脳波検査でわかる病気
脳波検査では、さまざまな病気を見つけることができ、病気や脳の状態、治療の経過などを評価できます。
脳波検査でわかる病気は以下の通りです。
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てんかん
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けいれん性疾患
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脳血管障害
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中枢神経系の異常
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意識障害
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認知症
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睡眠障害
脳波検査は、このような脳に関係する病気や症状に対して行われる検査です。
脳死判定のためにも脳波検査は行われます。また、脳波検査は精神疾患の鑑別にも行われています。
うつ病や統合失調症、躁うつ病などの病気では、脳波に異常は見られません。
脳波検査をすることで、鑑別することができます。発達障害の場合、脳波に異常が見られやすいことが知られています。
「うつ病に見えても、脳波検査をしたら異常が見つかり、実は発達障害だった」という場合もあり、脳波検査は診断に有用です。
脳波検査で発達障害の診断はできません。
しかし、脳波の検査をすることで、鑑別の手掛かりになり、正確な診断につながります。
脳波検査とは何?検査の種類や方法を紹介
実際、脳波検査とはどのような検査なのでしょうか。
脳波検査について詳しく解説します。また、脳波検査の方法や、種類も紹介します。
脳波検査とは
脳波検査とは、脳の神経細胞が活動するときに出る微弱な電気活動を記録し、評価したものです。
頭皮に付けた電極から、電気的変化を記録し、脳の神経の働きを調べます。波形の状態を観察し、異常部位を判断します。
また、大人と子供では脳波の様子が異なるため、それぞれの年齢において、正しいときに正しい波がでているのか判断が必要です。
脳神経細胞の発達によって電気活動が異なるため、大人と子供で違いが現れます。
脳波の検査では、特徴的な脳波を検出するために、刺激を与えることがあります。
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目の開閉
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深呼吸
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光や音の刺激
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薬剤負荷
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睡眠
上記は刺激の例です。
脳波検査中に、意図的にこのような状況下にすることで、特徴的な脳波を検出し、異常の有無を確認します。
また、脳死の場合、脳波は平坦になります。
脳の神経細胞が活動を停止していることを表しており、脳死の判定に脳波検査は欠かせません。
脳波検査の種類
脳波検査は、以下のような種類に分かれています。
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頭皮上脳波検査
→通常脳波検査
→長時間脳波検査 -
頭蓋内検査
一般的に行われている脳波検査は、頭皮に電極をつけて検査する頭皮上脳波検査です。
頭皮上脳波検査は、外来でできる通常脳波検査と、入院をして検査する長時間脳波検査にわけられます。
頭蓋内検査は、開頭手術をして脳表面や脳内に直接電極を配置し検査します。
以下の表は、脳波検査の種類と特徴をまとめたものです。
頭皮上脳波検査 |
頭蓋内脳波検査 | ||
通常脳波検査 |
長時間脳波検査 | ||
入院 |
不要 |
必要 |
必要 |
わかる病気 |
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特徴 |
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目的によって、実施される脳波検査が異なります。
脳波検査の方法
脳波検査はいくつかありますが、ここでは一般的な頭皮上脳波検査についての方法を解説します。
大人も子供も、検査の手順は同じです。
ただし、小さな子供や赤ちゃんは、静かにベッドに横になることが難しい場合があります。
泣いたり暴れたり、落ち着かないことがあるでしょう。
そのようなときは、保護者の方に抱っこしてもらい、検査をスタートする場合もあります。
本人が普段使っているブランケットや、お気に入りのぬいぐるみなどを、検査に持って行くと落ち着いて検査が受けられるでしょう。
頭皮上脳波検査の検査場所は、検査の目的に応じて、外来か入院かで行いますので、医師の指示に従ってください。
脳波検査の手順は以下の通りです。
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検査の前にトイレを済ませておく
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場合によっては眠くなる薬を服用
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電極を付ける部分をアルコールで拭く
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ベッドで横になり頭に20個ほどの電極を取り付ける
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安静時の脳波を記録
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必要に応じて目の開閉や光刺激、深呼吸、睡眠、薬剤負荷などを行い記録
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検査が終わったら頭につけた電極を外して終了
睡眠脳波の場合、検査中に寝る必要があります。
小さな子供の場合、眠ってから電極を付ける方がスムーズに感じます。
しかし、眠りについたばかりのころやぐっすり眠ったとき、眠りが浅くなり覚醒するときなど、睡眠の一連の脳波を記録することが必要です。
そのため、覚醒している状態で電極の装着を行い、安静時から記録を開始します。
また、入院して検査を行う場合は、電極をつけっぱなしにして24時間から数日を病棟で過ごす必要があります。
脳波検査にかかる時間
外来で行う脳波検査の所要時間は、おおむね30分~1時間程度です。
睡眠脳波を調べる場合、眠らなければ検査ができません。
眠くなる薬を使いますが、眠れない場合や眠るのに時間がかかってしまった場合は、検査にかかる時間も長くなるでしょう。
また、脳波検査を子供が受ける場合も、検査が長引く傾向があります。
なかなか寝てくれず「子供の脳波検査に来たのに寝ない!どうしよう」と保護者の方が焦る場合もあるでしょう。
子供の場合、普段と違う場所や頭に電極を付けられて、不安や緊張でいっぱいです。なかなか眠れないこともあります。焦らず、子供の気持が落ち着くよう接してあげてください。
普段、お昼寝をしている時間帯や、午後の時間帯に検査時間を設定すれば、眠りやすいでしょう。
脳波検査でわかること
脳波は、脳内の電気信号を、波状の線にして記録します。
その波には、α波(アルファー波)やβ波(ベータ波)、&tdeta;波(シータ波)などと呼ばれており、それぞれに特徴があります。
脳波の種類と特徴は以下の通りです。
脳波の種類 |
読み方 |
周波数 |
特徴 |
α波 |
アルファ波 |
8Hz~12Hz |
リラックスしてるときに出やすい脳波 開眼で抑制される 頭頂部や高等部で出現頻度が高い |
β波 |
ベータ波 |
13Hz~30Hz |
警戒や集中しているときに出やすい脳波 この脳波が出ているとアドレナリンが分泌されている状態 最も波長が短い脳波 |
ɤ波 |
ガンマ波 |
26Hz~70Hz |
知覚機能とともに高次脳機能活動において出やすい脳波 |
&tdeta;波 |
シータ波 |
4Hz~8Hz |
深い瞑想状態やまどろんでいる状態のときに出現しやすい脳波 |
δ波 |
デルタ波 |
4Hz以下 |
最も深い睡眠で出現する脳波 |
もし、覚醒しているのにも関わらず、デルタ波やシータ波があらわれる場合、脳の機能が低下していることが考えられ、異常を疑います。
また、てんかんでは「棘波」、意識障害では「徐波」など、疾患や状態によって脳波は特徴的な反応を示します。
「棘波」は「きょくは」と呼ばれ、てんかんの発作時にあらわれるのが特徴です。
「徐波」は「じょは」と呼ばれ、睡眠時にあらわれる脳波です。
小児では生理的にもあらわれます。
病的に徐波があらわれる場合、脳腫瘍や脳血管障害、てんかん、意識障害、低酸素状態などを疑います。
何か疾患が疑われる場合、脳波以外の詳しい検査をする必要があるでしょう。
脳波検査後に髪の毛がベタベタ!どうする?
脳波検査では、頭に電極を付けますが、電極を付けるときにペースト状のクリームを使います。
検査終了後、電極を外した後に拭き取りますが、拭き取りで完全にきれいにすることはできません。
拭き取るだけでは、多少ベタつきが残る場合があります。もし、気になる方は帽子を持参すると良いでしょう。
また、洗髪台を完備している医療機関もありますが、気になる方はご自分が検査を受ける病院に問い合わせてみましょう。
もし利用できる場合は、必要なものを確認しておくと良いですね。
脳波検査はてんかんには必須検査
てんかんの診断と治療には、脳波検査は必須です。てんかん持ちの患者さんは、1度は脳波検査を受けたことがあるでしょう。
なぜ、てんかんに脳波が必要なのか、解説します。
てんかんに脳波検査が必要な理由
てんかんの患者さんに脳波検査が必要な理由は2つあります。
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てんかんの診断
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てんかんの治療経過観察
脳波検査を行うと、小さなさざ波のような波形が記録されますが、これが正常な脳波です。
しかし、てんかんの発作が起こっているときは、「棘波(きょくは)」と呼ばれるトゲのようにとがった波や、幅広い大きなとがった波が現れます。
これは、てんかんの発作時にいくつかの脳神経細胞が同時に電気信号を出すためです。
そのため、大きな電流が流れるため、特徴的な脳波が記録されます。
そのため、脳波検査はてんかんの診断には必須の検査であり、最も重要な検査と言えるでしょう。
また、てんかんの治療経過の観察目的でも、脳波検査は行われます。
てんかんの治療中の方は、薬を使って発作をコントロールしている場合が多いです。
処方された薬が効いているのか、どのタイミングで発作が起きているのかを見極めるため脳波検査を行います。
そうすることで、薬を使うタイミングや量、発作が現れるタイミング、発作の程度を知ることができます。
、脳波検査によって治療の効果も確認できるため、薬剤の調整をするときに参考にする場合が多いです。
脳波検査は、てんかんの診断と治療には、欠かせない検査と言えるでしょう。
ただし、脳波検査をしても、てんかんの発作が必ずしも見つかるわけではありません。
また、脳波検査だけでてんかんの診断は行いません。
てんかんの診断には、病歴や発作が起きたときの状況などを問診します。状況によって、血液検査や尿検査、MRIなど他の検査を行う場合があります。
それらを含めて、医師が診察し、てんかんの診断をするので「ちゃんと診断してもらえるのか」心配する必要はないでしょう。
1度だけの脳波検査では、てんかんの発作を記録できない場合もあり、複数回脳波検査を実施することがあります。
通常の外来脳波検査では検査時間も短く、検査の時間帯も限られているためです。
外来検査で上手くてんかんの脳波が記録されない場合、入院脳波検査を勧められる場合もあるでしょう。
てんかんの脳波検査にかかる時間
てんかんの異常波は、浅い眠りのときに出やすいとされています。そのため、てんかんの脳波検査では、睡眠脳波が必要です。
外来での脳波検査の時間は、約1時間程度とされています。
しかし、検査中に上手く眠れなかったり覚醒状況が悪かったりすると、検査時間が長引く場合があります。
脳波検査の費用と保険適応について
検査と聞くと「お金がかかるのでは?」と気になる方もいるでしょう。
脳波検査の費用と保険適応の有無について解説します。
脳波検査で入院する場合の費用
入院をして脳波検査する場合、脳波検査のための機械やカメラが必要になりますので、個室入院となる場合が多いでしょう。
個室料や差額ベッド代がかかる場合がありますが、医療機関によって異なります。金額については、入院する医療機関に問い合わせましょう。
入院基本料は入院日数分かかります。また、入院中の食事代は、1回460円と一律です。
食事代は、入院中の食事回数分この金額がかかります。入院中の食事代は健康保険の対象外のため、全額自己負担です。
脳波検査を外来で受ける場合の費用
以下は、外来で脳波検査を受ける場合の金額例です。
3割負担 |
1割負担 |
自費 |
約2,300円 |
約800円 |
約8,000円 |
費用は加入している健康保険によって異なります。
脳波検査の費用以外に、初診料や再診料、処方箋料などが加わります。度々の検査や受診が経済的に負担になる方もいるでしょう。
そのような場合、「自立支援医療費制度」という制度があり、外来通院医療費の負担を軽減できする制度があります。
脳波の検査と診察の結果、てんかんと診断された場合は、この医療費制度の対象疾患です。
てんかん以外にも制度の対象疾患は、通院治療の場合、原則として自己負担額が1割になる制度です。
所得や疾患によって制限があるため、気になる方は窓口のある区市町村に問い合わせてみましょう。
脳波検査は保険適応になるのか
医師が診察を行い、脳波検査が必要と判断した場合に検査を受けることができます。そのため、脳波検査は基本的に保険適応です。
ただし、脳ドックや人間ドックなど個人的に検査を受ける場合は、全額自己負担です。
脳波検査の注意点
脳波検査を受けるにあたって、いくつか注意点があります。
まず、睡眠脳波が必要な場合、検査当日は少し寝不足気味で行きましょう。睡眠脳波の場合、眠くなる薬を使いますが、寝不足気味の方がスムーズに眠ることができます。
検査終了後は、薬の影響で眠気やふらつきが残る場合があります。可能であれば、付き添いに来てくれる人がいると安心です。
また、検査後の車の運転は避けましょう。
検査のために頭に電極を付けますが、そのときに使うペースト状のクリームが取り切れない場合があります。
洗髪できない場合もありますので、帽子があると便利です。
また、クリームを付けるため、当日は整髪料は使わないようにしましょう。
脳波検査は痛い?合併症やリスク
初めて脳波検査を受ける人は、「痛みはあるのかな?」「検査のリスクはある?」など、不安になりますよね。
脳波検査の痛みや合併症、リスクについて解説します。
脳波検査は痛い?
頭皮上脳波検査は痛みを伴わない検査です。
「頭に電極を付けるから電気が流れる」と思う方がいますが、電気が流れたり感電したりすることはありません。
安心して検査を受けてください。
脳波検査の合併症やリスク
頭皮上脳波検査は、合併症やリスクはありません。まれに、電極を付けるためのクリームにかぶれ、かゆみが出る方がいます。
かぶれやかゆみが出た場合、次回以降、クリームの種類を変える対応ができる可能性があります。医師や検査技師に相談してみましょう。
また、頭蓋内脳波検査の場合は、手術が必要です。
そのため、一般的な手術を受ける場合とおなじ、合併症やリスクがあるでしょう。
Q&A
脳波検査について、よくある質問をまとめました。
脳波の検査で何がわかるのか?
脳波検査では、脳の疾患を中心に、てんかんや認知症、睡眠障害などがわかります。
検査をすることは、疾患の診断だけではなく、疾患の程度や治療の効果を確認する場合にも行われます。
また、脳死判定のためには必須の検査です。
脳波検査はいくらくらいしますか?
以下は、外来で脳波検査を受ける場合の金額例です。
3割負担 |
1割負担 |
自費 |
約2,300円 |
約800円 |
約8,000円 |
費用は加入している健康保険によって異なります。
検査費用の他に、初診料や再診料、処方箋料などがかかります。入院が必要な場合は、入院基本料や食事代、差額ベッド代などが必要になるでしょう。
脳波検査の手順は?
頭皮上脳波検査の検査場所は、検査の目的に応じて、外来か入院かで行います。
脳波検査の手順は以下の通りです。
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検査の前にトイレを済ませておく
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場合によっては眠くなる薬を服用
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電極を付ける部分をアルコールで拭く
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ベッドで横になり頭に20個ほどの電極を取り付ける
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安静時の脳波を記録
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必要に応じて目の開閉や光刺激、深呼吸、睡眠、薬剤負荷などを行い記録
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検査が終わったら頭につけた電極を外して終了
入院して検査を行う場合は、電極をつけっぱなしにして24時間から数日過ごす必要があります。
脳波検査はどのくらい時間がかかりますか?
外来で行う脳波検査の所要時間は、おおむね30分~1時間程度です。子供の場合はもう少し検査に時間がかかるでしょう。
また、睡眠脳波が必要な場合、眠るのに時間がかかってしまうと、その分検査時間が延びてしまいます。
脳波検査の結果はいつ出る?
外来で行われる脳波検査の結果は、比較的早く出ます。その日の診察で結果を伝えられる場合もあるでしょう。
しかし、脳波検査以外にも検査を受けている場合、他の検査結果が出てから診断や治療方針が決まります。
そのため、脳波検査の結果が出ていても、後日まとめて検査結果を伝える場合があります。
脳波の結果だけでも早く知りたい場合は、医師にその旨を相談してみましょう。
まとめ
脳波検査は、様々な症状や疾患の評価のために行われる検査です。
例えば、てんかんや脳卒中、睡眠障害などの病気の診断に有用です。また、薬物や治療の効果を評価するためにも利用されます。
脳波検査はあまり聞きなれない検査のため、不安に感じる人もいるでしょう。しかし、痛みはなく、合併症やリスクもほとんどないため、安心して受けられる検査です。
睡眠脳波では、眠らないと検査ができません。
過度に心配していたり、緊張していたりすると検査のタイミングで、眠れなくなる場合があります。
これから脳波検査を受ける予定の方や脳波検査を受けるよう勧められている方は、安心して気楽に検査に臨みましょう。