うつ(鬱)病とはどんな症状?
うつ病とは、精神的ストレスと身体的ストレスが原因で、脳内の神経伝達物質「セロトニン」「ノルアドレナリン」が減ってしまう病気です。
セロトニンには、精神を安定させる働きがあります。
ノルアドレナリンは、集中力を高めるときや激しい感情を起こすときなどに放出され、交感神経の活動を活発にします。
それぞれが不足すると、精神的に不安定になったり、やる気がおきなかったりとうつ病の症状が現れるのです。
うつ病の症状を精神症状と身体症状に分けて説明します。[1]
<精神症状>
-
悲しい気分が1日中続く
-
好きだった事への興味が薄れる
-
楽しめない
-
イライラする
-
外見や服装を気にしなくなる
-
死にたい・消えてしまいたいと思うようになる
<身体症状>
-
食欲がなくなる
-
眠れない
-
疲れやすくなる
-
やる気がでない
-
頭痛・吐き気
-
動悸
本人が気づくだけでなく、周囲から見てもわかるような症状が現れることもあります。
-
表情が暗い
-
涙もろくなった
-
遅刻や無断欠勤が増えた
-
身だしなみに気を使わなくなった
上記症状が見られたり、「おかしい」「いつもと違う」と感じたりしたら、サポートしてあげるといいかもしれません。[2]
うつ病になりやすい人の特徴
うつ病になりやすい人の特徴として、下記が挙げられます。
-
真面目
-
几帳面
-
責任感が強い
-
勤勉
-
凝り性
-
完璧主義
-
人に気を遣いすぎる
このような特徴がある人は柔軟に対応できなかったり、1人で抱え込んでしまったりしやすいです。
周りに相談できず1人で抱え込んでしまうので、ストレスをため込みうつ病になりやすくなってしまうのです。[3]
うつ(鬱)病には6種類が存在する!その名前とは?
実はうつ病には以下の6種類が存在します。
-
メランコリー型うつ病
-
非定型うつ病
-
季節性うつ病(冬季うつ病)
-
産後うつ
-
微笑みうつ病
-
気分変調症
それぞれどのようなうつ病なのか解説します。
うつの種類/メランコリー型うつ病
メランコリー型うつ病は典型的なうつ病のことを言います。
メランコリー型うつ病の原因や症状、診断、治療法について解説します。
メランコリー型うつ病:原因
メランコリー型うつ病になる原因はひとつだけでなく、環境要因と遺伝的要因など複数あると考えられています。
メランコリー型うつ病になる原因で最も大きいのが環境要因です。
環境要因とは家族や大切な人の死や、人間関係・家庭内トラブルなどを言います。
また、前述した「うつ病になりやすい人の特徴」を持っている人は、メランコリー型うつ病になりやすいです。
-
真面目
-
几帳面
-
責任感が強い
-
勤勉
-
凝り性
-
完璧主義
-
人に気を遣いすぎる
これらの特徴をもっている人は、1人で抱え込まずに周りに相談するように心がけましょう。
また、周囲にこういった特徴をもっている人がいる場合は、無理しすぎていないか気にかけてあげるのがいいでしょう。[4]
メランコリー型うつ病:症状
メランコリー型うつ病になると下記症状が現れます。[4]
-
良いことがあっても気分が晴れない
-
食欲低下、体重減少
-
早朝にいちばん気分が落ち込む
-
過度な罪悪感
-
抑うつ気分
-
自分を責める
こういった症状が現れ始めたら、医療機関を受診しましょう。
メランコリー型うつ病:診断
メランコリー型うつ病を診断するときは、アメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-5を使用することが多いです。
DSM-5の診断基準では、
- 抑うつ気分
- 興味・喜びの喪失
を含む5つ以上の症状があり、2週間以上ほとんど毎日続いている場合にうつ病と診断されます。(表1)[5]
表1:うつ病の診断基準
1 |
抑うつ気分 |
2 |
興味・喜びの喪失 |
3 |
食欲の減退または増加 |
4 |
睡眠障害(不眠または睡眠過多) |
5 |
精神運動の障害(強い焦燥 感・運動の制止) |
6 |
疲れやすさ・気力の減退 |
7 |
強い罪責感 |
8 |
思考力や集中力の低下 |
9 |
死への思い |
メランコリー型うつ病:治療
治療の基本は休養、薬物療法、精神療法の3つです。
メランコリー型うつ病の場合、薬物療法を中心としつつ精神療法を実施します。
<薬物療法>
薬物療法では抗うつ薬を中心に、症状に合わせて気分安定薬や抗精神病薬、睡眠薬を処方します。
薬を飲んですぐに効果がでるものではありません。そのため、薬物療法は継続することが大切です。
症状が良くなったからといって自己判断で中断したり、効果が感じられないから薬の量を増やしたりすることはやめましょう。[6]
<精神療法>
精神療法は再発しないように行動や思考を見直すために実施します。
精神療法の一般的な治療のひとつである認知行動療法を行うことが多い傾向にあります。
メランコリー型うつ病を引き起こす原因はさまざまです。再度同じ状況になったときに、悲観的にならず現実的に考えられるようにサポートするのが認知行動療法です。
精神療法では専門医だけが一方的に指示や処方するのではなく、患者の自主性をもとに一緒に治療を進めていくことが重要となります。[7]
メランコリー型うつ病の治療では休養もとても大切です。
メランコリー型うつ病になる人は、脳のエネルギーを使いすぎてしまう傾向にあります。使いすぎてしまった脳はしっかりやすめなければいけません。
原因となっている環境から離れたり、仕事量を減らしたりなどして脳をしっかり休めましょう。
うつの種類/非定型うつ病
非定型うつ病は20〜30代の女性に多いうつ病のひとつです。
新型うつ病、現代型うつ病と呼ばれることもあります。
メランコリー型うつ病とはまったく違う症状が現れるのが特徴です。
非定型うつ病の原因や症状、診断、治療法について解説します。
非定型うつ病:原因
非定型うつ病になる原因はわかっていませんが、生理的要因と環境要因、性格が関係していると考えられています。
<生理的要因>
うつ病と同様に、脳の神経伝達物質に異常があると言われています。
<環境要因>
生活リズムが乱れている人が多い傾向にあります。
しっかり睡眠がとれていなかったり運動不足だったりすると、脳の働きが鈍くなります。
また、非定型うつ病は他のうつ病に比べて、両親がうつ病またはうつ病の既往があることが多いです。
非定型うつ病の原因でもっとも影響を与えているのが性格だと言われています。
非定型うつ病になりやすい性格は下記です。[5]
-
他人の評価を気にして過ごしてきた
-
自己主張が得意でない
-
甘えるのが苦手
-
プライドが高い
-
他責思考
-
他人への依存性が高い
メランコリー型うつ病とは真逆に近い性格を持っている人がなりやすい特徴があります。
非定型うつ病:症状
非定型うつ病の症状は下記です。
-
気分の落ち込みに浮き沈みがある
-
他人にイライラする
-
夕方に気分が落ち込む
-
過食
-
寝ても寝たりない
-
楽しいことは楽しめる
非定型うつ病は、落ち込んでいないときには症状が出ず、楽しいことや興味のあることは楽しめるという特徴があるので、、うつ病に見られにくいです。
怠け者や甘え、わがままだと思われてしまうことが多いです。
しかし実際には、症状が軽いというわけではなく、心も体も苦しんでいます。[8]
非定型うつ病:診断
非定型うつ病の診断にもDSM-5を使用します。
非定型うつ病と診断されるには、
-
うつ病の診断基準を満たすこと
-
非定型の特徴を満たすこと(表2)
が必要になります。
表2:非定型の特徴 [9]
1 |
気分の反応性がある |
2 |
以下のうち2つ以上を認める ①体重増加・食欲増加 ②過眠 ③鉛様の麻痺 ④拒絶過敏性が社会的・職業的なデメリットになっている |
3 |
メランコリーの特徴や緊張病の特徴を認めない |
非定型うつ病:治療
非定型うつ病の治療は、精神療法を中心として薬物療法を実施します。
また、生活習慣の改善も行います。
<精神療法>
精神療法では、認知行動療法を実施します。
非定型うつ病になりやすい人は、他人の評価を気にしすぎる、他人のせいにする傾向にあります。
認知行動療法で、そういった思考や行動を見直していきます。
<薬物療法>
薬物療法では抗うつ薬を服用することが多いです。
抗うつ薬の他に、症状によって抗不安薬や抗精神病薬が処方される場合もあります。
<生活習慣改善>
非定型うつ病の原因のひとつに、生活習慣の乱れがあります。
また、症状に過眠や過食があります。
食べすぎたり寝すぎたりすることで、生活習慣が乱れ、より症状が悪化してしまいます。
悪化させないために、生活リズムを整えることが大切です。
寝る時間や起きる時間、運動する時間を決めるなどして生活習慣を整えていきましょう。[10]
うつの種類/季節型うつ病(冬季うつ病)
季節型うつ病(冬季うつ病)は、秋から冬にかけて発症し、春や夏になると軽快するうつ病です。
季節型うつ病(冬季うつ病)の原因や症状、診断、治療法について解説します。
季節型うつ病:原因
季節型うつ病の原因はわかっていませんが、日照不足や体内時計の乱れが関係していると言われています。
季節型うつ病:症状
冬季うつ病では下記症状が現れます。
-
過眠
-
過食(特に炭水化物を欲する)
-
体重増加
-
意欲低下
-
倦怠感
-
否定的になる
これらの症状は秋から冬にかけて出現し、春になるにつれて良くなっていきます。[11]
季節型うつ病:診断
季節型うつ病は、DSM-5で季節型の反復性のうつ病と診断されます。
診断基準は下記4つです。[12]
-
発症が1年のうちの特定の時期(冬)に起こる
-
1年のうち特定の時期(春)になると、症状が寛解する
-
直近2年間連続して発症しており、その期間は非季節性エピソードが起きていない
-
過去の季節性エピソード数が非季節性エピソード数よりも十分多い
季節型うつ病:治療
季節型うつ病の治療は高照度光療法と薬物療法を実施します。[13]
<高照度光療法>
季節型うつ病は日照不足が原因で発症すると考えられているので、高照度光療法という光を浴びる治療を実施します。
高照度光療法を受けることで、セロトニンが増えて脳の活性化やホルモンの分泌、体内リズムが整い回復します。
<薬物療法>
高照度光療法を実施して効果が不十分だった場合、薬物療法を実施します。
薬物療法では、抗うつ薬を服用することが多いです。
季節型うつ病は認知度が低いことと、季節が過ぎれば回復することから治療をしない人が多いです。
毎年同じ季節に同じような症状に悩むようであれば医療機関を受診しましょう。
うつの種類/産後うつ
産後うつは、産後3〜6ヶ月ごろに現れることが多いうつ状態のことです。
日本人の3割に症状があらわれると言われています。
産後うつの原因や症状、診断、治療法について解説します。
産後うつ:原因
産後うつになる原因として下記が関係しています。
-
過去に精神疾患にかかったことがある
-
パートナーからのサポート不足
-
妊娠中に不安やうつがあった
-
家庭内暴力
-
慣れない育児による睡眠不足やストレス
産後うつ:症状
産後うつになると下記症状が現れます。
-
疲れやすい
-
イライラする
-
悲観的になる
-
不安になることが多い
-
涙が止まらない
-
食欲低下
-
眠れない
また、「子育てに自信がもてない」「赤ちゃんが可愛くない」「母親失格だ」などの感情が現れ、自分を責めてしまうことも少なくありません。
どんどん自分を責めてしまうことで、自殺念慮につながりかねません。[14]
症状が悪化する前に、誰かに相談したり協力してもらったりして、自分の体を守りましょう。
産後うつ:診断
産後うつのスクリーニング検査として「EPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)」を産後の健診(産婦健康診査事業)で実施します。
EPDSで30点中9点以上となったら、うつ病の疑いがあるとされます(()内の数が点数となります)。
あくまでスクリーニング検査なので、9点以上だったからうつ病だと自分で判断してはいけません。
精神科を受診し診断してもらい、適切な治療をしましょう。[15]
“
ご出産おめでとうございます。ご出産から今までのあいだにどのようにお感じになったかをお知らせ ください。今日だけでなく、過去7日間にあなたが感じたことに最も近い答えに○をつけてください。 必ず 10 項目全部に答えてください。 1)笑うことができたし、物事のおかしい面もわかった。 (0) いつもと同様にできた。 (1) あまりできなかった。 (2) 明らかにできなかった。 (3) まったくできなかった。 2)物事を楽しみにして待った。 (0) いつもと同様にできた。 (1) あまりできなかった。 (2) 明らかにできなかった。 (3) ほとんどできなかった。 3)物事が悪くいった時、自分を不必要に責めた。 (3) はい、たいていそうだった。 (2) はい、時々そうだった。 (1) いいえ、あまり度々ではない。 (0) いいえ、そうではなかった。 4)はっきりした理由もないのに不安になったり、心配した。 (0) いいえ、そうではなかった。 (1) ほとんどそうではなかった。 (2) はい、時々あった。 (3) はい、しょっちゅうあった。 5)はっきりした理由もないのに恐怖に襲われた。 (3) はい、しょっちゅうあった。 (2) はい、時々あった。 (1) いいえ、めったになかった。 (0) いいえ、まったくなかった。 6)することがたくさんあって大変だった。 (3) はい、たいてい対処できなかった。 (2) はい、いつものようにはうまく対処しなかった。 (1) いいえ、たいていうまく対処した。 (0) いいえ、普段通りに対処した。 7)不幸せなので、眠りにくかった。 (3) はい、ほとんどいつもそうだった。 (2) はい、ときどきそうだった。 (1) いいえ、あまり度々ではなかった。 (0) いいえ、まったくなかった。 8)悲しくなったり、惨めになった。 (3) はい、たいていそうだった。 (2) はい、かなりしばしばそうだった。 (1) いいえ、あまり度々ではなかった。 (0) いいえ、まったくそうではなかった。 9)不幸せなので、泣けてきた。 (3) はい、たいていそうだった。 (2) はい、かなりしばしばそうだった。 (1) ほんの時々あった。 (0) いいえ、まったくそうではなかった。 10)自分自身を傷つけるという考えが浮かんできた。 (3) はい、かなりしばしばそうだった。 (2) 時々そうだった。 (1) めったになかった。 (0) まったくなかった。 |
”(引用:母と子のメンタルヘルスケア(日本産婦人科医会))
産後うつ:治療
産後うつの治療では、薬物療法のほかにまわりのサポートが重要になります。
薬物療法では、抗うつ薬などの薬が処方されます。授乳中などで薬の影響を心配される方は、医師から効果やリスクの説明をしっかり受けたうえで、服用するか判断しましょう。
産後うつは、サポート不足によって1人で不安やストレスを抱え込んでしまうことで発症します。
そのため、治療では周囲のサポートが必要不可欠です。
-
睡眠や休息がしっかりとれるように、育児を交代で行う
-
悩みや不安を誰かに相談する
-
住んでいる地域のサービスを活用する
などの方法で、まわりと協力しながら育児をしていきましょう。[16]
うつの種類/微笑みうつ病
微笑みうつ病とは、うつ状態なのにも関わらず、人前では明るい表情を見せる状態のことです。
微笑みうつ病は正式名称ではありません。笑顔を見せることから微笑みうつ病と呼ばれています。
微笑みうつ病の原因や症状、診断、治療法を解説します。[17]
微笑みうつ病:原因
微笑みうつ病の原因は
-
ストレス
-
遺伝的要因
-
環境要因
などが挙げられます。
また、うつ病になりやすい人と微笑みうつ病になりやすい人は同じ特徴を有しています。
-
真面目
-
几帳面
-
責任感が強い
-
勤勉
-
凝り性
-
完璧主義
-
人に気を遣いすぎる
微笑みうつ病:症状
微笑みうつ病では下記症状が現れます。
-
気分が落ち込む
-
物事に興味がなくなる
-
疲れやすい
-
自分に価値がないと思う
微笑みうつ病は、人前では笑顔で明るく振舞うのでうつ病だと思われにくいです。
微笑みうつ病:診断
微笑みうつ病は正式名称ではないので、診断基準はありません。
しかし、うつ病の診断基準を使用すると、当てはまることが多々あります。
微笑みうつ病:治療
微笑みうつ病ではうつ病と同様、薬物療法と精神療法を実施します。
微笑みうつ病は、本人が症状を隠していたり、うつ病に見られなかったりすることから、発見が遅れることがあります。
うつ症状が進行してしまうと、命に関わる状態につながりかねません。
少しでも異変を感じたら医療機関を受診しましょう。
うつの種類/気分変調症
気分変調症は持続性抑うつ障害といい、抑うつ気分が2年以上続く病気です。
気分変調症の原因や症状、診断、治療法について解説します。[18]
気分変調症:原因
気分変調症になる原因は不明です。
しかし、遺伝的・環境的要因だけでなく若い人がなりやすいということから、生活環境が影響している可能性もあると言われています。
気分変調症:症状
気分変調症では下記症状が現れます。
-
悲観的
-
受動的
-
無気力
-
ものごとに興味がわかなくなる
-
自分や他人を過度に批判する
-
不平不満が多い
気分変調症の人は、基礎疾患として不安症や境界性パーソナリティー障害をもっている場合が多いです。
気分変調症:診断
気分変調症の診断基準は下記になります。[19]
ほぼ1日中抑うつ気分があり、それが2年以上続いている状態で下記項目を2つ以上満たしている。
|
気分変調症:治療
気分変調症の治療では、薬物療法と精神療法を実施します。
抑うつ気分が長期間続く病気なので、精神療法は必須です。
<薬物療法>
うつ病の治療と同様に、抗うつ薬を服用します。症状に応じて、気分安定薬や抗精神病薬が処方されます。
<精神療法>
気分変調症は興味が喪失したり、自分を責めたりする状態が長期間続きます。
長期間続くことによって、どんどん否定的な考えになってしまうことも少なくありません。
そのような認知の歪みを修正するために、認知行動療法を行います。
うつの薬 種類はどれくらいある?
うつ病の治療には主に抗うつ薬が使用されますが、いくつか種類があります。
どんな種類があるか説明します。(表3)
表3:抗うつ剤の種類
古い抗うつ剤 |
三環系抗うつ剤 |
四環系抗うつ剤 | |
新しい抗うつ剤 |
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) |
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI) | |
ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬 (NaSSA) |
新しい抗うつ剤は古い抗うつ剤に比べて、副作用のリスクが低く、安全に用いることができます。
それぞれ特徴があるので、患者さんの状態に合わせてどの薬を使用するか判断します。[20]
うつ病と間違いやすい病気は?
うつ病と間違えやすい病気に双極性障害という病気があります。
双極性障害とは?
双極性障害とは、躁状態とうつ状態を繰り返す病気のことです。
昔は「躁うつ病」と呼ばれており、うつ病と勘違いされることがありました。
躁状態は自身では気づきにくいです。うつ状態になったときに初めて自覚し受診するので、うつ病と診断されてしまうことが多い傾向にあります。
しかし、双極性障害とうつ病は治療法がまったく異なります。
そのため、うつ病と診断され治療を開始してしまうと悪化してしまうかもしれません。
うつ病の治療で使用する抗うつ薬を服用すると、急に躁状態が現れ出すことがあるので注意が必要です。
双極性障害の治療では、薬物療法と心理社会的治療を実施します。
<薬物療法>
薬物療法では気分安定薬と非定型抗精神病薬が処方されます。
薬物療法で大事なことは、継続して飲み続けることです。飲み続けることで、症状が安定してコントロールできるようになれば社会復帰につながります。
<心理社会的治療>
心理社会的治療は薬物療法と併用して行います。
カウンセリングとは異なり、自分の病気を知り、受け入れてコントロールできるよう援助するものです。
双極性障害は、治療をしないと再発を繰り返す病気です。再発する度に、発症までの間隔が短縮されます。
どんどん短縮されていくと、1年のうちに4回以上躁状態とうつ状態を繰り返す「急速交代化(ラピッドサイクル)」になってしまうかもしれません。
急速交代化になると調子のよい時期がなくなります。
再発を繰り返してしまうと、社会的地位や財産、家族を失いかねません。
そうならないために、治療を続けコントロールできるようになりましょう。[21]
抑うつと躁うつの違いは?
抑うつと躁うつでは、現れる症状は異なります。
抑うつと躁うつでは下記のような違いがあります。(表5)[21]
表5:抑うつと躁うつの違い
躁うつ |
抑うつ |
睡眠時間が少なくても平気 |
眠れない |
寝なくても活動的 |
疲れやすくなる |
話し続ける |
やる気がでない |
自信に満ちあふれている |
自分を責める |
買い物やギャンブルに膨大なお金をつぎ込む |
好きだったことへの興味が薄れる |
Q&A
抑うつとうつの違いは何ですか?
抑うつとうつに明確な違いはありません。
どちらも気分が落ち込んだり、好きなことに興味がわかなくなったりする状態のことです。
うつ病は波がある?
典型的なうつ病は、早朝にいちばん気分が落ち込み夕方になるにつれて少し回復するなど、1日の中で波があります。
反対に、非定型うつ病は夕方にいちばん気分が落ち込むのが特徴です。
また、うつ病は治療期間で良くなったり、悪くなったりすることがあります。
良くなったからといって自己判断で薬をやめたり、悪くなったから薬の量を増やしたりするのは危険です。
医師の指示に従い、十分に話し合いながら継続して治療をしていきましょう。[4]
うつ病の一番の原因は何ですか?
うつ病になる原因はひとつではなく複数考えられるので、一番の原因を確定することは難しいです。
うつ病になる原因として
-
環境要因
-
性格
-
遺伝的要因
-
慢性的な身体疾患
が挙げられます。
最もきっかけとなりやすいのは、環境要因だと考えられています。
大切な人の死や家庭内トラブル、人間関係、職場環境などによって大きなストレスを抱え込んでしまうことでうつ病になりやすくなります。
微笑み鬱ってなに?
微笑み鬱とは、うつ状態なのにも関わらず、人前では明るい表情を見せる状態のことです。
微笑み鬱は正式名称ではありません。明るい表情を見せることから微笑みうつ病と呼ばれています。
微笑み鬱になると以下のような症状が現れます。
-
気分が落ち込む
-
物事に興味がなくなる
-
疲れやすい
-
自分に価値がないと思う
微笑み鬱は、人前では笑顔で明るく振舞うのでうつ病だと思われにくいです。
上記症状が現れたら、我慢せずに医療機関を受診しましょう。
まとめ
うつ病には下記種類があり、それぞれの原因や症状、診断、治療法について解説しました。
-
メランコリー型うつ病
-
非定型うつ病
-
季節性うつ病
-
産後うつ
-
微笑みうつ病
-
気分変調症
加えて、うつ病と間違えやすい病気である双極性障害についても解説しました。
うつ病や双極性障害になることは珍しいことではありません。
「まわりは普通にできているから」
「うつ病になるのは弱いから」
といった考えは捨てて、つらかったりしんどくなったら医療機関を受診しましょう。
うつ病も双極性障害も、正しく治療を続けていけば社会復帰ができる病気です。
逆に治療をしないと、命に関わることになりかねません。
1人で抱え込まず、周りに頼りながら生活していきましょう。
参考文献
[6]うつ病の症状パターンと治療 体重増加と減少、過眠と早朝覚醒など
[8]品川メンタルクリニック|非定型うつとは?甘えではない非定型うつ病の原因と症状
[11]厚生労働省|こころの耳|業務要因よりも季節性の要因により再燃するうつ病の事例
[13]日本を元気にする光療法総合サイト|冬季うつ病 (季節性うつ病)