GLP-1の飲み薬(リベルサス)とは?
GLP-1の飲み薬「リベルサス」は、GLP-1を体内で分解されにくいように改良した薬です。GLP-1とは、ホルモンの1つであり、食べ物を食べたときに小腸などから分泌されます。
血糖値が高いときにGLP-1は膵臓に働きかけ、インスリンの分泌を促します。
GLP-1の薬剤は注射薬が多いですが、リベルサスは2020年に初のGLP-1飲み薬として承認されました。
GLP-1の飲み薬(リベルサス)は糖尿病の薬!2つの効果について解説
リベルサスは、主に3つの作用があります。
これらの作用により、2型糖尿病への効果を発揮します。
【リベルサスの作用】
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膵臓でインスリンの分泌を促す
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胃の働きを抑える
-
中枢神経に作用して食欲を抑える
【リベルサスによる糖尿病への効果】
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血糖値を下げる
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体重を減少する
順に解説します。
GLP-1飲み薬の効果①:血糖値を下げる
リベルサスには血糖値を下げる効果があります。作用機序は以下の通りです。
血糖値が高いときに、膵臓へインスリン分泌を促進する
↓
インスリンの作用により糖が血液から体内へ取り込まれる
↓
血糖値が下がる
また、胃の働きを抑える作用により、食べ物を腸に送り出すのが遅くなります。よって、急激に食後の血糖値が高くなる状態を防ぎます。
このようにリベルサスには、急な血糖の上昇を抑制し、血糖を下げる働きがあるため、2型糖尿病の治療に用いられます。
GLP-1飲み薬の効果②:体重を減少する
さらにリベルサスは、以下2つの作用により体重を減少する効果があります。
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胃の働きを抑える→食事中の満腹感が得られる
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中枢神経に作用して食欲を抑える→空腹を感じにくくなる
このような作用で、間食や1回あたりの食事量が減少するため、体重減少効果が期待できます。
したがって、肥満のある2型糖尿病患者に処方されることが多いです。[1]
GLP-1の飲み薬(リベルサス)の副作用とは?
2型糖尿病への効果が高いリベルサスですが、医薬品であるため以下の副作用には注意が必要です。
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消化器症状
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低血糖症状
副作用は怖いと思うかもしれませんが、医師の指示に従って正しく服用すれば、安全に服用できます。
注意事項も解説していますので、順に見ていきましょう。
消化器症状
リベルサスの副作用には、吐き気や便秘、下痢などの症状があります。リベルサスが胃の動きを抑えるためです。
薬の飲み始めに生じることが多いですが、継続していくうちに徐々に副作用が落ち着く場合もあります。
しかし症状には個人差があるため、日常生活に支障が出るようなときは医師に相談しましょう。
消化器症状の中には、まれに腸閉塞や急性膵炎といった重大な副作用が隠れています。
腸閉塞とは、腸がふさがり、食べ物や水分などの内容物がたまった状態です。おなかの痛みや張り、食欲不振、発熱などが症状としてあげられます。
また、急性膵炎は膵臓に炎症を生じた状態です。吐き気を伴う激しいおなかの痛みを生じたときは、急性膵炎の可能性があります。
腸閉塞や急性膵炎の際は、薬が中止になる場合もあります。これらの症状には気を付け、気になる症状があればすぐに医師に相談するとよいでしょう。
低血糖症状
リベルサスは、他の糖尿病治療薬と比べて低血糖になりづらいですが、低血糖症状には注意しましょう。
低血糖の初期症状は、以下の通りです。
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異常な空腹感
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冷や汗
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手の震え
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吐き気
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体のだるさ
このような症状を感じたら、ただちにブドウ糖や糖分を含む飲み物(コーラやカルピスなど)を摂取し、安静に過ごしましょう。
ブドウ糖は糖の最小単位です。食べ物に含まれている糖分は、多くがブドウ糖ではないためそのまま吸収できません。
体内で分解されると、ブドウ糖として速やかに吸収され、体のエネルギーとして使われます。
したがって、低血糖だからといって単純にチョコレートなどのお菓子を摂取しても、回復するまで時間がかかることがあります。
ブドウ糖はドラッグストア等で簡単に手に入りますので、普段から持ち歩くようにすると良いでしょう。
また、自動車の運転や高所での作業中に低血糖症状を起こすと危険なため、これらの作業は注意して行ってください。
GLP-1の飲み薬と注射の違いは?
GLP-1受容体作動薬には、飲み薬であるリベルサスのほかに注射薬があります。飲み薬・注射薬いずれにしても、基本的な作用に違いはありません。
大きな違いは投与方法です。リベルサスは、以下のように内服します。
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服用前に、食事や飲水をしない。1日1回起床後すぐ服用する
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120ml以下の少量の水で服用する
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服用後は最低30分間は飲食しない
一方注射薬は、自分自身で皮下に注射します。
ボタンを押すだけで注射できるため、注射そのものは難しくありません。
リベルサスは起床時に服用しますが、注射薬は種類により食前のものもあれば、食事に関係ないものもあります。
また、リベルサスは1日1回服用するのに対し、注射薬は薬剤の種類により週1回でよいものもあります。
GLP-1の飲み薬(リベルサス)をダイエットに用いる危険性とは?
リベルサスでダイエットができるって聞いたけど危険はないのかな……このような疑問について解説します。
結論としては、さまざまな危険性が潜んでいるため、よく考えて選択しましょう。
GLP-1ダイエットで副作用が現れても自己責任
現時点で、リベルサスをダイエット目的で使用した場合の、有効性や安全性は確認されていません。[2]
そのためリベルサスを服用することによって、副作用が現れても自己責任です。
先述したように、リベルサスの副作用として低血糖や吐き気、便秘、下痢などが現れるかもしれません。
場合によっては重篤化して入院する可能性もあります。しかし健康被害が現れても、ダイエット目的での使用は適応外です。
適応内での使用における副作用は、医薬品副作用被害救済制度によって国の補償を受けられますが、ダイエットの場合は補償を受けられません。
GLP-1ダイエットは厚生労働省から警告あり
GLP-1ダイエットについては、様々なトラブルが多発しており、厚生労働省から注意喚起が出ています。[3]
ダイエットは薬を使わなくてもできるため、他に安全に行えるダイエット方法がないか検討してみてください。
また、GLP-1ダイエットで薬の利用者が増えたため、本来治療を必要としている2型糖尿病患者に薬が届きづらい状況となっています。[4]
GLP-1ダイエットに取り組む際は、厚生労働省からのお知らせも一度確認すると良いでしょう。
GLP-1の注射もダイエットに用いるのは危険
GLP-1ダイエットに用いられる薬は、リベルサスだけではありません。注射薬にも同じ効果が期待できるとして、注射薬が処方されることもあります。
いずれにしても、ダイエットに対する効果と安全性は現時点で確認されていないため、注意が必要です。
GLP-1の飲み薬(リベルサス)の個人輸入は危険!
リベルサスをダイエット目的で使用する際の費用は、決して安価とはいえません。
そこで安く薬を手に入れるために、個人輸入を検討する方がいますが非常に危険です。
理由としては以下の2点です。
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薬の品質や安全性が保障されていない
-
医師の診察を受けられない
詳しく解説しますので、個人輸入はよく考えてから行いましょう。
薬の品質や安全性が保障されていない
医師の処方のもとで使用される医薬品は、国内の厳しい品質管理基準を通過しているため、薬の品質や安全性が保障されています。
しかし、個人輸入の場合は薬が粗悪品である可能性が否定できません。
例えば、リベルサスの成分とは異なる成分が配合されていたり、期限切れの薬であったりといった危険性があります。
その結果、期待している効果が現れなかったり、思いもよらぬ健康被害が現れたりするかもしれません。
このような健康被害に対して適用される補償などはなく、自己責任となるため注意が必要です。
医師の診察を受けられない
個人輸入の場合、医師の診察が受けられません。
医師の診察がないと、副作用が見過ごされたり、服用できない状態で服用してしまい健康を害したりする可能性があります。
例えば、以下に該当する方はリベルサスの服用に注意が必要です。[5]
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膵炎になったことがある人
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重度の胃不全麻痺や胃腸障害のある人
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低血糖を起こすおそれのある人(脳下垂体機能不全または副腎機能不全、栄養不良や飢餓状態、激しい筋肉運動、過度のアルコール摂取)
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胃摘出術を受けたことのある人
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妊娠または妊娠を予定している人
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授乳中の人
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高齢者
健康を害した後では、取り返しがつかないため、個人輸入は慎重に検討しましょう。
GLP-1の飲み薬の名前一覧
現在、日本で承認されているGLP-1の飲み薬は、リベルサス(一般名:セマグルチド)のみです。
注射薬もあわせると、以下の表に示すように7種類の薬剤があります。
商品名 |
一般名 | |
飲み薬 |
リベルサス |
セマグルチド |
注射薬 |
オゼンピック |
セマグルチド |
トルリシティ |
デュラグルチド | |
ビクトーザ |
リラグルチド | |
リキスミア |
リキシセナチド | |
バイエッタ |
エキセナチド | |
マンジャロ |
チルゼパチド |
GLP-1の飲み薬(リベルサス)が保険適用される条件とは?
リベルサスが保険適用されるのは、2型糖尿病の治療に用いられる場合です。
肥満治療は、保険適用ではなく自費診療となるため注意してください。
GLP-1の飲み薬(リベルサス)を飲むときの注意点
リベルサスは服用時にいくつか注意点があります。
注意事項を守らないと、期待した効果が現れない可能性があるため注意しましょう。
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1日のうちの最初の食事又は飲水の前に、空腹の状態で服用する
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120ml以下の少量の水で、溶かしたりかみ砕いたりせずに服用する
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服用後は最低30分間は飲食しない
薬の吸収が阻害されるため、服用時はお茶やコーヒー、ジュースなどで服用してはいけません。
服用方法に不安がある際は、遠慮なく医師や薬剤師に相談しましょう。
また、リベルサス錠には3mg、7mg、14mgと3つの規格があります。
始めは1日1回3mgから開始し、4週間以上投与した後、1日1回7mgに増量となります。徐々に量を増やすのは、副作用が現れるのを防ぐためです。
血液検査次第では、7mgを4週間続けた後、14mgに増量することもあります。
良好な血糖コントロールを行えるように、薬だけに頼るのではなく、普段の食事を見直したり運動を取り入れたりしましょう。
Q&A
GLP-1の飲み薬「リベルサス」に関して気になる質問について答えます。
GLP-1の飲み薬でダイエットできますか?
GLP-1の飲み薬は、胃の働きを抑え、食欲を抑える作用があります。
この作用により食事量や食事回数が減ると、体重減少効果が期待できます。
そのため美容クリニックなどでは、メディカルダイエットの1つとして提供されることが増えてきました。
しかし、リベルサスのダイエット利用について、有効性や安全性は現時点で確認されていません。[2]
ダイエット目的で使用を考えている場合は、慎重に検討してください。
予期せぬトラブルに巻き込まれる可能性もあるため、厚生労働省からの注意喚起を一読すると良いでしょう。[3]
GLP-1の飲み薬はいくらですか?
リベルサス錠の薬価は以下の通りです。[6]
- 3mg錠:139.60円/錠
- 7mg錠:325.70円/錠
- 14mg錠:488.50円/錠
GLP-1作用のある薬は?
GLP-1作用のある薬は以下の通りです。
飲み薬1種類、注射薬6種類が現時点で承認・販売されています。
商品名 |
一般名 | |
飲み薬 |
リベルサス |
セマグルチド |
注射薬 |
オゼンピック |
セマグルチド |
トルリシティ |
デュラグルチド | |
ビクトーザ |
リラグルチド | |
リキスミア |
リキシセナチド | |
バイエッタ |
エキセナチド | |
マンジャロ |
チルゼパチド |
飲み薬GLP-1は保険適用ですか?
GLP-1の飲み薬「リベルサス」は2型糖尿病の治療に用いる場合、保険適用です。
ダイエットのために用いる場合は自費診療となります。
まとめ
本記事では、GLP-1の飲み薬であるリベルサスについて解説しました。
リベルサスは、血糖値を下げる効果と体重減少効果があるため、2型糖尿病の治療に用いられます。
副作用としては主に、低血糖症状や消化器症状があります。気になる症状があるときは、遠慮なく医師や薬剤師に相談してください。
また、体重減少作用を利用したダイエット目的での使用をよく目にしますが、様々なトラブルに巻き込まれる可能性もあります。
厚生労働省のお知らせなどもよく確認した上で、ご自身で慎重に判断してください。
医薬品は医師の指示に従って正しく使えば、よい効果をもたらします。薬の服用とあわせて生活習慣を整えながら、日々の治療に取り組んでいきましょう。
参考文献
[1]一般社団法人日本糖尿病学会|2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム
[2]医薬品医療機器総合機構|GLP-1 受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ
[3]消費者庁・厚生労働省・国民生活センター|美容医療を受ける前にもう一度
[4]厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課|GLP-1受容体作動薬の在庫逼迫に伴う協力依頼