血糖の数値が高い原因は?
血糖値は食事や運動不足によって高くなります。食事では、炭水化物など糖を多く含む食材を食べると、急激に血糖値が上がります。
運動不足になると、インスリン(血糖値を下げる膵臓から出ているホルモン)が効きにくくなってしまうため、血糖値が下がりません。
血糖値が高い原因は病気に関係する場合もあるでしょう。ここでは血糖の数値が高い原因を4つ紹介します。自分にはどれが当てはまるか確認してみましょう。
血糖値が高くなる食生活
炭水化物や甘いものを一気に食べると、血糖値が上がりやすくなります。炭水化物が多くなりやすい、丼ものなどは注意しましょう。
暑いときに糖分を多く含んだスポーツドリンクを一気に飲むと、急性糖尿病を引き起こす危険性もあります。食べる順番も重要です。
いきなり糖質の多い炭水化物を食べると血糖値が急激に高くなり、炭水化物を先に食べる生活を継続すると血糖が常に高くなってしまいます。[1]
食事の時間帯も気を付けましょう。ずっと甘いものをつまんでいると、血糖が下がる時間がなくなり、血糖値が高い原因の一つとなります。
食事の時間が空きすぎると食べる量が増えたり、早食いになったりして急激に血糖が高くなり、体に負担をかけてしまうので控えましょう。[1]
血糖値が高くなる生活習慣
生活習慣には血糖値が高くなる要因が潜んでいます。運動不足はインスリンの効き目を弱めてしまい、血糖値を高くします。
また、安静時は脂肪がエネルギー源ですが、糖がエネルギー源になるのは運動時なので、運動不足となると糖が消費されません。[2]
脱水が続くと、相対的に糖の濃度が上がり、高血糖の原因となります。水分接種量が少ないと、気が付かないうちに脱水になっている可能性があります。
特に高齢者では脱水になる確率が高いです。[3]
ストレスを強く感じると、脳内の血糖をコントロールするホルモンにも影響を及ぼし、血糖値が高くなる可能性があります。[4]
血糖値が高くなる病気
血糖値が高くなる疾患には第一に糖尿病があげられます。糖尿病には1型と2型があります。
血糖値が高くなりやすい疾患は他に下垂体機能低下症、アジソン病、メタボリックシンドローム、敗血症です。[5]
1型の糖尿病は免疫系の遺伝的要因があり、免疫細胞が自己のインスリン分割細胞を攻撃、破壊してインスリンの作用不足を引き起こします。
発症年齢は10〜14歳ですが、中年過ぎの発症もあるようです。
2型の糖尿病では、遺伝的要因の関与もありますが、さらに肥満、高脂肪、運動不足、ストレスによってインスリン抵抗性(インスリンの働きにブレーキがかかっている状態)が強くなっています。
インスリン抵抗性が高くなることで、インスリンの作用不足となります。発病前に肥満症状が80%にみられ、青年以降(40〜60代)発症が多いです。
インスリンの作用が不足すると、血液中のブドウ糖が筋肉や脂肪組織の細胞へ取り込まれにくくなり、血液中の血糖値が高くなるのです。[6]
下垂体機能低下症、アジソン病はホルモンバランスが乱れる病気です。
血糖に関わるホルモンのバランスが崩れるため、血糖を上昇させるホルモンが増加し、血糖値が高くなります。[7][8]
メタボリックシンドロームで血糖値が高くなる原因は、肝臓や筋肉の脂肪蓄積を増大させて、インスリン抵抗性を上昇させるためです。[9]
敗血症は細菌の感染などによって生命を脅かす臓器不全が発生している状況です。
副腎皮質機能不全になり、血糖を上げるホルモンの制御不能に陥ると、インスリンの抵抗性が強くなるため、血糖値が高くなります。[10]
病気の治療で血糖値が一時的に高くなる?
ほかの病気の治療をしているときに、血糖値が一時的に高くなるケースもあります。
肺炎や気管支喘息の治療等で、炎症を抑えるステロイドの投与をおこなうと、インスリンの抵抗性が高くなり、血糖値が高くなります。
また、食事ができないときに、高カロリーの点滴(栄養補給の目的)を用いる場合、特に全身の代謝機能が衰えている高齢者では高血糖となりやすいです。
糖尿病の治療をしている方が、違う病気で禁食となった際、病気による生体へのストレスや薬を飲まない影響で急激に血糖値があがるシックデイもあります。[5]
血糖値とはそもそもなにを示している?
血糖値とは血液中のグルコース(ブドウ糖)の値です。
細胞が活動するためにはグルコースがもっとも重要なエネルギー源であり、血液中から全身の細胞に取り込まれる仕組みとなっています。
血糖値の濃度を一定に保つために糖の出し入れを調整をしているのは、インスリンをはじめとするホルモンや神経系の働きです。
糖はインスリンによって重要なエネルギー源としてグリコーゲンに変換され筋肉や肝臓に貯蔵されます。脂肪組織に脂肪として蓄えられる糖もあります。[11]
空腹時血糖値が下がらないとどうなるの?
本来、空腹の時間が持続すると血糖値が下がり、筋肉や肝臓に蓄えてている糖を放出させて、血糖値を上げます。
空腹時血糖値が下がらない状態が続くと、体内に常に糖分があるため、血管に負担がかかるでしょう。
血管に負担がかかると脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす動脈硬化の危険性が高くなります。
以下の項目で空腹時血糖についての知識を深めていきましょう。
空腹時血糖値が高くなる原因は?
空腹時血糖値が高くなる原因として、BMIの増加、運動習慣の有無、アルコールの摂取、朝食の未摂取、睡眠時間が上げられています。[12]
BMIが25以上かつ運動習慣がない人は、空腹時血糖が高くなります。
脂肪組織で脂肪として取り込まれている糖が高い可能性や、運動習慣がないことが影響し、インスリン抵抗性が上昇している状態が原因です。
アルコールの摂取も空腹時血糖が高くなる原因の一つです。アルコールの過剰摂取では肝機能の悪化を招きます。
アルコール摂取は肝臓でのブドウ糖とグリコーゲンの変換、貯蔵、さらにグリコーゲンの分解とブドウ糖の放出のコントロールに悪影響を及ぼし、空腹時血糖異常の危険因子です。
朝食の摂取の有無も空腹時血糖に関連します。朝食が食べられないと、高血糖につながります。しかし、メカニズムの解明はされていません。
肝臓には早朝に活動しているインスリンを不活性化し、朝からの活動に必要なエネルギー源を確保するために血糖値を上げる仕組みがあります。
朝食を抜き、一日の食事の始まりが遅いと血糖が上がった状態での食事となるでしょう。昼食を食べた際に食後高血糖になりやすく、インスリン分泌を亢進させます。
インスリン分泌が亢進され続けるとインスリン抵抗性が上昇し、空腹時血糖も高くなるとされています。
食事と食事の時間が伸びることで一回の食事の摂取量が増え、急激に血糖があがる状態は、インスリン分泌に影響します。
また、睡眠時間が7時間未満の群では平均睡眠時間が7〜8時間の人々と比べて空腹時血糖の異常をきたしやすいという報告があります。
入眠時間が長い人の方が健康状態や精神状態が保たれているのでしょう。睡眠時間は、空腹時血糖値にも影響しています。
空腹時血糖が130を超えても大丈夫?
経口ブドウ糖負荷試験の判定区分と判定基準
引用[13]:※経口ブドウ糖負荷試験(空腹時に75gのブドウ糖を飲む検査)
※負荷後2時間血糖(75gのブドウ糖を飲む検査をして、2時間後の血糖値)
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正常血糖
空腹時血糖が100以上、負荷後2時間血糖が140以下 -
境界型糖尿病(糖尿病になるかならないかのライン)
空腹時血糖が110以上、負荷後2時間血糖が140以上200以下 -
糖尿病
空腹時血糖が126以上あるいは負荷後2時間血糖が200以上
空腹時血糖が130を超えている場合は、糖尿病と診断されます。糖尿病は合併症にも注意しましょう。
三大合併症と言われているのは、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性末梢神経障害です。
血糖値が高い状態が続くと透析治療が必要となったり、失明・下肢の切断を引き起こす可能性があったりするため、放置せずに治療を行いましょう。
入院レベルとなる空腹時血糖の数値は?
空腹時血糖の数値が250〜300の場合、経口血糖降下薬やインスリン注射の治療対象です。
空腹時血糖が230〜300以下の場合は食事療法や運動療法の指導を十分におこない、経過観察をします。2〜3か月変化がなければ経口血糖降下薬やインスリン治療を検討します。
血糖コントロールが不良の場合、強化インスリン療法、糖尿病教室のため入院となる可能性もあるでしょう。
血糖コントロールはHbA1c(長期の血糖コントロールを観察する評価項目)を検査し、7.0%未満を目指すケースが多いです。[14]
血糖値が500以上だと命の危険にかかわるため、即入院となり、治療を開始する可能性が高いでしょう。
血糖が高いとき、体では何がおこっている?血糖が高いと、体にはどんな症状が出てくるのでしょう。以下に具体的な数値と症状を示しています。確認してみてください。
食後血糖値が200超えているときは?
血糖値が200以上あるからといって、症状が出るわけではありません。
しかし糖尿病の治療対象となるため、医師の相談の上、生活習慣の見直しや服薬が必要となるでしょう。
血糖値のレベル別、高いときの具体的な症状
血糖が高くなると、のどの渇き、多飲、頻尿・多尿、体重減少、倦怠感といった症状がでます。[15]
2型糖尿病の場合、血糖値が急に高くなって症状が出てくるのは稀なケースです。徐々に血糖値が上がってくるため、少し上がった程度では具体的な症状を感じない方が多いです。
血糖値が300〜400を超えてから症状が出てきたときは、心臓や腎臓に大きな負担をかけている状態となります。
血糖値が高くて検診で指摘を受けても症状がないからといって放置するのは控えましょう。[16]
血糖値が高い場合の改善方法
血糖値が高いと言われたら、生活習慣の見直しが重要です。血糖値が高い状態が続くと薬物療法も適応となってきます。
糖質や炭水化物を控える食事療法
血糖値が高い場合、食べるものの種類やバランスに気を付ける必要があります。[17]
ご飯やパンなどの炭水化物を極端に減らす必要はありません。しかし、自分に必要なエネルギーを栄養士等に相談し、摂取しすぎないよう注意しましょう。
果物は一日100g程度以上で血糖値を上昇させる可能性があるため、注意が必要です。魚や肉などのタンパク質は腎機能が低下している場合、摂取を控えましょう。
食事量の20%が摂取の目安となります。バターや肉の脂身など動物性脂質の摂取は、糖尿病発症のリスクが高いため脂っこい食事には注意が必要です。
キノコや野菜に含まれる食物繊維は、積極的に摂取しましょう。一日20g以上が推奨されています。
有酸素運動と筋トレの組み合わせがおすすめ!運動療法
血糖値が高い場合、ウォーキングのような有酸素運動と、筋トレのようなレジスタンス運動を組み合わせると効果的です。[18]
有酸素運動は心拍数が100〜110回/分のやや強い〜楽であるくらいの強度でおこないます。糖質と脂肪酸を効率よく代謝するためには20分以上の運動時間が目安です。
ウォーキングの場合、30分程度を一日2回、合計で10,000歩を目指して運動をすると良いでしょう。レジスタンス運動は連続しない日で週2〜3回おこなうのがおすすめです。
腹筋やスクワット、腕立て伏せ等を組み合わせておこないます。虚血性心疾患などの合併症患者などでは負荷の高いレジスタンス運動は推奨されていません。
また、高齢者においても急激な頻度や回数での実施は控えます。医師と相談の上、一日の回数や頻度を決めましょう。
インスリン注射や経口血糖降下薬を使う薬物療法
1型糖尿病の場合、インスリン依存状態(膵臓のインスリンを出す細胞が破壊されてしまっている)のため、インスリン注射が必須となります。
1型糖尿病の患者は食前にインスリンの注射を打ってから食事をとり、食後の高血糖に備えます。[19]
2型糖尿病では生活習慣を見直したうえで血糖値が高い場合、薬物療法が適応となります。経口摂取薬のうち欧米で第一選択薬となっているのはメトホルミンです。
肝臓からのブドウ糖放出を抑え、筋肉へ糖分を貯蓄させる効果で血糖値を低下させます。日本では、第一選択薬は指定されていません。
患者の病態に応じて、適切な薬を主治医が選択します。[20]
経口摂取薬を服用しても血糖値目標(HbA1c:7.0以下)が達成できないケースは、インスリン注射の適応となります。[19]
Q&A
血糖値が高い原因について、多く寄せられる質問は以下の通りです。
血糖値が高いとどんな症状が出ますか?
血糖値が200を超えると、のどの渇き、空腹感、多飲、多尿・頻尿などの症状が出ます。300を超えると意識障害を引き起こす危険性があります。
血糖が高いとなぜ悪いのですか?
血糖が高い状態は、血管に負担を与え、動脈硬化のリスクが高まります。動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞の原因の一つです。
糖尿病となると、三大合併症である糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害になる可能性があるため、注意しましょう。
進行すると、透析が必要になったり、目が見えなくなったり下肢を切断したりする危険性があります。
血糖値が110だと、どうなりますか?
空腹時の血糖が110でも、糖尿病の診断にはならず、すぐに治療が必要なわけではありません。
油断をすると糖尿病になってしまう可能性があるため、生活習慣を見直し、悪化しないよう注意しましょう。
食べていないのに血糖値が上がるのはどうして?
血糖値が上がるのは、食事が大きな原因の一つではありますが、ほかの影響も強く受けています。
ストレスが多いと、脳内の血糖をコントロールするホルモンが乱れてしまい、血糖値を上げるホルモンを放出します。
脱水の状態が続くと、相対的に血液中の糖の割合が増えるので、血糖値が高くなるでしょう。
血糖値を改善するにはどうしたらよいですか?
2型糖尿病の場合、血糖値を下げるには生活習慣の改善が必要です。医師の指示のもと、食事療法や運動療法をすすめていきます。
糖分や脂質を控え、食物繊維をしっかりとったり、一日20分程度のウォーキングをしたりするのがおすすめです。必要があれば薬による治療も検討されるでしょう。
まとめ
血糖が高くなる重大な原因は、食事による糖のとりすぎです。食事以外にも運動不足やストレス、脱水の影響も考えられます。
糖尿病やメタボリックシンドローム、血糖コントロールするホルモンが影響を受ける下垂体機能低下症などの疾患も、血糖が高くなる原因です。
血糖値の数値は血中のグルコース(ブドウ糖)の濃度です。
グルコースは体にもっとも重要なエネルギー源ですが、過剰になり筋肉や肝臓に蓄えきれなくなると高血糖となります。空腹時血糖が126を超えると糖尿病と診断されます。
血糖が高いと、のどが渇きや疲れやすいといった症状が出る人もいるでしょう。
糖尿病が進行すると、血管に負担がかかり心筋梗塞や脳卒中の危険性が高くなったり、腎機能低下で透析が必要となったりするので注意が必要です。
血糖が高い場合の治療法として、食事療法や運動療法で生活習慣改善が効果的です。
血糖コントロールができない場合は経口血糖降下薬の使用やインスリン注射の適応となります。医師と相談の上、血糖が高い場合は放置せずに治療に取り組んでいきましょう。
参考文献
[1]京都女子大学|食事の質と量だけでなく食べ方と食べる時刻も血糖指標に影響を与える
[2]理学療法学|運動療法の2型糖尿病に対する効果とそのメカニズム
[3]自立在宅高齢者用かくれ脱水チェックシートの開発―介護老人福祉施設の通所,入所者を対象としたかくれ脱水に関する継続研究―
[5]2016.株式会社照林社.山中勝郎/石川隆志/真野惠子.看護アセスメントにつながる検査データの見かた.p166-167
[6]2006.凸版印刷株式会社.山口和義.新版病気の地図帳.p150-151
[7]MDSマニュアル家庭版|12. ホルモンと代謝の病気 |下垂体の病気 | 下垂体機能低下症
[8]MDSマニュアルプロフェッショナル版|10. 内分泌疾患と代謝性疾患 |副腎疾患 | アジソン病
[9]MDSマニュアルプロフェッショナル版| 09. 栄養障害 | 肥満およびメタボリックシンドローム | メタボリックシンドローム
[10]MDSマニュアルプロフェッショナル版 |21. 救命医療 | 敗血症および敗血症性ショック |敗血症および敗血症性ショック
[11]2019.メディックメディア社.森野 勝太郎/弘世 貴久/河盛 隆造他.病気が見えるvol.3 糖尿病・代謝・内分泌.p4
[12]総合健診|空腹時血糖異常に影響する因子に関するコホート研究
[14]一般社団法人日本糖尿病学会|糖尿病診療ガイドライン2019|2.糖尿病治療の目標と指針
[15]国立国際医療研究センター糖尿病情報センター|糖尿病とは
[17]一般社団法人日本糖尿病学会|糖尿病診療ガイドライン2019|4. 食事療法
[18]厚生労働省|e-ヘルスネット|糖尿病を改善させるための運動
[19]一般社団法人日本糖尿病学会|糖尿病診療ガイドライン2019| 6.インスリンによる治療
[20]一般社団法人日本糖尿病学会|糖尿病診療ガイドライン2019|5.血糖降下薬による治療(インスリンを除く)