自立支援医療制度とは
自立支援医療制度は、心や体の障害を除くため、または軽減するための医療について、医療費の自己負担を少なくする公費負担の医療制度です。
自立支援医療制度は心の病気を対象とした精神通院医療、身体の障害を対象とした更生医療、身体に障害をもった児童を対象とした育成医療の3つがあります。[1]
自立支援医療の精神通院医療について
自立支援医療制度のうち精神通院医療は通院による精神医療を継続する必要がある人の、通院医療費にかかる自己負担を軽減するためにある公費負担の医療制度です。
精神疾患により継続的に通院による精神療法や薬物療法などの治療を受けている人の医療費の自己負担が原則1割となります。[2]
精神疾患の治療はどうしても長期間におよび、薬物療法が必要な疾患も多くあります。
そのため毎月の治療費は積み重なっていき高額になりがちです。
自立支援医療制度の精神通院医療は精神疾患を患い、治療を継続している方の毎月の医療費を抑えるための制度です。
自立支援医療(精神通院医療)制度の対象者は
自立支援医療(精神通院医療)の対象者は精神障害を患っており、通院による治療を継続する必要がある程度の状態の人が対象になります。
自立支援医療の対象疾患は以下のとおりです。
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統合失調症
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うつ病、躁うつ病(双極性障害)などの気分障害
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薬物などの精神作用物質の急性中毒またはその依存症
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心的外傷後ストレス障害(PTSD)などのストレス関連障害やパニック障害などの不安障害
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知的障害、心理的発達の障害
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アルツハイマー型認知症、血管性認知症
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てんかん
などがあります。[3]
継続した治療については、明確な治療期間の規定はなく「数か月以上治療をしていないと認められない」ということはありません。
制度の対象となる医療の範囲は
精神障害や対象となる精神疾患に原因があって生じた病態について、精神通院医療を担当する医師による入院しないで受けられる医療(外来、外来での投薬、訪問看護、デイケアなど)が対象です。
病状が安定していても、再発予防や安定した状態を維持するための通院が必要な場合も対象となります。
また、自立支援医療制度で医療費の軽減が受けられるのは、各都道府県または指定都市が指定した「指定自立支援医療機関」(病院、診療所、薬局、訪問看護ステーション)に限ります。
申請時に利用する医療機関(病院、診療所、薬局、訪問看護ステーションなど)の登録は原則1か所ですが、やむを得ない事情がある場合は複数個所の登録が可能です。
その際は主治医が記載した「複数医療機関の理由書」が必要です。
精神科の医療機関は大部分が「指定自立支援医療機関」になっています。
ご自身の通院する医療機関が指定医療機関になっているかどうかは直接お問い合わせするか、精神保健福祉センターや都道府県、指定都市などの担当者にご確認ください。[4]
自立支援医療の対象外となる治療は?
自立支援医療の対象外になるものは以下のとおりです。
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入院で生じた医療費
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公的な医療保険が対象にならない治療や投薬などの治療
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治療中の精神障害とは関係のない疾患の医療費
また、医療機関以外でのカウンセリング、自費診療も対象外になります。[5]
1か月の自己負担上限額について
自立支援医療制度を利用すると1か月の自己負担額は1割となりますが、収入や症状によって分けられています。
“
世帯所得状況 |
自己負担 | |
割合 |
上限月額 | |
生活保護受給世帯 |
0円 | |
市町村民税非課税世帯であって受給者の収入が80万円以下の場合 |
1割 |
2,500円 |
市町村民税非課税世帯であって受給者の収入が80万円より上の場合 |
1割 |
5,000円 |
市町村民税235,000円未満 |
1割 |
医療保険の自己負担限度額が上限となります。 |
市町村民税235,000円以上 |
医療保険の負担割合が適用されます。(本制度の対象外です) |
” [6]
市町村民税の課税世帯は基本的に1か月の上限がありませんが、「重度かつ継続」に該当する場合は自立支援医療制度の対象となり1か月の上限額の自己負担になります。
自立支援医療の「重度かつ継続」の確認方法
自立支援医療の「重度かつ継続」の確認方法を紹介します。
次のいずれかに該当する方は「重度かつ継続」の対象です。
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医療保険の「多数回該当」の方(直近の12か月間に国民健康保険などの公的医療保険の高額療養費の支給を4回以上受けた方)
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次の1~5の精神疾患の方
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症状性を含む器質性精神障害 例:高次脳機能障害、認知症など
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精神作用物質使用による精神及び行動の障害 例:アルコール依存症、薬物依存症など
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統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
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気分障害 例:うつ病、躁うつ病など
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てんかん
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3年以上精神医療を経験している医師から、情動及び行動の障害または不安及び不穏状態を示すことから入院によらない計画的かつ集中的な精神医療(状態の維持、悪化予防のための医療を含む)が続けて必要であると判断された方”[7]
しかし、これは令和6年3月31日までの経過的特例措置ですので、令和6年の4月1日以降は一定所得以上の世帯の方は、自立支援医療制度の対象外となるので注意が必要です。
自立支援医療制度(精神通院医療)での自己負担
自立支援医療制度では原則窓口の自己負担が1割になります。
また、世帯の所得や治療を受けている方の病態によっては月の上限額が設定されます。
自立支援医療制度での「世帯」は住民票とは異なり医療保険単位で考える部分が注意が必要です。
自立絵支援医療では、国保(国民健康保険)に加入している場合は無料になる場合があります。
市町村によっても違いがありますが、世帯の所得額によって自己負担額が一部助成、返金されたり無料になったりすることがあるので市町村の窓口に相談してみましょう。[8]
自立支援医療の対象外となる薬
自立支援医療(精神通院医療)の対象外となる薬は精神疾患と関連のない薬で、風邪薬や痛み止め、点眼薬などです。
例えば、花粉症の季節になったからといって、かかりつけのクリニックや病院で花粉症の薬を出してもらった場合などは対象外になります。
しかし、自立支援の対象となる病気に対する薬で、
副作用に対する処方(便秘の副作用がある薬に対して便通をよくする薬を出すなど)に関しては認められるケースもあり、医師の判断によります。
自立支援医療の対象外/適応障害は
適応障害も自立支援医療の精神通院医療の対象になります。
適応障害とは日常生活のなかで何らかのストレスによって心身のバランスを崩して社会生活に支障が出たものです。
原因が明確でその原因に対して過剰な反応を起こした状態を指します。
日常のなかでのできごとや環境にうまく対応することができず、心身に様々な症状が出て社会生活を送ることが難しくなります。
ストレスの原因が明確であることが重要です。
憂うつな気分、不眠、頭痛、不安などの症状が出ますが人によって異なります。[9]
適応障害は精神疾患に含まれ、自立支援医療制度の精神通院医療の対象疾患です。
自立支援医療の対象外/年収はどれくらいから
市町村民税の課税世帯は基本的には自立支援医療制度の対象外となりますが、疾患の種類や医師の判断など特定の条件に当てはまる場合は制度の対象となります。
自立支援医療制度は患者の負担が大きくなり過ぎないよう所得に応じて1月あたりの負担上限額を設定しています。
年収の目安としては833万円以上、市町村民税が235,000円以上の世帯の人は原則として支援の対象外です。
しかし、費用が高額な治療を長期にわたって継続しなければならない「重度かつ継続」にあたる人に関しては支援が認められる場合があります。
自立支援医療の対象外になる病院は
自立支援医療制度の対象となる医療機関は各都道府県または指定都市が指定した「指定自立支援医療機関」(病院、診療所、薬局、訪問看護ステーション)に限られます。
精神科の医療機関は大部分が「指定自立支援医療機関」です。
ご自身の通院する医療機関が指定医療機関になっているかどうかは直接医療機関に問い合わせするか、精神保健福祉センターや都道府県、指定都市などの担当者にご確認ください。
自立支援医療の精神通院医療で対象外になる疾患は
精神疾患で通院してる場合はほぼ自立支援医療制度の精神通院医療の対象になります。
注意点としては、対象疾患であっても申請すれば必ず適用されるわけではないことです。
医療機関で対象の精神疾患と診断を受けても「継続して治療が必要」との判断がなければ適用されません。
また、アレルギーや感染症、筋骨格系の疾患など、精神疾患が原因ではないと考えられる症状は対象にはなりません。
ご自身の状態が対象になるかどうかは主治医に相談しましょう。
また、診断書などの文書類も対象にはなりません。
診断書の料金は医療機関によって異なりますが、だいたい5000円前後のところが多いようです。
自立支援医療制度の申請方法
自立支援医療制度の申請は市町村の窓口で行います。
市町村によって担当する課の名称が異なりますが、障害福祉課や保健福祉課が担当する場合が多いようです。
申請が認められると「自立支援医療受給者証」が交付されます。
自治体によって申請に必要なものは異なる場合がありますが概ね以下のものが必要です。
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申請書(自立支援医療支給認定申請書)
医療機関などで入手できる場合もあります -
医師の診断書(申請から3か月以内に作成されたもの)
通院している精神科の病院、診療所で記入してもらいます -
同じ医療保険世帯の方の所得の状況などが確認できる書類
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市町村民税課税世帯の場合は課税証明書など
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市町村民税非課税世帯の場合は市町村民非課税証明書、
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本人の収入が証明できる書類(障害年金などの振込通知書の写しなど)
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生活保護世帯の場合は生活保護受給証明書
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健康保険証(写しなど)
世帯全員の名前が記載されている被保険者証、被扶養者証、
組合員証など医療保険の加入関係を示すもの -
マイナンバーの確認書類
個人番号、身元確認ができる書類(個人番号カードなど)
その他自治体によって必要書類が異なる場合があるので市町村の担当課や精神保健福祉センターに問い合わせてください。
申請手続きは18歳以上は本人が行い、18歳未満は保護者が申請者になります。
受給者証が交付されるまでには申請が受理されてから2~3か月くらいはかかるようです。
自立支援医療/受給者証の有効期限は?
自立支援医療の受給者証の有効期限は1年以内です。
有効期限終了後も引き続き自立支援医療を受ける場合は毎年更新が必要になります。
更新の申請は有効期限のおおむね3か月前から受付が始まります。
病状や治療方針に変更がなければ2回に1回は医師の診断書の提出が省略できるので、詳しくは申請した市町村に問い合わせてください。
自立支援医療制度の変更申請が必要な場合とは?
自立支援医療制度の受給者証の内容に変更がある場合には申請が必要です。
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指定自立支援医療機関の変更を希望する場合:変更申請
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氏名や住所など健康保険証の内容に変更があった場合:記載事項変更届を提出
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受給者証を紛失、破損、汚損した場合:再交付申請書を提出
いずれの申請も紛失した場合以外は、現在交付されている受給者証を添付する必要があります。
各種申請は自治体の窓口へ提出します。[11]
受給者証が届くまでに払った医療費はどうなる?
自立支援医療制度の申請をして受給者証が届くまでにはだいたい2か月程度かかります。
その間に支払った医療費について、制度の認定前の場合は医療保険の負担割合の治療費を支払っていることでしょう。
自治体や医療機関によっても異なりますが、さかのぼって払い戻しをしてくれるところもあるようです。
その際に必要なものは自立支援制度の申請書の控えと、医療機関で発行された領収書です。
自立支援医療制度の受給者証が届くまでは大切に保管しておきましょう。
また、受給者証が届くまでの医療費の扱いについても医療機関やお住まいの自治体に確認しておくとよいでしょう。[12]
自立支援医療制度/受給者証の利用方法
自立支援医療制度の申請が通れば受給者証がお手元に届きます。
受給者証に記載されている医療機関の窓口で被保険者証と一緒に提示すれば窓口負担が軽減されます。
自己負担の上限月額が設定されている方は「自己負担上限額管理票」の提示も必要です。
近年ではマイナンバーカードと健康保険証との連携によって健康保険証の提示が必要のない医療機関もあります。
しかし、マイナンバーカードでは自立支援医療制度の受給者証の確認ができないので、受診のたびに受給者証は持参するようにしましょう。
自己負担上限額管理票とは
自己負担上限額管理表は月あたりの自己負担上限額が設定されている方に発行されるものです。
医療費の支払いは医療機関、薬局などの窓口で支払うため、それぞれで医療費と自己負担額が記載されるため、指定医療機関の窓口で支払いをする度に提出します。
窓口では自立支援医療の受給者証と一緒に上限額管理票も提出します。
支払う度に自己負担額が加算されていき、自己負担の月額上限に達すると以降の自己負担はなくなります。
自己負担の上限額に達しても上限額管理票は毎回提出するようにしましょう。[13]
Q&A
自立支援医療制度に関するよくある質問は以下のとおりです。
自立支援医療制度の対象外となる薬は?
自立支援医療(精神通院医療)の対象外となる薬は精神疾患と関係のない薬で、風邪薬や痛み止め、点眼薬などです。
例えば、花粉症の季節になったからといって、かかりつけのクリニックや病院で花粉症の薬を出してもらった場合などは対象外になります。
自立支援の対象となる疾患に対する薬で、副作用に対する処方(便秘の副作用がある薬に対して便通をよくする薬を出すなど)に関しては認められるケースもあり、医師の判断によります。
自立支援医療の対象となる精神疾患は?
自立支援医療(精神通院医療)の対象者は精神障害によって通院による治療を継続する必要がある程度の状態の人が対象になります。
自立支援医療の対象疾患は以下のとおりです。
-
統合失調症
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うつ病、躁うつ病(双極性障害)などの気分障害
-
薬物などの精神作用物質の急性中毒またはその依存症
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心的外傷後ストレス障害(PTSD)などのストレス関連障害やパニック障害などの不安障害
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知的障害、心理的発達の障害
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アルツハイマー型認知症、血管性認知症
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てんかん
などがあります。
継続した治療に関しては、明確な治療期間の規定はなく「数か月以上治療をしていないと認められない」ということはありません。
自立支援医療が使える病院は?
精神障害や対象となる精神疾患に原因があって生じた病態について、精神通院医療を担当する医師による入院しないで受けられる医療(外来、外来での投薬、デイケア、訪問看護など)が対象です。
また、自立支援医療制度で医療費の軽減が受けられるのは、各都道府県または指定都市が指定した「指定自立支援医療機関」(病院、診療所、薬局、訪問看護ステーション)に限ります。
精神科の医療機関は大部分が「指定自立支援医療機関」になっています。
ご自身の通院する医療機関が指定医療機関になっているかどうかは直接お問い合わせするか、精神保健福祉センターや都道府県、指定都市などの担当者にご確認ください。
自立支援医療の年収の目安は?
市町村民税の課税世帯は基本的には自立支援医療制度の対象外となりますが、疾患の種類や医師の判断など特定の条件に当てはまる場合は制度の対象となります。
自立支援医療制度は患者の負担が大きくなり過ぎないようt所得に応じて1月あたりの負担上限額を設定しています。
年収の目安としては833万円以上、市町村民税が235,000円以上の世帯の人は原則として支援の対象外です。
しかし、費用が高額な治療を長期にわたって継続しなければならない「重度かつ継続」にあたる人に関しては支援が認められる場合があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
これまで自立支援医療制度の精神通院医療について、制度の概要や対象疾患、申請方法、さらに対象外となる薬や治療などについて解説しました。
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自立支援医療制度の精神精神通院医療は精神疾患の通院治療を継続している方の医療費を軽減できる制度
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精神疾患の治療中であればほとんどの疾患が対象となる
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入院や精神疾患に関係のない薬は制度の対象外となる
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自立支援医療制度の申請は居住している市町村窓口で行う
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自立支援医療制度の受給者証の有効期限は1年で継続する場合は更新が必要
精神疾患の治療はどうしても長期間を要します。そのため毎月の治療費も積み重なっていくため大変です。
少しでも毎月の治療費を抑えたいと思うのは医療を受ける方の共通の想いではないでしょうか。
この記事が精神疾患で治療中の方の治療費を軽減するお役に立てば幸いです。
参考文献
[8]自立支援医療(精神通院医療)制度とは?対象疾患・申請・更新を解説