夜間低血糖の症状や原因を解説
夜間低血糖とは、夜中に起きる低血糖症状のことです。
その症状は昼間に起こる症状と異なる場合があり、気づかないで生活を続けてしまうこともしばしば。
原因として、生活リズムの乱れや薬の量が合っていないことが挙げられます。
症状や原因について詳しく解説しているので、糖尿病の方は心当たりがないか、ぜひチェックしてみてください。
「歯ぎしり」や「夜中に目が覚める」は夜間低血糖の特徴的な症状?
夜間低血糖時に起こる症状として報告されているものは、以下の通りです。[1][2]
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夜中に目が覚める
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はっきり夢をみる
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悪夢
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歯ぎしり
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寝汗
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起きた時にスッキリしない
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朝の頭痛や疲労感
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(子どもの場合)おねしょ
一般的な低血糖症状は、強い空腹感、冷や汗、動悸、手や指のふるえなどです。
ただし夜間の低血糖は睡眠中のため、これらの症状が現れなかったり、気づきづらかったりします。
そのかわり、不眠や起床時の気だるさなどの別の症状から低血糖が発覚することがあります。
必ずしも夜間低血糖が起きているとはいえませんが、頻回におきる場合は主治医に相談しましょう。
早朝の高血糖は夜間低血糖が原因?ソモジー効果とは
早朝に血糖値が高い方も、夜間低血糖の可能性があります。
身体が夜間の低血糖に反応し、インスリンの作用と相反するホルモンの分泌が増加することで朝の血糖上昇を引き起こすためです。
この現象は「ソモジー効果」と呼ばれています。
夜間低血糖の原因
なぜ夜中に低血糖が起こるのでしょうか?
糖尿病の治療において、飲み薬よりもインスリン治療の方が夜間に低血糖が起こりやすいといわれています。また生活の中にも起こりやすくなる要因はあります。[1]
夜間低血糖かな?と思う方は、以下のことをしていないか確認してみましょう。
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夕食の時間がいつもよりずれた、もしくは量が少なかった
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夕方に大量のアルコール摂取をした
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運動をいつも以上に行った
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お風呂にいつもより長く浸かった
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夕方や寝る前のインスリンを間違えて多く投与した
上記のことを行っていないにも関わらず、夜間低血糖が起きているときは薬の量が身体に合っていない可能性もあります。
早めに主治医と相談することをおすすめします。
そもそも低血糖とは
正常の血糖値は70〜100mg/dLです。
低血糖とは、血糖値が70mg/dL未満の状態もしくは70mg/dLを下回らなくとも低血糖症状が現れている状態を指します。
摂取するエネルギーに対して、消費するエネルギーとインスリンの作用が上回るときに起こります。
ただし、体内に血糖値を上昇させるホルモンはいくつか存在するため、健康な人が低血糖になることは稀です。
低血糖は、糖尿病の治療薬を使用している方に多くみられます。
低血糖の主な自覚症状は、冷や汗や頭痛、手や指のふるえ、動機、目のかすみ、集中力の低下などがあります。
もし夜間低血糖が起こったら
実は危険な夜間の低血糖。
睡眠中は低血糖に気づきにくいため、対処できずに徐々に進行してしまいます。重症低血糖の50%は、睡眠中に起きているといわれています。[3]
万が一のために低血糖時の対処方法を知っておきましょう。
家族や同居している方、生活を介助してくれる方にも、いちど一緒に確認してもらうといいですね。
低血糖の対処方法
低血糖で目が覚めた際は、10gのブドウ糖をとりましょう。
よく勘違いされるのですが、ブドウ糖は料理に使われる砂糖とは異なります。砂糖で低血糖症状を改善させるには20g必要です。
またブドウ糖は薬局やドラッグストアで購入できます。
仮にブドウ糖が手元にないときは市販のジュース150-200ccを補給しましょう。
ただし人工甘味料で甘くしてあるジュースは低血糖には効果がありません。
もし意識障害を認める場合は、飲食が可能であれば、そばにいる方がブドウ糖を飲ませましょう。
なお、無理に飲ませると窒息の恐れもあるため注意が必要です。主治医からグルカゴンを処方されている方は筋注もしくは点鼻をします。
意識障害を認める重症の低血糖は一度回復しても、またすぐ起こることが多いため、必ず救急車を呼びましょう。
グルカゴンは、重症低血糖の可能性がある方や低血糖が起きたときに自身で対処するのが難しい方はあらかじめ処方してもらえます。
主に介護が必要な高齢者や子どもが対象となります。
万が一に備えて、いちど低血糖時の対応をシミュレーションするのもいいでしょう。
主治医に相談しよう
夜間に低血糖を起こしている、または疑われる症状がある場合は、受診時に必ず主治医へ伝えましょう。
伝える内容としては、低血糖の頻度やその時の生活状況、血糖値もわかる範囲で伝えるとより良いでしょう。
その情報は薬やインスリンの調整、血糖値の精査、生活指導を行う上での判断材料となります。
近年では夜間低血糖をはじめとする血糖値が不安定な方が適応となる検査や治療方法があります。
「持続血糖モニター」と「インスリンポンプ」です。
持続血糖モニターは身体に装着することで、24時間血糖値を自動測定し、気づきにくい血糖値の上昇や低下をモニタリングできるようになります。
また、その血糖値に応じてインスリンポンプが自動でインスリンを体内に注入することで血糖値の大きな変動を防ぎます。
今まで夜間低血糖などの血糖値が変動しやすい方の治療は困難な場合もありましたが、最新の治療では克服が可能です。
主治医とよく相談し、自身に合う治療を受けましょう。
夜間低血糖の予防方法
夜間低血糖の危険性は、まれに意識障害、けいれん、不整脈、突然死を引き起こすことです。
また長期的な影響として、認知機能低下の要因のひとつといわれています。[3]
したがって、あらかじめ低血糖を起こさないようにすることが重要です。
まず、血糖測定器を持っている方は寝る前に血糖測定を行いましょう。
普段から寝る前の血糖値を知っておくことで、血糖値が低い場合に対策を打てます。
二つ目は、主治医指導のもとで補食を行う方法です。
補食とは低血糖が起こりそうな時間帯に合わせてあらかじめエネルギーを補給しておくことです。
ただし自己判断での補食は、血糖値上昇の原因となるため、必ず主治医と相談したうえで行いましょう。
夜間低血糖におすすめの補食
夜間低血糖の予防方法の一つが「補食」です。
補食の目的や食べるタイミング、よく誤解されがちな「間食」とのちがいについて解説します。
また、夜間低血糖のための補食例についても詳しく説明します。
「補食」と「間食」のちがい
補食は、低血糖が起こりそうな時間帯に合わせてあらかじめ不足するエネルギーを補給することです。
低血糖の対策として必要な食事になるため、指導に合わせて必ずとらなければなりません。
そのため、補食のとり方は必ず医師または管理栄養士の指導に従いましょう。
間食とは、食事以外にとる食べ物や飲み物を指します。
栄養補給の役割もありますが、嗜好品なども含まれるため、糖尿病患者の方は基本的には控えるように指導されます。
補食と間食は考え方がまったく異なるため、間違ったとり方をすると高血糖の原因となりますので注意しましょう。
夜間低血糖での補食の食材例
夜間低血糖のための補食の食材例を紹介します。
低血糖のときにはブドウ糖や砂糖、ジュースなど吸収が速いものがよいとされる一方で、補食の場合には消化・吸収が緩やかなものがおすすめです。
炭水化物だけでなく、タンパク質や脂質が適度に含まれる食べ物がいいでしょう。
具体例を以下の表でまとめました。
どんな食べ物が夜間の低血糖を改善するか、さまざまな研究が行われていますが、現時点でわかっていません。
そのため、特定の食べ物が夜間低血糖に良いということはありません。
したがって、医師から指導されたものや自身が食べやすいものをとるのがよいと考えられます。
夜間の低血糖は、就寝後2〜3時間後にみられることが多いため、補食は寝る前にとるのが良いでしょう。
上手に補食を生活に取り入れて、質の高い睡眠そして良好な血糖コントロールが得られるといいですね。
Q&A
夜間低血糖についてよくある質問をまとめました。
夜間低血糖の症状は?
夜間低血糖を起こしている方にみられる症状のうち、就寝時に悪夢や歯ぎしり、夜中に目が覚める、はっきり夢をみる、汗をたくさんかくなどがあります。
起床時には、早朝の高血糖や頭痛、疲労感、スッキリしないといった症状が報告されています。
夜間低血糖の治し方は?
低血糖に気づき目が覚めた際には、10gのブドウ糖や市販のジュース150-200ccをとります。
また、夜間に低血糖を起こしていることを受診時に必ず主治医へ伝えましょう。
それをふまえ、薬およびインスリンの調整や血糖値の精査、生活指導が行われることで治る可能性があります。
夜間の血糖値の正常値はいくつですか?
健康な方の血糖値は70〜100mg/dLです。
低血糖の定義は、70mg/dL未満、または低血糖症状が現れているときとされています。
夜間低血糖で中途覚醒するのはなぜ?
一般的に低血糖になると、冷や汗、動悸、手や指のふるえ、強い空腹感、脈が速くなるなどの自律神経症状が起きます。
おそらく、その症状の不快感から中途覚醒すると考えられています。
まとめ
夜間低血糖は日中の低血糖に比べ気づきにくいのが特徴です。
その症状は早朝の高血糖や睡眠の質低下、起床時の頭痛や疲労感など一般の低血糖とは異なる症状が報告されています。
夜間低血糖の原因は生活リズムに関係しています。
放っておくと意識障害やけいれん、不整脈、突然死、認知機能低下を引き起こすことがあり、適切な対処が必要です。
もし起こった場合は主治医と相談し、薬や補食の調整、生活の見直しを行いましょう。
出典
[4]日本糖尿病協会|はじめての方へ|糖尿病情報|糖尿病に関するQ&A
[5]糖尿病ネットワーク|データ・資料を探す|糖尿病Q&A1000|Q.603
[7]日本糖尿病療養指導士認定機構.「「糖尿病療養指導ガイドブック2023」─糖尿病療養指導士の学習目標と課題─」.株式会社メディカルレビュー社
参考文献
日本糖尿病療養指導士認定機構.「「糖尿病療養指導ガイドブック2023」─糖尿病療養指導士の学習目標と課題─」.株式会社メディカルレビュー社