焦燥感とは?
焦燥感とはいったいどんな意味があって、どんな使い方をするのでしょうか。
「焦燥感」の読み方、使い方
「焦燥感」の読み方は「しょうそうかん」です。
使い方の例として以下があります。
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焦燥感に駆られる
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焦燥感に苛まれる
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焦燥感が募る
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焦燥感を抑える
参考:「焦燥感」の意味とは?使い方から類語や対義語まで例文付きで解説|スッキリ
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焦燥感に駆(か)られる
最も使う頻度の高い表現方法ではないでしょうか。
「焦燥感に駆られる」というのは時間的な余裕がない場合に使うことが多く、「早くなんとかしないと」と苛立ちや焦りの感情に突き動かされるさまをいいます。
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焦燥感に苛(さいな)まれる
「焦燥感に駆られる」の言い換えとして使用されることが多いです。
焦燥感によって焦りや苛立ちに苦しめられるときに使います。
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焦燥感が募(つの)る
「募る」の意味はますます「激しくなる、激化する」です。
「焦燥感が募る」は、予想外の出来事に感情が揺さぶられるさまを表します。
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焦燥感を抑(おさ)える
焦りを感じながらも、それを抑えている様子を表現しています。
「焦燥感」の意味とは
自分の思い通りにいかず、極度に焦ったりイライラしたりなど、気持ちの整理がつかずに不安を強く感じているときに使う言葉です。少し焦る程度で使うことはまずありません。
「心がざわざわする」「落ち着かない」「どこか遠くへ行きたい」これって焦燥感の症状?
焦燥感の症状とはどのような感じなのでしょうか。表現方法は人によってさまざまですが、主に以下があげられます。
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何かに追われている感覚がある
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強い不安感がある
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何かしていないと落ち着かない
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そわそわして落ち着かない
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ざわざわする
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どこか遠くへ行きたい
症状の特徴としては「特別な理由がない」ことです。
焦燥感は、独自で出現することはほとんどなく、こころの病気や自律神経にかかわる病気に関連して出現することがほとんどです。
特に「どこか遠くへ行きたい」という感情は、高齢者のうつ病患者に多く、希死念慮につながりやすいため、なるべく早急な対処が必要になります。
強い焦燥感は集中力や判断力を低下させます。
また、不安感が続くと自律神経の乱れが生じ、悪循環を招く可能性がありますので、なぜ焦燥感を感じているのか、その原因を突き止めることが重要です。
焦燥感はなぜ起こるのか
「焦燥感」には起きやすい場面、起きやすい状況というものがあります。
理想と現実のギャップが大きい
自分の思い描いていた目標に到達しなかった場合や、掲げた目標が大きすぎた場合に焦燥感は起きやすいと言われています。
自分の理想と現実のギャップが大きければ大きいほどに起きやすく、焦りや不安も強くなりがちです。
やるべきことに追われている
「いつまでにやらなければならない」「締め切りが迫っている、時間がないのにあれもこれもやらなければいけない」「やるべきことはあるのにやる気が出ない」など、やるべきタスクが増えてきたり、こなせない状況になったりすると焦燥感は生まれます。
この場合は、やるべきことはたくさんあるのにやる気が出ない自分に対しての強い苛立ち、達成できない状況や周囲からのプレッシャーに対しての焦りが焦燥感を引き起こします。
人と比較する
仕事の場合は「同僚がみんな昇進している」、プライベートであれば「友達はみんな結婚している」など、人と自分を比較して将来に不安を抱いたときに焦燥感に駆られることがあります。
他人との比較は自分を苦しめ、相手に対しての嫉妬や自己否定などネガティブな感情につながりやすく、さらには比較し始めるとキリがなくなるため注意が必要です。
不安や緊張を感じることがある
昨今の情報化社会において、テレビやインターネットからさまざまな情報に触れる機会が多くなっています。
なかには不安を煽るような情報もあり、焦燥感を感じやすいです。
不安や恐れがあるのに具体的な解決策が見つからず、どうしていいか分からないと気持ちばかりが焦ってしまいがちです。
焦燥感を引き起こすと考えられる疾患
焦燥感を感じやすい疾患には、精神疾患以外でも自律神経にかかわる疾患が考えられます。
<焦燥感を感じやすい疾患>
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うつ病
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不安神経症<全般性不安障害>
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統合失調症
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甲状腺機能亢進症
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更年期障害
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アルコールや薬物の使用または離脱時
焦燥感が起こる原因疾患①うつ病
焦燥感を感じる最も代表的な疾患と言えるのではないでしょうか。
うつ病が原因で焦燥感を感じることは非常に多いです。
特に特徴的なのが、強い焦燥感からじっとしていることができず、ソワソワと動き回ったり体を動かしたり、皮膚や服をこするといった行動があらわれることです。
さらに焦燥感からささいなことで怒りっぽくなったり、イライラして周囲にあたってしまうことも少なくありません。
うつ病の場合、自身を責めてしまう傾向が強いため、その行動を起こした自分を責め、不安や焦燥感がさらに強まるといった悪循環が生まれやすくなります。
焦燥感が起こる原因疾患②不安神経症(全般性不安障害)
不安神経症は、不安感、焦燥感、緊張感などが続き、慢性的にネガティブな物事の考え方をすることが特徴です。
うつ病と違い、時には調子の良いときがあり、なんとなく日常生活が送れていることも少なくありません。
焦燥感が起こる原因疾患③統合失調症
焦燥感が統合失調症の初期症状としてあらわれることが多く、うつ病や不安神経症との鑑別が難しいです。
焦燥感以外に、不安感、音や気配に敏感になる感覚過敏、集中困難などの症状が出現し、経過とともに幻覚、幻聴などの統合失調症ならではの症状があらわれます。
焦燥感が起こる原因疾患④甲状腺機能亢進症
バセドウ病と呼ばれ、女性は男性の5倍多く発症します。
精神的な症状として、落ち着きがない、イライラしている、眠れないなどがあり、精神疾患と同様に不安感とともにあらわれることが多いです。
原因が特定できるまではうつ病との鑑別が難しく、なかには怠けているだけ、気のせいだと思われてしまう方もいます。
うつ病だと思っていたら甲状腺の問題だったということも珍しくありません。
焦燥感が起こる原因疾患⑤更年期障害
女性ホルモンの1つである「エストロゲン」の低下が原因で起こる障害です。
「感情のコントロールができない」「怒りやすい」「抑うつ感」「焦燥感」などの精神神経症状が起きやすいです。
さらに、「眠れない」「途中で起きる」などの睡眠障害を来たすこともあります。
発症のきっかけとして介護問題や家庭環境などのライフイベントを経験する時期だということがあげられます。
似たような疾患として、うつ病や甲状腺機能亢進症があり、鑑別が必要です。
焦燥感が起こる原因疾患⑥アルコールや薬物の使用または離脱時
アルコールや薬物の使用あるいは離脱の際に焦燥感が生じることもあります。イライラや焦燥感は、アルコールが体から抜けてくるときに生じる早期離脱症状の1つです。
ほかに発汗(寝汗)、微熱、下痢、吐き気、不眠、手の振るえなどが症状としてあらわれます。
こうした症状は飲酒後数時間~半日後に出現するもので、2〜3日で消えることが多いです。
薬物の離脱症状についてもアルコールと同様に、精神作用のある物質を繰り返し、あるいは長期間にわたって大量に使っていた人が、その物質をやめようとするときに症状としてあらわれます。
こうしたアルコール、薬物使用もしくは離脱時は、単独の症状というよりも「依存症候群」にまつわる症状の1つであることがほとんどです。
使用していた物質の種類や量によって、症状の度合いは変わります。
効果の持続が長いものほど、中断・減量してから離脱症状があらわれるまでの期間が長くなり、症状が長く続きやすいです。
焦燥感が出現したときの対処法
いざ焦燥感が出現したとき、どう対処したら良いのでしょうか。
焦りの気持ちを緩和してくれる方法をご紹介します。
<焦燥感への対処法>
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やることを箇条書きにする
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不安を感じる情報は見ないようにする
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漠然とした焦りは正体を突き止める
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他人と比較せず、過去の自分と比べる
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自分に対して緊張がほぐれる声掛けをする
やることを箇条書きにする
やるべきことを箇条書きにし、客観視することで情報が整理しやすくなります。
強い焦燥感からパニックになってしまうと、やるべきことの本来の目的や、何に対して不安を感じているかが不明確になり、さらに焦燥感が強く出やすいです。
特に時間に追われているときなどは症状が強く出ます。
視覚的に今の状況を把握することができれば落ち着きを取り戻し、次の行動を冷静に考えることも可能になるでしょう。
不安を感じる情報は見ないようにする
最近は簡単に情報を得られるようになった分、不安をあおるような情報も蔓延しています。
なんとなく見ているテレビやインターネットから、必要のない情報も勝手に目にしてしまいます。
そのほとんどが無益で目的のないものが多いですが、ネガティブな情報にとらわれてしまうケースも少なくはありません。
すべてを避けることは難しいかもしれませんが、できる限り必要な情報だけを得て、不必要なものは見ない工夫をしましょう。
漠然とした焦りは正体を突き止める
漠然とした焦りは、不安を助長しやすいです。焦りの正体を突き止めるようにしましょう。
やるべきことを箇条書きにすることと同様に、何に不安を感じているのかを具体的に紙に書き出して視覚的に整理できるようにします。
不安に思っていることが明確化したら、次は不安に対してやるべきことを書き出します。
やるべきことが見えるだけでも落ち着きを取り戻し、冷静に対応できることでしょう。
他人と比較せず、過去の自分と比べる
「同期は出世しているのに自分は何もできていない」「周りはもう結婚している」など、仕事もプライベートも関係なく他者との比較をしがちな方の多くは、焦燥感を感じやすいです。
しかし、他者との比較はキリがないため、常にネガティブな感情に苦しめられます。可能であれば今すぐやめましょう。
その代わり、他者ではなく、過去の自分とを比べるのです。周りの人や理想の自分と比較しているときは大抵が「『今の』自分ではだめだ」と思っています。
そんな時は2〜3年前の過去の自分を思い出しましょう。
良くなっている点が見えてきませんか?「今の自分はだめだと思っていたけど、いい方に変わったこともある」と思えることがあったのではないでしょうか。
このように、どんな小さなことでも自分が出来たことや成長できたことに対して、自分を褒めてあげてください。
失った自信を少しずつ取り戻すことができ、心が落ち着いてくるはずです。
自分に対して緊張がほぐれる声掛けをする
緊張しやすい方の特徴に「自信がない」「周囲の目を気にする」「悲観的になりやすい」「極端な考えを持っている」などがあります。
責任感が強すぎたり、プレッシャーを強く感じていたりするときは、自分を追い詰め過ぎないことが大切です。
「やるだけやって駄目ならいいや」「まずは楽しもう」「なるようになる」など、緊張が和らぐような言葉を自分に掛けてあげましょう。
また、深呼吸や水分補給、首や肩のストレッチなどを合わせて行うとさらに効果的です。
焦燥感の治療法
焦燥感を感じたときの対処法を紹介しましたが、それでも改善しない場合や強い焦燥感により日常生活に影響を及ぼしている場合、医療機関での治療が必要になるケースもあります。
そのほかリラクゼーションや深呼吸なども効果的と言われていますので、ぜひ取り入れてみてください。
薬物療法
焦燥感に対して、抗不安薬や抗うつ薬を用いた薬物治療が有効なケースがあります。
薬の副作用が強くでる場合、原因となる薬剤の減量や中止が検討されますが、対症療法として、抗パーキンソン薬やベンゾジアゼピン系抗不安薬が使用されることもありますので、医師としっかり話し合いましょう。
薬物療法は症状の消失や改善に大いに期待できます。
また、精神疾患以外の場合、その疾患にあった治療を進めていくことで症状が改善することが期待できます。
医師と相談の上、適切な治療を受けましょう。
リラクゼーション(筋弛緩法)
体の筋肉をゆるめることで気持ちをリラックスさせる方法で、100年程前にアメリカの精神科医が開発した精神療法です。
不安や恐怖、焦燥感が強い精神疾患患者に有効と言われています。
その方法は、体の一部に10秒ほど力をしっかりこめて、一気にストンと力を抜き、体の緊張がほぐれた感覚を約20秒味わうというものです。
手、上腕、首、足の外側・内側など約10か所に分かれて実施することで効果を高めます。
できるときにできる部位だけ行うのも、取り入れやすい要因です。
この方法を習得することで、いつでも緊張をほぐせるようになり、意識的にリラックス状態をつくりだせるようになります。
深呼吸
呼吸は、人が唯一意識的にコントロールできる自律神経系です。
そのため呼吸によって、自律神経を安定させることが可能になります。深呼吸をすると心身がリラックスできると言われています。
特に腹式呼吸を意識することが大切です。腹式呼吸は、まず時間をかけて息を吐き切ります。
すると、肋骨とお腹の境目にある横隔膜が広がって自然に息を深く吸いこむことができます。
横隔膜を広げて息を吸い込むことで肺がお腹の方に膨らんで、副交感神経の働きを強めてくれ、不安をやわらげることができるのです。
Q&A
焦燥感について、よくある質問にお答えします。
焦燥感とはどういう意味ですか?
自分の思い通りにいかず、極度に焦ったりイライラしたりなど、気持ちの整理がつかずに不安を強く感じている状態です。
少し焦る程度で使うことはまずありません。
焦燥感とはどんな感じ?
焦燥感の症状として以下があげられます。
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何かに追われている感覚がある
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不安感や焦燥感がある
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何かしていないと落ち着かない
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そわそわして落ち着かない
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ざわざわする
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どこか遠くへ行きたい
当てはまる感情がある場合、その症状は「焦燥感」の可能性があります。
焦燥感はなんてよむの?
「しょうそうかん」と読みます。
うつ病の症状に焦燥感がありますか?
焦燥感はうつ病の代表的な症状の1つです。
症状が進んでくると、焦燥感はさらに強くなる傾向にあります。
特に高齢者のうつ病患者は「どこか遠くに行きたい」と希死念慮につながる考えをするようになるので注意が必要です。
まとめ
「焦燥感」とは特別な理由がなく、そわそわ落ち着かなかったり、なにかに追われている感覚があったりすることです。
多くは精神疾患患者で現れやすいものですが、更年期障害や甲状腺機能亢進症などの自律神経系の疾患でも症状として現れます。
中には医療機関での薬物療法を必要とするケースもあります。
症状が出現したり、いつもと違うそわそわ感があったりする際は、受診することが改善への近道となりうることもありますので、手段のひとつとして心にとどめておきましょう。
参考文献
焦燥感はどうして起こるの?原因から対処法、関連する病気について解説|あらたまこころのクリニック
【こころの症状】どんな症状があらわれるのでしょうか?|八王子メンタルクリニック
焦燥感が拭えず、落ち着かないという症状の原因と、関連する病気をAIで無料チェック|ユビー
焦燥感の意味や使い方は? 原因&心理学を用いた対処法8つ|マイナビウーマン
焦燥感の原因や考えられる病気には何がありますか?|ユビー 病気のQ&A
そわそわして落ち着かない気持ちを落ち着かせるにはどうしたらよいですか?|ユビー 病気のQ&A