うつ病とは?
うつ病とは、気分の落ち込みや無気力感が生じる精神症状と、不眠や疲れやすいといった身体症状が出現する病気で「気分障害」の一つです。
発症の原因ははっきりとはわかっておらず「ストレス」や「脳内の神経伝達物質のアンバランス」によっておこるともいわれています。
近年では、社会人だけではなく中学生や高校生などの学生もうつ病と診断されるケースが増加しており、日本の「うつ病の生涯有病率」は約6%です。
うつ病は「誰でもかかりうる可能性のある病気」であることから、うつ病に対する「理解」と「治療やうつ病患者との関わり」を知っておくことはとても大切です。
うつ病の症状
うつ病は種類や程度によって症状が異なりますが「うつ病エピソード」と呼ばれるうつ病の診断基準となりうる症状があります。
うつ病の症状として、身体的症状では「易疲労感」や「食欲不振」が、精神的症状では「日内気分変動」や「興味・喜びの喪失」といった症状が出現する場合があります。
また、日常生活の変化として昼夜逆転も起こりやすいです。
うつ病の主な症状は以下のとおりです。
身体的症状 |
|
精神的症状 |
|
うつ病の症状は個人差が大きく「必ずこの症状が出現する」と断言することが非常に難しいです。
そのため、体調の不調を感じた場合はすぐに心療内科クリニックや精神科病院などお近くの医療機関を受診してください。
また、うつ病の重症度を知りたい方は厚生労働省のホームページより『簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)』を用いてセルフチェックをすることができます。
軽度うつ病の症状
軽度うつ病は、うつ病と比べると比較的症状が軽いものをいいます。
うつ病と同様、睡眠障害や意欲の低下、日内気分変動などの症状が出現しますが、日常生活や仕事に大きな支障をきたすことはありません。
診断の基準は『ICD-10うつ病エピソード』を元に状態を評価します。
通常、軽症と判断される基準は、うつ病の典型的な症状である以下3つの症状が少なくとも2つ以上あり、下記に示した3つの症状とは別にうつ病エピソード(症状)が2つ以上ある場合に「軽症」と軽症と判断されます。
-
抑うつ気分
-
興味や喜びの喪失
-
易疲労性
軽症では、日常生活や仕事に影響がない程度の「うつ病エピソード」が2週間程度持続した状態であるため、ほとんどの場合、仕事や社会活動を続けることが可能です。
中〜重度うつ病の症状
中〜重度では、症状が著しく「ほとんど一日中」「ほぼ毎日」うつ病の症状が出現し、日常生活や仕事に大きな影響を与える場合をいいます。
中等症うつ病の診断基準はうつ病の古典的な3つの症状のうち少なくとも2つ以上あり、さらに古典的な症状とは別に他のうつ病の症状が3つ以上が出現している状態です。
重等度になるとさらに症状が深刻で、自尊心の喪失や自殺の危険性が高くなります。
日常生活や社会生活において影響が大きく、活動を続けることが大変困難な状況です。
参考:ハートクリニック
うつ病の主な治療法
うつ病の治療は軽度うつ病から中〜重度うつ病までの治し方はそれぞれ異なり、個々に合わせた治療がおこなわれます。
うつ病の主な治療方法は以下の3つです。
-
薬物療法
-
休養
-
精神療法
うつ病は「病気」であるため医師の診察のもと、患者の状態に合わせて適切な治療をおこなっていきます。
自力で治そうとするとかえってうつ病を悪化させてしまう恐れもあるため、自力で治そうとせず、必ず医師の治療を受けるようにしましょう。
うつ病を疑った場合は、心療内科クリニックや精神科病院に受診してください。
状態によっては、入院をして治療をおこなうケースもあります。
薬物療法
薬物療法は、うつ病の治療に多く用いられる治療法の一つです。
医師が診察をした後、状態に合わせて薬が処方されます。
うつ病の治療に用いられる「抗うつ薬」にはいくつか種類があり、薬によって脳の物質を補うことで、うつ病の症状を改善させるよう働きかけます。
抗うつ薬はいくつか種類があり働きも異なります。うつ病に使用される主な薬は以下のとおりです。
種類 |
作用・効果 |
薬品名 |
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬) |
セロトニンを増やすことで、セロトニン不足による不安や落ち込み等を改善する。 |
|
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬) |
セロトニン、ノルアドレナリンに作用。 気力や意欲低下に効果的。 |
|
NaSS(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動薬) |
セロトニン・ノルアドレナリンの分泌を促進し、セロトニンの働きを改善。 不安やイライラ、不眠等を改善する。 |
|
三環系抗うつ薬 |
セロトニンやノルアドレナリンの働きを改善。 意欲を高め、憂鬱な気分を改善 |
|
四環系抗うつ薬 |
ノルアドレナリンの働きを改善。 不安や不眠、憂鬱な気分を改善 |
|
薬物療法は、即効性があるわけではなく、治療を開始してから約2〜4週間かけて徐々に効果が認められます。
そのため、焦らずしっかりと飲み続けることが大切です。
参考:「日経メディカル」
休養
うつ病の治し方で自力で自力で行えることは限られます。それは休養です。「休養」することが何よりも重要であると言われています。
うつ病の治療において「休養」することがなによりも重要です。
うつ病の原因となったストレスや環境から距離をおき、ゆっくりカラダと心を休ませる必要があります。
しかし、休養をとることに抵抗を覚える人も多く「周囲から怠けていると思われているのではないか」と考えてしまい、自宅にいても十分に心が休まらない場合も多いです。
うつ病の治療ではカラダと心の休養が大切であるため、場合によっては入院をして治療を行うこともあります。
当人が安心してゆっくり休養できるように、周囲の理解やサポートも大切です。
精神療法
精神療法には「認知行動療法」と「対人関係療法」の2種類があります。
うつ病の治療において、薬物治療と休養は主に症状に対する「対症療法」ですが、精神療法は「うつ病を再燃・再発させない」ための治療です。
認知行動療法は、カウンセリングや面接をおこないながら、認知や行動の悪循環を見つけだし「否定的な考え方」を改善していくことで心のストレスを軽減していきます。
また、対人療法は「対人関係に対処する」ことで症状の改善を目指す治療です。
「認知行動療法」「対人関係療法」などの精神療法をおこなうことで、ストレスや対人関係の捉え方、性格の傾向など「思考・行動パターン」を見直します。
医師の治療に頼らず自力で治す方法は?
うつ病は医師の診察のもと、適切な治療を受けてください。
医師の診察を受けずに自力で治そうとすると病状が悪化したり、医師の治療を受けた場合と比べて長期にわたりうつ病でツラい思いをする可能性があります。
うつ病の治療は薬物療法をはじめ、休養や精神療法など患者に合わせた様々な治療方法があります。
たとえ「症状が軽いから大丈夫」と思っていても、自力で治そうとしてはいけません。悪化させないためにも医師の診察を受け、適切な治療を受けましょう。
うつ病の人に対する心がけたい声かけや接し方
うつ病は回復までに時間のかかる病気です。
うつ病の人に「かけていい言葉」と「かけない方がいい言葉」があります。
彼氏彼女など恋人関係にある人や父母など家族に対してかける言葉や接し方は、それぞれの立場や役割に配慮することが必要となります。
周囲の人が「うつ病」を理解してサポートをすることで、うつ病の人の不安定な気持ちを軽くすることができるでしょう。
うつ病の人への接し方
うつ病の人への接し方として、大切なのは「そっと見守り、寄り添う」ことです。
家族や彼氏彼女など身近な大切な人がうつ病になってしまったら、そっと見守りそばにいてあげてください。
心配する気持ちもあると思いますが、心配しすぎていろいろしようとすると逆に負担をかけてしまう恐れがあります。
大切な人が抑うつ状態であったり、気分が落ち込んでいる状態を見守るだけでは、もどかしい気持ちになるかもしれません。
しかし「自分は味方だよ」という気持ちを伝え、時には見守るという選択も必要です。
うつ病の人への声かけ
うつ病の人は不安や焦り、自己肯定感の低下などの精神的な症状があります。
そのため、相手を尊重する言葉やねぎらいの言葉をかけると良いでしょう。
うつ病の人に言ってほしい言葉の例として以下3つがあります。
-
いつでも話を聴くよ
-
自分のペースで大丈夫だよ
-
大変だったね
悲観的になっているうつ病の人への声かけは「あなたの味方である」という旨を伝えることが大切です。
うつ病の人に対する気をつけたい接し方や声かけ
実はうつ病の人にやってはいけないこともあります。
うつ病の人を励ましたいという気持ちからかけた言葉や接し方が、相手にとって負担になってしまうのです。
心配する気持ちや励ましたいと思う気持ちからかけた言葉や接し方が、逆にうつ病の人の負担を与えストレスとなる場合があるため、うつ病の人に負担をかけないよう気をつける必要があります。
うつ病の人への接し方
うつ病の人を心配するあまり過度に特別扱いをしてしまうと、うつ病の人は「相手に負担をかけている」と思ってしまいストレスを与えてしまう可能性があります。
そのため、心配をして過度にお世話をしたり声をかけたりすることは控えてください。うつ病の人への接し方には、時にほっとくという選択肢も必要なのです。
まずは「そっと見守る」ことを心がけましょう。
うつ病の人への声かけ
うつ病の人に対する声かけや接し方の中で、禁忌・禁句と言われるほどかけてはいけない言葉があります。
やってはいけない声かけの例として以下の3つです。
-
頑張って
-
甘えている
-
本当に鬱なの
上記の言葉かけにより、うつ病の人は「理解してもらえない」と孤独を感じたり、プレッシャーを感じたりしてストレスを感じる可能性があります。
うつ病の人に対しては激励やうつ病を疑う声かけはせず、気持ちに寄り添う声かけをすると良いでしょう。
うつ病の治療期間はどのくらい?
うつ病の治療期間は、症状や個人差があるものの急性期、回復期、再発予防期間を含めると約3年前後といわれています。
急性期
急性期は、うつ病と診断をされてから約1ヶ月〜3ヶ月頃までを指す場合が多いです。
回復までの期間は個人差があるため、人によっては3ヶ月以上の時間を要することがありますが、治療期間が長いからといって焦る必要はありません。
医師の診察のもと十分な休息をとり、できるだけストレスの原因から距離を置いて過ごしましょう。
急性期では十分な休息と、ストレスから距離を置くだけで、薬物療法をしなくても回復するケースもあります。
回復期
うつ病と診断され1〜3ヶ月ほど治療をおこない、急性期を脱した約4ヶ月〜6ヶ月ほどの期間を回復期と呼びます。
回復期は気分や体調がいい日と悪い日があり、症状に波があります。
調子が良いからといって薬を自己判断で止めてしまうと、すぐに悪化してしまうことがあるため医師の指示の元、薬はきちんと飲むようにしましょう。
また、回復期は自殺する人が多い期間でもあるため「元気になった」からと油断することはしないようにしましょう。
再発予防期間
うつ病の治療をはじめて1年〜2、3年の期間を再発予防期間といいます。
回復期を脱し、もとの日常生活や社会生活を送る人も増えますが、まだ安心できません。
うつ病は再発しやすい病気であるため、いい状態を継続するために十分な休息と薬物療法を続ける必要があります。
しかし、十分に管理をしていても再発することがあるため、再発時に現れる症状が出現した場合は無理をしないこと、家族や周囲からみてうつ病を疑われる症状が出現した際は必ず医師に相談してください。
うつ病を早く治す方法とは?
心療内科クリニックや精神科病院など専門の医師の診察のもと、適切な治療を受けることがうつ病を早く治すうえで最も重要です。
うつ病は治るまでに時間のかかる病気であり、十分な休養と薬物療法・認知行動療法といった患者に合った治療をおこなうことでゆっくりと回復にしていきます。
うつ病を一発で治す方法はないですが、うつ病を早く治す方法として薬物療法や休養と並行してよく寝ること、無理のない範囲で適度に運動することも良いでしょう。
よくある質問Q&A
ここではうつ病に関するよくある質問を以下の4つにまとめました。
-
うつ病はどうしたら治りますか?
-
うつっぽくなった時の対処方法は?
-
うつ病の悪化のサインは?
-
うつ病はどのくらいで回復しますか?
うつ病を理解することは治療するうえでとても重要です。
うつ病はどうしたら治りますか?
うつ病の治療は医師の診察のもと、薬物療法や休養、精神療法を主として治療がおこなわれます。
また、睡眠を十分にとることや無理をしない程度の運動、生活リズムを整えることも大切です。
うつ病は、周りのサポートも重要となるため、ストレスから距離をおける環境づくりに協力してもらいましょう。
うつっぽくなった時の対処方法は?
うつっぽいと感じた場合は以下の4つを実施することで改善する場合があります。
-
十分な休息・睡眠をとる
-
適度に運動する
-
一人で悩まない
-
バランスの良い食事をとる
しかし、症状の程度や個人差があるため、必ず改善するとはいえません。
うつ病を疑う症状が出現した場合は、すぐに心療内科クリニックや精神科病院に受診することをお勧めします。
うつ病の悪化のサインは?
うつ病の悪化のサインは個人差がとても大きく一概に特定の症状をいうことは難しいですが、現在自覚している身体症状や精神症状とは他の症状が出現したり、悪化した場合はうつ病が悪化したと考えて良いでしょう。
うつ病が悪化した場合は、必ず医師に相談してください。
うつ病はどのくらいで回復しますか?
うつ病の回復は個人差があるものの平均して1年〜3年程度といわれています。
うつ病は、うつ病を発症した「急性期」から「回復期」「再発予防期間」という大きく分けて3つの期間を経てゆっくりと回復に向かうため、回復までに長期間を要します。
回復期には、体調のいい日と悪い日の波があるため焦らずに治療していくことが大切です。
まとめ
うつ病は気分障害の一つであり、心の病気です。
そのため、うつ病を自力で治そうとせず、心療内科クリニックや精神科病院を受診して医師の適切な治療を受けることが重要です。
うつ病の主な治療法は3つ(薬物療法、休養、精神療法)あり、うつ病の程度や当人の状態により治療方針が決まります。
うつ病の人は、精神的にとても不安定な状態であるため、うつ病の人に対して過度な心配をしたり、励ます言葉をかけると逆に負担やストレスを感じる場合があります。
うつ病の人への対応として基本的に「そっと見守り、寄り添う」ことがなによりも重要です。
回復までに約1年〜3年の期間を要しますが、適切な治療を受けることで少しずつ回復に向かう病気であるため、周囲の人の理解や協力を得ながらうつ病を治療していきましょう。