糖尿病と高血圧の関係
糖尿病と高血圧は同様な関係があるのでしょうか?
ここでは、糖尿病と高血圧の関係を解説します。
糖尿病と高血圧が合併したときのリスクとは
糖尿病と高血圧は、両方とも生活習慣病として知られ、多くの方が2つの疾患を併発しています。
糖尿病の人のおよそ40~60%が高血圧を持っているとされており、これら2つの病気が同時に進行すると、動脈硬化が急速に進むリスクが高まります。[1]
動脈硬化の進行は、心筋梗塞や脳卒中のような生命を脅かす疾患の原因の一つです。
さらに、高血圧は糖尿病の合併症である、糖尿病性腎症を進行させ、腎機能が低下します。
そして、ナトリウムと水分の排泄が十分にできなくなり、血圧が上昇していまいます。
そのため、軽い高血圧がある場合でも、治療や血糖と血圧の両方の管理が不可欠です。
高血圧の人は糖尿病になりやすい?
高血圧の方は、糖尿病の発症リスクが高まることが指摘されています。
高血圧と糖尿病は生活習慣病の一つであり、発症や進行の原因は食事や運動、肥満、喫煙などの生活習慣です。
高血圧と糖尿病の原因が同じであることから、高血圧の人は糖尿病になりやすいと考えられます。
自覚症状がほとんどないため、気が付かないうちに進行することが多く、早期発見と早期治療が大切です。
糖尿病の人が高血圧になる原因とメカニズム
糖尿病の人が高血圧になる原因には、何が関係あるのでしょうか?
ここでは、糖尿病の人が高血圧になる原因とメカニズムについて解説します。
動脈硬化
糖尿病の人が高血圧になる原因の一つは動脈硬化です。
血糖値が高いと、血管の細胞が損傷され、硬くもろくなってしまいます。
血管が硬く、弾力性がなくなると血管の通り道が狭くなります。
その結果、心臓がより強く血液を送り出す努力をしなければなりません。これが高血圧となる一因です。[2]
肥満
糖尿病の人が高血圧になる原因の一つは肥満です。
肥満の人は、交感神経が緊張しているため、血圧を上げるホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)が多く分泌され、高血圧になりやすい傾向があります。
2型糖尿病の人は肥満の方が多く、高血圧のリスクが高まる可能性があるため、体重の管理と血圧の定期的なチェックが不可欠です。[2]
インスリン抵抗性
糖尿病の人が高血圧になる原因の一つに、インスリン抵抗性があります。
インスリン抵抗性とは、体内の細胞がインスリンの作用に対して感受性を失い、効果的に反応しなくなる状態です。
インスリンの効き目の低下を補完するため、体はより多くのインスリンを分泌するようになります。これが「高インスリン血症」という状態です。。
インスリンは交感神経を緊張させるため、塩分の体外への排出が抑制されます。
その結果、血液量が増加して、血圧が上がる原因となります。[2]
腎機能低下
腎機能の低下は、糖尿病の人が高血圧になる原因の一つです。
長期間にわたる高血糖状態の影響で、毛細血管が損傷し、糸球体が破壊された状態が糖尿病性腎症です。
腎臓は、体の浄化装置として機能しており、血液中の不要な物質や過剰な水分を尿として排泄します。
しかし、糖尿病性腎症が進行すると、このろ過機能が低下し、体内の水分や塩分のバランスが乱れます。
その結果、血液の量が増加し、血圧が上昇するのです。
また腎臓から血圧を上昇させるホルモンが過剰に分泌されるようになり、血圧が上がります。[2]
高血糖状態
高血糖状態も高血圧になる原因の一つです。
高血糖により、血液中の糖の濃度が増すと、その結果、血液の浸透圧が高まります。
高い浸透圧は、細胞内の水分を細胞外に引き出し、細胞が脱水状態になることがあります。
その結果、腎臓からの水分の再吸収が増加し、体内の血液量や体液量が増加することで高血圧となるのです。[3]
糖尿病の人の高血圧の治療
糖尿病の人は、血圧を上げる要因にすべて当てはまるため、高血圧を合併しやすいでしょう。ここでは、糖尿病の人の高血圧の治療について解説します。
薬物療法
生活習慣の改善だけで血圧が下がらない場合、薬物療法が必要になります。
糖尿病と高血圧の両方を抱える人にとって、血糖と血圧の両方の状態を安定させることが求められるため、適切な薬物選択はとくに重要です。
糖尿病性高血圧の薬物療法では、以下の薬剤が使用されます。
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利尿薬
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ACE阻害薬
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ARB
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カルシウム拮抗薬
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β遮断薬
食事療法
食事療法は、塩分の制限や低脂肪の食事を心がけることで、血圧の上昇を防ぎます。
高血圧を予防・改善するには、食事内容の見直しと塩分の摂取量を意識することが重要です。
とくに、塩分過多の食事は血圧上昇の大きな原因となるため、減塩を意識した食事を心掛けることが求められます。
塩分が多い食品は極力避け、1日の塩分摂取量を6g未満に制限する努力が必要です。
肥満は糖尿病や高血圧のリスクとなるため、過度な摂食や飲酒は控えめにし、標準体重をキープすることを目指します。[2]
運動療法
運動療法で行われるのは、ウォーキングや水泳などの有酸素運動と筋トレです。
運動は、血管を拡張して血液の流れを改善する効果があり、血圧を下げます。
また、カロリーを消費することで、体重を減少させ、肥満の改善につながります。
運動療法では、無理のない範囲で行うことと、効果を出すための継続が重要です。[2]
血糖値と血圧を下げるために生活習慣を改善しよう
実際に血糖値と血圧を下げるためにはどのようなことに気をつけなければならないのでしょうか?
生活習慣の改善について解説します。
食生活の改善|予防におすすめの食べ物と食べてはいけないものって何?
血糖値や血圧を下げるために、食生活の改善が必要です。
血圧を正常に保つために塩分の摂取量を減らしましょう。
高血圧予防のための食事では、1日の塩分摂取量を6g未満に抑えることが推奨されています。
減塩のコツは、以下の5つがあります。
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香辛料や柑橘類での味付けや、食材の旨味を最大限に活かし、調味料の量を減らす
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漬物、梅干し、加工食品は摂取を控える
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スープは取り過ぎず、1日1杯までを目安に
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インスタント食品は避ける
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一度に多くの食事を摂取すると、塩分摂取量も増えてしまうので、過食は避けること
また、糖尿病の食事療法は、全体的な食事バランスと摂取エネルギーを意識するようにしましょう。
特定の食材を避ける必要は基本的にはありません。
糖尿病の食事療法を行う際には、注意点は以下の4つです。
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カロリーや糖質の摂りすぎに注意する
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食事の回数を増やすと、血糖値のコントロールが難しくなるため、3食を規則正しく食べる
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間食は、1日1~2回程度を目安に、適量とる
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アルコールは、血糖値を乱す可能性があるため、控える
糖尿病の食事療法は、血糖値をコントロールして、合併症の予防や改善につながる大切な治療法です。
運動する習慣をつけよう
生活の中に運動を取り入れることが大切です。
運動習慣は、体内の余分なエネルギーを消費し、インスリンの働きを向上させます。
血糖コントロールを助けるとともに、血行の促進やストレスの解消にも有効です。
運動習慣の基本は以下の5つです。
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毎日、一人でできる運動を行う
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きつすぎず、楽すぎない程度の運動にする
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準備体操、整理体操は欠かさない
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食後1~2時間後に運動すると、食後の血糖値の上昇が抑制
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運動日誌をつけ、運動習慣を身に付ける
一部の病状や症状の場合、運動療法は適切でないか、または制限が必要です。
以下の場合は医師の指示に従う必要があります。
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血糖コントロールが極端に悪い場合
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新しい眼底出血を起こしている増殖網膜症の場合
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糖尿病腎症が重症の場合
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糖尿病性
その他の生活習慣の改善
肥満、喫煙、ストレスといった生活習慣は高血圧の原因です。
これらを改善することで、高血圧の改善につながります。
血圧を下げるためには、体重を減少させることが必要です。体重を1kg落とすだけで、血圧が約1mmHg下がるとされています。[2]
喫煙は血圧を上昇させ、さらに動脈硬化の進行を招きます。
喫煙は控えることが必要です。
さらに、ストレスは一時的に血圧を上昇させ、長期間のストレスが続くと血圧の上昇を持続させます。
ストレスは定期的に解消し、ためないように心掛けましょう。
高血圧の管理には食事や運動だけでなく、その他の生活習慣の見直しも非常に重要です。
日常の生活を見直すことで、血糖と血圧のコントロールがより効果的に行えるようになります。
糖尿病の人の血圧の目標は?
糖尿病の人の血圧の目標は、130/80mmHg未満です。
糖尿病でない人の血圧の目標である140/90mmHgよりも低く設定されています。
糖尿病の人は高血圧になりやすいため、その予防や合併症を避けるために、目標の血圧を維持することが重要です。
糖尿病で血圧が下がる理由
糖尿病の人は、高血圧だけでなく低血圧になる可能性があります。
原因は、糖尿病性神経障害という合併症です。
この合併症により、自律神経や末梢神経の機能に障害がでることがあります。
自律神経は、体の血圧を調節する役割を担っているため、血圧が適切に調節できなくなり、低血圧を引き起こすのです。
低血圧では、めまいや立ちくらみのような症状が現れるリスクがあるため、けがや事故に注意が必要です。
Q&A
糖尿病と高血圧に関する質問についてお答えします。
糖尿病で血圧が高いのはなぜですか?
糖尿病の人は高血圧になりやすく、その原因は5つあります。
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動脈硬化:血管が硬く弾力性がなくなり心臓がより強く血液を送り出す
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肥満:交感神経を活性化させ、アドレナリンなどのホルモンの分泌
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インスリン抵抗性:高インスリン血症で交感神経を緊張し血液量が増加
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腎機能低下:腎臓のろ過能力が低下し血液量が増え、レニンが過剰に分泌
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高血糖状態:高い浸透圧で、細胞内の水分が外へ移動し、腎臓での水分吸収が増加
上記のような要因が複合的に作用し、血圧の上昇を招いています。
糖尿病・高血圧だとどうなる?
糖尿病と高血圧の2つの病気が同時に進行すると、動脈硬化が急速に進むリスクが高まります。
糖尿病の人が高血圧を合併すると、インスリン抵抗性が強化され、血液中のインスリンが多くなります。交感神経が刺激されて血圧が上昇し、血管の内壁にダメージを与えるでしょう。
ダメージを受けた血管は、動脈硬化を引き起こす原因になります。
動脈硬化の進行が速まと、心筋梗塞や狭心症、脳血管障害といった大血管疾患のリスクが高くなるでしょう
さらに、動脈硬化は糖尿病の合併症である、糖尿病腎症や糖尿病網膜症などを進行させる要因となります。
糖尿病で血圧が160だとどうなりますか?
糖尿病で血圧が160は重度の高血圧であり、合併症のリスクが非常に高まります。
糖尿病の人の血圧の目標は、130/80mmHg未満です。
高血糖と高血圧は、動脈硬化の進行が急速に進む可能性があります。
早めに主治医へ相談しましょう。
糖尿病と高血圧の自覚症状は?
糖尿病と高血圧の自覚症状は、頭痛やめまい、疲れやすさ、視界の変化などです。
しかし、初期段階での自覚症状が少ないため、注意が必要です。
糖尿病と高血圧は、「サイレントキラー」と称され、隠れた病気として進行します。
健康な生活を目指し、定期的な医療チェックを受けることが大切です。
まとめ
この記事では、糖尿病と高血圧の関係と血圧と血糖を下げるための方法について解説しました。
糖尿病と高血圧は互いに関係しており、命に関わる重大な病気につながるリスクがあります。
症状が無いからと油断せず、生活習慣を改善していき、根本的な解決を目指しましょう。
生活習慣の改善は時間がかかるかもしれません。焦らずに少しずつ取り組み、長い目で改善を目指していくと良いですよ。
参考文献
[1]つばさ在宅クリニック西船橋 高血圧と糖尿病の関係|糖尿病に高血圧を合併するリスク
[3]糖尿病ネットワーク 糖尿病セミナー27.糖尿病と高血圧