い合併症を起こさないためには早期治療が重要です。
しかし、マイコプラズマ肺炎の初期症状は風邪によく似ているため「ただの軽い風邪だ」と考えて治療が遅れることも少なくありません。
まれに起こるマイコプラズマ肺炎の合併症も、早めに治療を行わないと後遺症として残ってしまう可能性もあります。
痰の絡まない咳が長期間続くときや、処方された風邪薬を飲んでも症状が改善しないときは要注意です。
治療中、何か気になることがあれば早めに医療機関を受診し、医師に相談しましょう。
マイコプラズマ肺炎の原因や感染経路について
マイコプラズマ肺炎の原因は「マイコプラズマ・ニューモニエ」という細菌です。呼吸器系に損傷を与えることで病気を引き起こします。
感染経路は風邪やインフルエンザと同じ飛沫感染、あるいは接触感染です。[2]
感染者の咳やくしゃみなどのしぶきを吸い込んだり、病原体が付着した手で口や鼻に触れたりすることによって感染します。
感染を予防するためにはしっかり手洗いをすることが大切です。
また、発症した人は周囲の人に感染しないようマスクを着用し、咳エチケットを守りましょう。
しかし、感染対策を行っていても感染の可能性はゼロではないのも事実です。
マイコプラズマ肺炎はどれくらいの確率でうつってしまうのでしょうか。
関連記事:「マイコプラズマについて知ろう」
関連記事:「マイコプラズマ肺炎の原因は?感染経路や予防策についても解説 」
関連記事:「マイコプラズマとは?風邪や一般的な肺炎との違いを解説」
マイコプラズマ肺炎がうつる確率は?
マイコプラズマ肺炎の感染力は風邪やインフルエンザほど強くないので、うつる確率は非常に高いというわけではありません。[2]
感染には濃厚接触が必要であると考えられており、学校や大学寮、軍事関連施設、長期介護施設、病院など人が多く密接して過ごす施設で感染が拡大しやすいです。[6]
家庭内での感染確率は高く、接触する機会の多い乳幼児と親が共に感染するケースがよくみられます。
家庭内で感染者が出た場合はこまめに手洗いをして、発症した人はマスクを着用するなどの感染対策が必要です。
また、普段から抵抗力を高め、感染しにくい状態を保つことも大切です。
感染症に負けない身体をつくるために、十分に栄養と休養をとり、規則的な生活を送りましょう。
関連記事:「マイコプラズマ肺炎は人にうつるの?症状や治療法についても解説 」
マイコプラズマ肺炎の診断方法
マイコプラズマ肺炎の診断は、ほかの呼吸器系の疾患のような迅速検査はありません。医師が症状を観察し問診した結果、マイコプラズマ肺炎の症状や特徴を探します。
おこなわれる検査としては、胸部X線検査です。もちろん、肺炎球菌感染症の検査も存在します。
検査の際は患者の鼻やのどの粘膜を採取して検査機関に送る必要があります。しかし、結果が分かるまで数日かかるため検査を行わない医療機関があるのも事実です。
関連記事:「熱はないが、マイコプラズマ肺炎の可能性?症状の見分け方と対処法を解説」
マイコプラズマ肺炎の治療方法
抗菌薬(抗生物質)を服用して治療します。
マイコプラズマ肺炎の原因菌であるマイコプラズマ・ニューモニエは、一般的な細菌と違って細胞壁を持たないため、細胞膜を破壊して細菌を殺すペニシリン系やセフェム系抗菌薬は効果がありません。
マイコプラズマ肺炎の内服治療には以下の薬剤が用いられます。
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マクロライド系
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テトラサイクリン系
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ニューキノロン系
3種類の抗生剤の詳細を記した表も確認してみるとよいでしょう。
抗生剤の種類 |
成分名 |
マクロライド系 |
エリスロマイシンエチルコハク酸エステル エリスロマイシンステアリン酸塩 |
クラリスロマイシン | |
アジスロマイシン | |
テトラサイクリン系 |
ミノサイクリン |
ニューキノロン系 |
レボフロキサシン トスフロキサシン |
一般的には、マクロライド系のエリスロマイシン、クラリスロマイシンなどが第一選択薬、テトラサイクリン系、ニューキノロン系抗菌薬が第二選択薬となります。[2]
ただし、8歳未満の子どもにはテトラサイクリン系抗菌薬は原則使用しません。
歯牙形成期にある小児にテトラサイクリン系抗菌薬を投与した場合、歯牙の着色やエナメル質形成不全、一過性の骨発育不全を起こす可能性があるためです。[4]
症状が軽い場合は外来で治療が可能ですが、重篤な肺炎を起こしている場合は入院してステロイドの全身投与(点滴)を行うこともあります。
近年、マイコプラズマ感染症に使用される抗菌薬が効かない耐性菌の増加が懸念されています。
耐性菌に感染した場合は、ほかの抗菌薬を使用して治療が可能です。
しかし、耐性菌が広まって使用できる抗菌薬が減ると、免疫力の弱い乳幼児や妊婦、高齢者、持病を持つ人など、重症化リスクが高い人の命が危険にさらされます。
耐性菌が出現する原因はいくつかありますが、抗菌薬の服用を自己判断で中断することが原因のひとつであるといわれています。
体内に残った細菌から耐性菌が出現する可能性があるためです。[5]
医薬品は、医師の指示を守って使用しないと十分な効果が期待できません。
薬剤耐性の拡大を防ぐためには、抗菌薬を服用する際に医師の指示を守ることが大切です。
必要なときに適切な量を、適切な期間服用しましょう。
関連記事:「マイコプラズマ肺炎の治療薬について解説 子どもにも使える市販薬はあるの? 」
関連記事:「マイコプラズマ肺炎を早く治す方法とは?仕事は何日休むべきかを解説」
マイコプラズマ肺炎に抗生剤は必ず必要なのか
マイコプラズマ肺炎は自然治癒が比較的多い肺炎です。
抗生剤が必ず必要というわけではありませんが、服用すると症状を軽くすることができます。
軽症例が多い病気ですが、重い合併症を引き起こす可能性もあります。
自己判断せずに医師の診断を受け、抗生剤が処方された場合は医師の指示を守って服用しましょう。
関連記事:「マイコプラズマを早く治す方法とは?対応と予防法を解説」
まとめ:マイコプラズマ肺炎は咳以外にも症状があることを知っておこう
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ・ニューモニエという細菌に感染することで発症する呼吸器感染症です。
咳だけではなく、発熱、頭痛、倦怠感などがあらわれるため、はじめは風邪だと思い込んでしまうかもしれません。
子どもによくみられる感染症ですが、乳幼児から大人まで幅広い世代に感染がみられ、一般的に子どもより大人のほうが症状が重くなりやすいという特徴があります。
ほとんどの場合軽症で済みますが、大人の方が完治するまではつらいかもしれません。
また、重い肺炎や合併症を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。
「いつもより咳がひどい」「熱が上がったり下がったりして咳もなかなか治らない」など、いつもの風邪と違うと感じたときは、マイコプラズマ肺炎が疑われます。
重い肺炎・合併症を予防するためには早期発見・早期治療が重要となります。早めに医療機関を受診し、医師の診察を受けましょう。
日中はあまり咳が出ていなかったのに、寝るときになったら咳が悪化すると眠れなくてつらいですよね。
薬も飲んだのに咳が止まらない、そんなときはファストドクターのアプリをダウンロードしておきませんか?
自宅からオンラインで診察を受けることができるため、夜中の体調悪化に備えておきましょう。
参考文献
[3]NIID国立感染症研究所|マイコプラズマ肺炎検査マニュアル
[5]政府広報オンライン|抗菌薬が効かない「薬剤耐性(AMR)」が拡大! 一人ひとりができることは?
[7]マイコプラズマ肺炎|国立感染症研究所細菌第二部鈴木里和