インスリン皮下注射の打ち方は?手技を細かく解説!
インスリン皮下注射の打ち方は、大きく5つの項目に分けられます。
流れをおさえておけば、インスリン皮下注射は自分で簡単に実施可能です。
ここでは、皮下注射の部位や角度など、気になる点も含めて解説します。
物品の準備
インスリン皮下注射をするために、以下の物品をはじめに用意します。(ペン型注入器を使用する場合)
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ペン型注入器
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インスリン注射用の針
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アルコール綿
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針捨て容器
物品の準備ができたら流水でしっかりと手洗いし、以下の流れで物品の準備をします。
インスリンが濁っている(懸濁製剤)の場合は上下に10回振り、手のなかでコロコロ転がして、製剤全体が均等に白っぽくなるまで混ぜましょう。
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ペン型注入器のキャップを取る
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先端のゴムの部分をアルコール綿で拭き乾燥させる
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インスリン注射用の針をペン型注入器の先端にとりつける
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針をねじの方向に回し、最後までしっかり締める
-
針のキャップを外し針を出す(指などを刺さないよう注意する)
上記の流れで、インスリン皮下注射の準備をします。
空打ち
空打ちは、インスリンがきちんと出るか確認すると共に、カートリッジ内の空気を押し出すためにおこないます。
カートリッジ内に空気が残っていると、正しい量のインスリンが注入できないためです。
空打ちは以下の流れで実施します。
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インスリンカートリッジの単位設定ダイアルを「2」に合わせる(インスリンの種類によっては「3」の場合もあるため確認する)
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針先を上に向け、カートリッジを指で軽くはじいて中の空気を上に集める
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針先を上に向けたまま注入ボタンを押し、空気を押し出すと共にインスリンが出るか確認する(しずくが出れば成功)
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インスリンが出ないときは、出るまで空打ちを繰り返す
インスリンが出ない場合、針の取り付け方や針自体の問題である可能性があります。
一度針を破棄し、新しい針で試しましょう。
単位の設定
空打ちをして動作に問題なければ、インスリン皮下注射の単位を設定します。
単位の設定では、医師から処方された単位を正確にセットします。
設定を間違えると、インスリンの量が不足したり過剰になったりし、血糖コントロールにも影響が出てしまいます。
医師から処方された単位を確実に設定できているか、しっかり確認しましょう。
皮下注射
インスリン注射の部位を決め、中心から外側に向かって円を描くようにアルコール綿で消毒します。
ペン型注射器を皮膚に対して90度の角度で、針の根元まで刺すのがポイントです。
針を刺す怖さのあまり、皮膚に対して垂直でなく斜めに刺したり、中途半端に針の途中まで刺したりすると痛みの原因になります。
針全体が皮膚に刺さるよう、垂直にしっかりと押し込みましょう。
インスリン皮下注射をする際のポイントをここで解説します。
インスリン皮下注射の部位
インスリン皮下注射に適した部位は、お腹や太もも、お尻、二の腕などです。
多くの場合はお腹に注射されており、理由としては以下の3点が挙げられます。
-
インスリンの吸収速度がお腹、二の腕、お尻、太ももの順に早いこと
-
二の腕や太ももに比べ、運動による吸収速度や温度の変化が少ないこと
-
自己注射がしやすいこと
上述のとおり、インスリン皮下注射に適した部位には理由があります。決められた部位以外に皮下注射しないよう注意しましょう。
インスリンを皮下注射したら10秒待つ?
インスリンを皮下注射したら、単位が0になるまで待ち、そこから10秒程度待って針を抜きましょう。
インスリンを注入する際、勢いよくボタンを押すと痛みを感じる場合があるため、ゆっくりと注入するのがポイントです。
待っている間は、注入ボタンをずっと押しておきます。
なぜならインスリンの注射針はとても細く、インスリンがすべて出るまでに時間がかかってしまうからです。
よって、針を早く抜いてしまうとインスリンが針先から漏れ出てしまい、正確な単位数を注入できなくなります。
針を抜くときも、刺すときと同じようにまっすぐ抜くことで痛みが抑えられます。
インスリンを皮下注射するときの角度は?
インスリン皮下注射をする際は、皮膚に対して90度の角度で刺します。
お腹に対して垂直に、まっすぐ針を刺しましょう。
片付け
インスリン皮下注射が終わったら、物品を片付けます。
片付けの際は、針が手などに刺さらないよう、針キャップをかぶせたうえで針を取り外します。しっかりとキャップを押し込むと、針が外れやすくなります。
取り外した針は、普段使っているゴミ箱には捨てず、ふた付きの丈夫な容器に入れましょう。
廃棄した針はケースにまとめて医師や各自治体のルールに従い、以下のいずれかの方法で廃棄しましょう。
-
医療機関を受診する際に病院で破棄してもらう
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薬局に持っていき破棄してもらう
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中身のみえる硬い容器に入れ可燃ごみに出す(可燃ごみとしてだせる自治体の場合)
インスリン注射で使用したアルコール綿などは、各自治体のルールに従って破棄します。[1]
居住地の自治体で針の捨て方がわからない場合は、行政窓口に問い合わせましょう。[2]
インスリン皮下注射するときの注意点
インスリンを皮下注射する際は、いくつか注意点があります。
皮下注射する部位だけでなく、注射後に気をつけるべき内容も解説します。
インスリン皮下注射の部位は毎回変える
インスリン皮下注射の部位は、毎回2〜3cmずらしましょう。
何度も同じ場所に注射すると、組織が硬くなったり萎縮したりして、インスリンの吸収が悪くなります。
また、おへその周り5cm以内の注射は避けましょう。
おへその周りは組織線維が多く、インスリンがうまく吸収されない場合があります。[3]
インスリン皮下注射したあとに揉まない
インスリンを皮下注射したあとは、刺した部位をアルコール綿で消毒しますが、揉まないようにしましょう。
注射部位を揉むとインスリンの吸収が早まり、作用時間が変わる可能性があるためです。
また、インスリンをあたためる行為も、吸収速度を早めてしまうため避けましょう。
場合によっては、インスリンが早く吸収されることで低血糖を起こすリスクもあります。
インスリン皮下注射のあとは、刺した場所を揉まないよう気を付けることが大切です。
インスリンの皮下注射では皮膚をつまむ?
インスリン皮下注射の際は、基本的に皮膚をつまむ必要はありません。
人間の皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織、筋肉と4層になっています。
表皮は0.1~0.3mm、真皮は1~3mmの厚さとなっています。[4]
皮下組織(脂肪層)の厚さは肥満や体格のちがいにより個人差がありますが、厚さは4~9mmと言われています。[5]
インスリン注射の針は基本的に約4mmであることから、皮膚をつままずに皮下注射しても問題ありません。
しかし、以下の場合はインスリン皮下注射で皮膚をつまむよう指導されることもあります。[6]
-
針が長めインスリン製剤の場合
-
子どもが皮下注射する場合
-
痩せているなど体格の違い
-
指示された注射の部位の違い
上記の場合は、皮膚をつまむよう指導されることもありますが、基本的には皮膚をつままずにインスリンの皮下注射をしても問題ありません。
インスリン製剤の保管方法
インスリン製剤を保管するときは、以下の注意点を守りましょう。
-
使用中のインスリン製剤は、直射日光のあたらない涼しい場所で保管する
-
未開封のインスリン製剤は冷蔵庫のドアポケットなど、凍らない場所で保存する
-
インスリンは凍らせたり、高温にさらしたりしない
-
外でインスリンを持ち歩く場合は、30℃を越えないよう気を付ける
開封後のインスリン製剤は30℃以下の室温もしくは2~8℃の冷蔵庫での保管とされています。
インスリンを凍らせたり高温にさらしたりすると成分が変わってしまい、しっかりと効果が得られない可能性があるので注意が必要です。
また、使用前には必ず室温に戻しておきましょう。インスリンが冷たいまま皮下注射すると、痛みを感じる場合があります。
以上の注意点を守りつつ、インスリンを正しく保管しましょう。[7]
インスリンを皮下注射するのはなぜ?理由を解説!
インスリンを皮下注射するのは、薬液をゆっくりと体内に吸収させるためです。
インスリンの皮下注射は、皮膚と筋肉の間の皮下組織に薬液を注入します。
皮下組織には血管が少ないため、薬液が吸収される速度は比較的遅くなります。
インスリンの投与方法は、皮下注射の他にも筋肉内注射や静脈内注射がありますが、皮下注射で実施するのが基本です。
インスリン注射は食後に打つ?
インスリン注射は、効果が出る時間や持続時間の違いにより、食後だけでなく食前に打つものもあります。また、1日に1回決められた時間に打つタイプもあります。
注射のタイミングはそれぞれの患者の血糖値の変化に合わせて、医師の指示のもと実施されるのが基本です。必ず、指示されたインスリン注射のタイミングを守って実施しましょう。
インスリン製剤の種類や注射のタイミングは後述の通りです。
インスリン注射の適応
インスリン注射は、糖尿病患者の膵臓からインスリンが十分に分泌できない場合に身体の外から補うために使用します。
インスリン注射の適応には、インスリンを使用しないと命に関わる「絶対的適応」と、血糖維持のために最も適した治療法である「相対的適応」の2つがあります。
ここでは、インスリン注射の絶対的適応と相対的適応について、どのような場合に何の目的で使用するのか細かく解説します。
インスリン注射の絶対的適応
インスリン注射の絶対的適応は以下の場合です。
-
インスリン依存状態
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高血糖性の昏睡(糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖状態)
-
重度の肝障害、腎障害を合併しているとき
-
重症感染症、外傷、中等度以上の外科手術(全身麻酔施行例など)のとき
-
糖尿病合併妊婦(妊娠糖尿病で、食事療法だけでは良好な血糖コントロールが得られない場合も含む)
-
静脈栄養時の血糖コントロール
[10]
1型糖尿病の場合は、生存のためにインスリンが必要であるため、食事がとれない場合もインスリン補充のための注射が必要です。
また、命に関わる急性期の状態や手術の際にも絶対的適応となる場合があります。
インスリン注射の相対的適応
インスリン注射の相対的適応は以下の場合です。
-
インスリン非依存状態の例でも、著明な高血糖(たとえば、空腹時血糖値250mg/dL以上、髄時血糖値350mg/dL以上)を認める場合
-
経口薬療法のみでは良好な血糖コントロールが得られない場合
-
やせ型で栄養状態が低下している場合
-
ステロイド治療時に高血糖を認める場合
-
糖毒性を積極的に解除する場合
[10]
2型糖尿病であっても、著明な高血糖や経口血糖降下薬で血糖コントロールがうまくいかない場合は、インスリン注射の相対的適応となります。
インスリン注射は血糖値いくつから実施する?
インスリン注射の実施は、血糖値だけでは判断できません。
血糖値がいくつになったら導入するなどの明確な決まりはありませんが、ガイドラインには以下の基準が定められています。
-
空腹時血糖値 250mg/dL 以上
-
随時血糖値 350mg/dL 以上
-
経口血糖降下薬で良好な血糖コントロールが得られない場合
このようなインスリン相対的適応の場合は、インスリン注射が必要になる可能性があります。
上記の血糖値の基準を満たしていなくても、以下の場合にはインスリン絶対的適応となり、インスリン注射が実施されます。
-
1型糖尿病など生存のために必要な場合
-
重症感染症や外傷
-
中等度以上の外科手術時
-
薬物療法の必要な糖尿病合併妊婦
インスリン注射は上記の場合に、医師の診断および判断のもと実施されます。[8]
インスリン製剤6種類について
インスリン製剤は作用が出るスピードや特徴別に、以下の6種類に分けられます。
-
超速効型インスリン
-
速効型インスリン
-
中間型インスリン
-
混合型インスリン
-
配合溶解インスリン
-
持効型溶解インスリン
ヒトの身体のインスリン分泌には、「基礎分泌」と「追加分泌」の2通りあります。
健康な人では、常に少量かつ一定のインスリンが分泌されており、これを「基礎分泌」といいます。
一方、食事をしたあとに血糖値が上昇するタイミングに合わせてインスリンが分泌されるのが「追加分泌」です。
インスリン注射は、患者それぞれの血糖変動のパターンを考慮し、なるべく生理的なインスリン分泌のタイミングに合わせて自己注射をするように実施します。
ここでは、それぞれのインスリンの名称や作用が出るまでの時間、注射のタイミングなどを解説します。
超速効型インスリン製剤
超速効型インスリン製剤は、食事の直前に注射するのが一般的です。
食後の血糖値上昇を抑える、インスリンの「追加分泌」の役割があります。
超速効型インスリンは効果が出る時間が早く、注射後すぐに食事をとらなければ低血糖になるリスクがあるため注意が必要です。
超速効型インスリンは注射してから10~20分で効果があらわれ、持続時間は3~5時間です。
2020年に、作用発現時間が特に早い超速効型インスリン製剤「フィアスプ®」「ルムジェブ®」の販売が始まりました。
これらは従来の超速効型インスリン製剤よりも作用発現時間が早いため、食事開始時(食事開始前の2分以内)に投与するとされています。
また食事開始後に打つ場合は、食事開始後20分以内に打ちましょう。[9]
超速効型インスリン製剤
一般名 |
商品名 |
作用発現時間 |
最大作用発現時間 |
作用持続時間 |
性状 |
代替するインスリン分泌 |
インスリングルリジン |
アピドラ® |
15分以内 |
0.5~1.5時間 |
3~5時間 |
無色透明 |
追加分泌 |
インスリンリスプロ |
ヒューマログ® |
15分以内 |
0.5~1.5時間 |
3~5時間 | ||
インスリンアスパルト |
ノボラピッド® |
10~20分 |
1~3時間 |
3~5時間 |
新たな超速効型インスリン製剤(2020年~)
一般名 |
商品名 |
作用発現時間 |
最大作用発現時間 |
作用持続時間 |
性状 |
対応 |
インスリンアスパルト |
フィアスプ® |
5~15分 |
45~75分 |
3~5時間 |
無色透明 |
追加分泌 |
インスリンリスプロ |
ルムジェブ® |
5~15分 |
45~75分 |
3~5時間 |
速効型インスリン製剤
速効型インスリン製剤は、食前30分に注射するのが一般的です。
健康な人のように、食後に追加で分泌されるインスリンを注射により補う目的で使用します。
速効型インスリンは食後の血糖値の上昇を抑え、食後高血糖を改善するため、注射して30分経ったら食事をとりましょう。
インスリン注射したあとに食後をとらなかった場合、低血糖になるリスクがあるため注意が必要です。
インスリン作用の持続時間は5〜8時間で、輸液に混ぜての投与もできます。
速効型インスリンは唯一、筋肉注射や静脈注射が可能なインスリン製剤であるのも特徴の一つです。
一般名 |
商品名 |
作用発現時間 |
最大作用発現時間 |
作用持続時間 |
性状 |
対応 |
ヒトインスリン |
ヒューマリン® |
0.5~1時間 |
1~3時間 |
5~7時間 |
無色透明 |
追加分泌 |
生合成ヒト中性インスリン |
ノボリン®R |
約30分 |
1~3時間 |
約8時間 |
中間型インスリン製剤
中間型インスリン製剤は、朝食前30分もしくは就寝前に注射するのが一般的です。
インスリンの作用持続時間は18〜24時間で、生理的なインスリンにおける基礎分泌を補う目的で使用されます。中間型インスリンは1日のうち決まったタイミングで実施します。
成分が沈殿して懸濁(けんだく)している製剤であるため、注射前にはしっかり振って使うことが必要です。
中間型インスリン製剤の特徴は、以下の3点があげられます。
-
皮下注射してからの吸収速度が不安定
-
インスリン濃度にピークがある(血中のインスリン濃度が一定ではない)
-
夜間低血糖を起こしやすい
このため、中間型インスリン単体で使用されることは少ないのが現状です。
一般名 |
商品名 |
作用発現時間 |
最大作用発現時間 |
作用持続時間 |
性状 |
対応 |
ヒトイソフェン インスリン水性懸濁 |
ヒューマリン®N |
1~3時間 |
8~10時間 |
18~24時間 |
白色懸濁 |
基礎分泌 |
ノボリン®N |
約1.5時間 |
4~12時間 |
約24時間 |
混合型インスリン製剤
混合型インスリン製剤は、インスリンの基礎分泌と追加分泌が両方補えるよう、配合されています。
混合型インスリン製剤は、組み合わせる製剤により注射のタイミングが異なります。
超速効型と中間型の場合は食直前に注射し、速効型と中間型では食前30分に注射するのが一般的です。
インスリンの作用持続時間は18〜24時間で、朝と夕方など1日2回打つ人は混合製剤を使っている人が多いです。
1日2回の注射の場合、昼食後の食後血糖値は高くなってしまいます。混合型インスリンは成分が沈殿した懸濁製剤のため、使用前にはよく振って使用しましょう。
一般名 |
商品名 |
作用発現時間 |
最大作用発現時間 |
作用持続時間 |
性状 |
対応 |
インスリンアスパルト二相性製剤 |
ノボラピッド®30ミックス |
10~20分 |
1~4時間 |
約24時間 |
白色懸濁 |
基礎・追加分泌 |
ノボラピッド®50ミックス |
10~20分 |
1~4時間 |
約24時間 | |||
ノボラピッド®70ミックス |
10~20分 |
1~4時間 |
約24時間 | |||
インスリンリスプロ混合製剤 |
ヒューマログ®ミックス25 |
15分以内 |
0.5~6時間 |
18~24時間 | ||
ヒューマログ®ミックス50 |
15分以内 |
0.5~4時間 |
18~24時間 |
一般名 |
商品名 |
作用発現時間 |
最大作用発現時間 |
作用持続時間 |
性状 |
対応 |
ヒト二相性 イソフェン インスリン |
ヒューマリン®R |
0.5~1時間 |
2~12時間 |
18~24時間 |
白色懸濁 |
基礎・追加分泌 |
ノボリン®30R |
約30分 |
2~8時間 |
約24時間 | |||
イノレット®30R |
配合溶解インスリン製剤
配合溶解インスリン製剤は、食直前の1日1回もしくは、朝食と夕食の直前にそれぞれ注射します。
配合溶解スインスリンは超速効型と持効型溶解インスリンを配合した製剤です。インスリンの追加分泌および基礎分泌を補います。
インスリンの作用持続時間は42時間と長く、医師が指定する食事の直前のタイミングで注射します。
インスリンの効果は、超速効型と持効型のインスリン製剤それぞれの時間にあらわれるのが特徴です。
一般名 |
商品名 |
作用発現時間 |
最大作用発現時間 |
作用持続時間 |
性状 |
対応 |
インスリンテグルデク ・インスリンアスパルト配合 |
ライゾテグ®配合 |
10~20分 |
1~3時間 |
42時間 |
無色透明 |
基礎・追加分泌 |
持効型溶解インスリン製剤
インスリン基礎分泌を補う製剤として、持続時間が約24〜42時間と長い持効型溶解インスリンの使用がスタンダードとなっています。
持効型溶解インスリンの特徴としては、以下の3点があげられます。
-
皮下注射してからの吸収速度が安定している
-
24時間にわたり血中のインスリン濃度が一定
-
夜間に低血糖を起こしにくいので安全
持続型溶解インスリン製剤は、就寝前もしくは朝食前に注射するのが一般的です。
基礎インスリン補充療法は持効型溶解インスリンを用いることが多く、朝食前や夕食前、就寝前などに1日1回投与します。
糖尿病の薬物治療において「BOT(Basal Supported Oral Therapy)」という言葉があります。
BOTは、現在服用している経口血糖降下薬を継続しながら、1日1回ベースとなるインスリンを注射する方法です。
1日1回の注射で済むため、患者の負担が小さく始めやすいのがメリットです。
基礎インスリン補充療法だけでは、食後の血糖値の上昇を十分に抑えることができない場合があるため、以下の3つの追加インスリン補充療法を考慮します。
-
GLP-1受容体作動薬
-
超速効型インスリン
-
速効型インスリン
持効型溶解インスリン製剤の詳細は以下の表のとおりです。
一般名 |
商品名 |
作用発現時間 |
最大作用発現時間 |
作用持続時間 |
性状 |
対応 |
インスリンテグルデク |
トレシーバ® |
ー |
明らかなピークなし |
42時間超 |
無色透明 |
基礎分泌 |
インスリングラルギン |
ランタス® |
1~2時間 |
明らかなピークなし |
約24時間 | ||
ランタス®XR |
24時間超 | |||||
インスリンデテミル |
レべミル® |
約1時間 |
3~14時間 |
約24時間 |
Q&A
インスリン皮下注射に関するよくある質問にお答えします。
インスリンはなぜ皮下注射なのですか?
インスリンは、ゆっくり身体に吸収させて血糖値をコントロールするため、皮下注射が基本です。インスリンは皮膚と筋肉の間の皮下組織に薬液を注射し、徐々に吸収されます。
皮下組織には血管が少ないため、薬液が吸収される速度は比較的遅くなります。
インスリンの投与方法は、皮下注射の他にも筋肉内注射や静脈内注射がありますが、皮下注射で実施するのが基本です。
インスリンを皮下注射する部位は?
インスリン皮下注射の部位は主に、お腹や二の腕、太もも、お尻などです。このなかでも、運動したときに筋肉が少なく、患者が自分で打ちやすい部位であるお腹がよく選択されます。
インスリン皮下注射のやり方は?
インスリン皮下注射は、以下の流れで実施します。
-
物品準備
インスリンのペン型注入器やアルコール綿、針捨て容器などを準備します。
-
空打ち
インスリンがきちんと出るかを確認したり、カートリッジの中の空気を押し出したりするために空打ちをします。
-
単位の設定
医師から処方された単位をセットします。
例えば、「2単位」の指示がある場合は、ダイヤルを「2」に合わせます。
-
皮下注射
インスリン皮下注射する部位を決めたら、皮膚に対して90度の角度で注射します。
薬液を注入し単位が「0」になったら、注入ボタンを押したまま約10秒間は針を抜かず待ちましょう。
-
片付け
インスリン注入器の針を指などに刺してしまわないよう、針ケースをかぶせた上で廃棄しましょう。
インスリンを皮下注射するときの角度は?
インスリン皮下注射は皮膚に対して90度の角度で実施します。針が見えなくなるまで皮膚にしっかり刺すのがポイントです。
まとめ
この記事では、インスリン皮下注射の打ち方や注意点、インスリン製剤の種類について詳しく解説しました。
皮下注射する際は、この記事で解説した注射の手順やポイント、注意点などを意識しながら実施しましょう。インスリン注射は、血糖値をコントロールするためとても重要です。
患者の糖尿病の症状や血糖コントロールの状態、生活背景などを考えて、一人ひとりに合ったインスリン製剤が選択されます。
医師の指示のもと、インスリン皮下注射を適切に実施しましょう。
また、製剤によっては、インスリン注射をしたあとにしっかり食事を摂らなければ低血糖になる可能性もあります。インスリンの特徴を踏まえて、上手に付き合っていきましょう。
インスリン皮下注射は、はじめは自分で注射するのが難しい場合もありますが何度か繰り返すうちに慣れてきます。注射の手技に不安があれば、この記事をぜひ参考にしてください。
参考文献
[1] 横浜市|ごみと資源の分け方・出し方|市で収集するもの|プラスチック製容器包装
[2] 公益社団法人 日本糖尿病協会|正しく捨ててる?在宅医療廃棄物
[3] 山口赤十字病院 糖尿病研究会|糖尿病だよりステップアップ|インスリン注射による皮膚病変に注意を!!
[4] 桑水流 理|力学的視点から見た肌の老化とシワの関係| 2.皮膚の構造と老化
[5] 伊藤メディカルクリニック|ニキビとの関係 皮膚構造と役割|皮膚の構造について
[6] 国立国際医療研究センター|糖尿病情報センター|血糖値を下げる注射薬|注射薬の使用方法
[7] novo nordisk|製剤の保管・保存・廃棄に関する注意点|ご自宅でのインスリン製剤の保管について
[8] 糖尿病ガイドライン2019|インスリンによる治療|Q6‐2 インスリン療法の適応とはどのような場合か?
[9] KEGG MEDICUS|医療用医薬品:フィアスプ|添付文書情報
引用