うつ病とは?原因は?[1]
うつ病の原因はまだはっきりとは分かっていませんが、精神的または身体的ストレスが重なることが原因のひとつと考えられています。
精神的な症状としては、気分が強く落ち込む、意欲がなくなるなどが、身体的な症状としては、倦怠感や疲労感、食欲不振などが現れることがあります。
しかし、誰にでも憂うつな気分になったり、食欲がなくなるほど気分が落ち込んだりすることがあるでしょう。
落ち込んだ状態がどの程度か、またはどのくらいの期間それが続くかが憂うつ感とうつ病を区別するポイントになります。
心身の不調が2週間以上続いている場合や、仕事や生活に支障が出ている場合は、心療内科や精神科の受診を検討することをおすすめします。
早期に治療を開始することで治療効果も高くなるといわれていますので、早めに専門機関に相談したり休養をとったりするようにしましょう。
うつ病の治療について[1]、[2]
うつ病の治療について、
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休養
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薬物療法
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精神療法
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その他
に分けて詳しく解説します。
①休養
うつ病になりやすい人の性格の傾向として、責任感が強く真面目な人が多く、休んだり環境調整をしたりすることで周囲の人や職場、学校などに迷惑をかけてしまうのではないかと難色を示すことが多いようです。
しかしうつ病の治療において、休養は非常に重要です。
家庭や職場、学校で受けるストレスを軽減できるように、主治医に相談しつつ周りの方と協力して環境調整をしましょう。
②薬物療法
休養や環境調整、カウンセリングなどを行っても、再発・再燃をしてしまうこともあり、それらの治療とあわせて薬物治療が行われます。
現在抗うつ薬としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)、三環系抗うつ薬、四環形抗うつ薬などがありますが、その他にも不眠や強い不安感などの症状があればその症状にあわせて、抗不安薬や安定剤、睡眠導入剤などの薬が処方される場合もあります。
うつ病の治療薬は勝手に服用をやめたり、急に中断したりすると離脱症状といわれる症状があらわれることもあるため、主治医の指示通り服用するようにしましょう。
③精神療法
精神療法にはさまざまな種類がありますが、一般的なものとしては、認知行動療法と対人関係療法があります。
それぞれの治療法についてもう少し詳しく説明します。
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認知行動療法
ある出来事について、うつ病の人が陥りがちなネガティブな考え方や物事のとらえ方などを見直したり、考えの幅を広げたりすることで、うつ状態を回避する方法を学ぶ治療法です。 -
対人関係療法
うつ病を引き起こす要因となった対人関係の問題を解消することで、ストレスを軽減させる目的で行われます。対人関係が改善されることで、周囲から回復に向けたサポートが受けやすくなるメリットもあります。
④その他の治療方法
心理カウンセリングや、再発予防を目的としたリワークプログラムがあります。
また、ウォーキングやジョギングなどの運動をする運動療法や、2500ルクス以上の明るい光を1日1〜2時間程度照射する高照度光療法などがあります。
うつ病で受診するタイミングは?
2週間以上憂うつな気分が続く、集中力が落ちた、眠れない、早く目覚めてしまう、食欲がないなどの症状が続くようであれば医療機関を受診することを検討しましょう。
うつ病の特徴について[3]
うつ病の症状は様々あり、抑うつ気分や、意欲の低下など精神的な症状、倦怠感や不眠などの身体的な症状などがあります。
それぞれの症状がどのようなものなのか説明します。
1)抑うつ気分
気分が落ち込む、何もする気が起きない、憂うつな気分が続くなどの症状で、言動や表情から周囲が異変に気付く場合があります。
抑うつ気分は、朝方は気分が最も落ち込み、午後から夕方にかけて症状が軽くなる「日内変動」というものが見られることがあります。
また「仮面うつ病」といって、一見元気な様子でも、下痢や胃の痛み、頭痛など身体症状が目立つうつ病もあるため注意が必要です。
責任感が強く、他人に弱音を吐けない、元気に振る舞わなければいけないと考える人でこういった症状が見られることがあります。
2) 意欲や興味の低下
物事への興味や関心がなくなる状態で、この状態になると生活に張りがなくなります。
これまで楽しかったはずの物事に対しての関心が著しく低下してしまい、人と話すことが億劫になったり、活気なくだらだらと過ごすことが多くなったりして、外出の頻度が顕著に減っていきます。
3) 食欲の低下・過食
食欲がなく何を食べてもおいしくないと感じたり、食べることが面倒に感じたりすることで、体重が減ります。
また反対に、過食になり体重が増加したり、甘いものばかり食べたりすることもあります。
4) 睡眠障害
寝つきが悪い入眠困難や、夜中に何度も目が覚める中途覚醒、予定より早く目が覚めてそのあと眠れない 早朝覚醒などの症状があり、特に早朝覚醒はうつ病に特徴的であるといわれています。
また反対に、過眠の症状が見られることもあります。
5) 思考抑制、集中力の低下
不安や焦りを感じて落ち着かず、思うように集中して取り組めないなどの症状です。
また、集中力が低下することで車の運転が怖くなったり、決断力が大きく低下したりします。
少しのことでも考え込んでしまう傾向があり、仕事に支障をきたしてしまうこともあります。
6)不安や焦燥感、イライラ
不安や焦燥感、イライラはうつ病だけにみられるわけではありませんが、ほとんどのうつ病に合併するとても重要な症状です。
また、お年寄りでは焦燥感が強いタイプのうつ病が多い傾向にあります。
7) 自尊心の喪失
特に理由もなく過剰に自分を責めたり、些細なことを思い出してはくよくよ悩んでしまったりすることがあります。
また、自分は必要とされていない人間だ、愛されていない人間だと思い込む傾向があります。[4]
8) 自殺願望
生きていることがつらく、死んでしまいたいと考えてしまう症状です。自殺願望が非常に強いときは、入院して経過を観察することもあります。
うつ病の治療薬について/抗うつ薬のそれぞれの効果について説明 [5]
現在うつ病に使われている治療薬は、大きく分けて6つに分類され、開発された順に三環系、四環系、SSRI、SNRI、NaSSA、S‐RIMとなっています。
新しいものほど、作用してほしい場所に選択的に作用するため、治療効果が高く副作用も少なくなります。
しかし、新しければいいというわけではなく、新しいほど薬の値段も上がりますし、効果には個人差があるため、三環系、四環系のほうがよく効くという場合もあるようです。
軽症あるいは中等症のうつ病に対して第一選択薬となっているのはSSRI、SNRIですが、効果が現れるまでには少なくとも2週間はかかるとされているので、その間の不安感や焦燥感に対して抗不安薬を併用することもあります。
ある程度継続しても効果が見られない場合や十分でない場合は、増量したり、別の抗うつ薬に変更することが多いです。
①SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
脳内の神経伝達物質であるセロトニンが低下すると、ドパミン・ノルアドレナリンのコントロールが不安定になり、気分が落ち込んだり不安になったりすることでうつ病やパニック障害などの精神症状を引き起こすといわれています。
SSRIは、一度放出されたセロトニンが細胞内に再び取り込まれるのを阻害することで、脳内のセロトニン濃度を増やし、神経伝達をスムーズにして抗うつ作用および抗不安作用を示します。
SSRIに分類される主な薬
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フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)
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パロキセチン(パキシル)
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セルトラリン(ジェイゾロフト)
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エスシタロプラム(レクサプロ)
②SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
SSRIは主にセロトニンだけを増加させるのに対して、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)は、セロトニンだけでなくノルアドレナリンも増加させる薬です。
ノルアドレナリンは気力や意欲を制御している成分のため、やる気が出ない、倦怠感が強いという方に効果的です。
抑うつ感よりも身体症状が目立つ方に、SNRIの使用が推奨されています。
SNRIに分類される主な薬
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ミルナシプラン(トレドミン)
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デュロキセチン(サインバルタ)
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ベンラファキシン(イフェクサー)
③NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
SSRIやSNRIとは異なる作用機序でセロトニンとノルアドレナリンの放出を促進させる比較的新しい抗うつ薬です。
一般的に、軽症から中等症のうつ病ではSSRIやSNRIが使用されますが、ほとんどの抗うつ薬は効果が現れるまでに、2〜3週間程度期間を要します。
これに対してNaSSAは比較的早く効果を発揮する場合があります。
またNaSSAは睡眠の質を改善したり、食欲を増進する作用もあるため、不眠や食欲低下を伴ううつ病では有効な選択肢です。
NaSSAに分類される主な薬
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ミルタザピン(リフレックス、レメロン)
④三環系抗うつ薬
古くから抗うつ薬として用いられてきた薬で、現在はSSRIやSNRIに反応しない重症例や効果不十分な例で使用されます。
セロトニンとノルアドレナリンの再取り込み阻害作用がありますが、それ以外の神経伝達物質が受容体と結合する働きも阻害してしまうため、抗コリン作用による口の渇きや便秘、抗ヒスタミン作用による眠気などの副作用が強い薬です。
三環系抗うつ薬に分類される主な薬
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アモキサピン(アモキサン)
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ノルトリプチリン(ノリトレン)
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アミトリプチリン(トリプタノール)
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トリミプラミン(スルモンチール)
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イミプラミン(イミドール、トフラニール)
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クロミプラミン(アナフラニール)
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ドスレピン(プロチアデン)
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ロフェプラミン(アンプリット)
⑤四環系抗うつ薬
三環系抗うつ薬に続いて開発された薬です。
うつ病の症状を改善する効果は三環系よりも弱まったのですが、その分副作用の発現が三環系よりも抑えられています。
四環系抗うつ薬に分類される主な薬
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マプロチリン(ルジオミール)
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セチプチリン(テシプール)
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ミアンセリン(テトラミド)
⑥S‐RIM
日本では2019年から発売された比較的新しい薬で、SSRIのようにセロトニン受容体を調節するほか、ノルアドレナリンやドパミン、アセチルコリンやヒスタミンなどのさまざまな受容体に働きかけ、複合的な効果が認められると考えられています。
現在S‐RIMとして発売されているのはトリンテリックスのみですが、1日1回の服用で良いため、飲み忘れる心配が少ないメリットがあり、体から抜けるスピードがゆっくりであるため離脱症状が出にくいといわれています。
S‐RIMに分類される主な薬
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ボルチオキセチン(トリンテリックス)
抗うつ薬の副作用は? [6]、[7]
抗うつ薬の副作用は、服用を開始して最初の1〜2週間に強く出ることが多く、それ以降は落ち着いていくことがほとんどです。
抗うつ薬の服用によってみられる副作用には、口渇や便秘、悪心・嘔気、ふらつきなどがあります。
また、抗うつ薬を長期間服用した後に急に服用をやめると、離脱症状としてめまいや頭痛、耳鳴り、倦怠感があらわれることがあり、医師の指示通り服用することが重要です。
「薬をのんだらかえって具合が悪くなった」と服用を中断せず、副作用がつらい場合は医師に相談するようにしてください。
飲み忘れた場合にも同じような症状が見られることがあるため、忘れないように注意しましょう。
抗うつ薬の副作用:口渇、便秘
三環系抗うつ薬で多く見られる副作用です。
抗うつ薬の服用によって副交感神経の働きが妨げられることで、消化液や唾液の分泌が抑制され、腸の動きも悪くなります。それによって口渇や便秘の症状が現れます。
抗うつ薬の副作用:ふらつき、立ちくらみ
アドレナリンという神経伝達物質は、血中に放出されると心拍数や血圧を上げる働きがあります。
抗うつ薬がこのアドレナリンの作用を抑制することがあり、それによって血圧低下や立ちくらみ、ふらつきなどの副作用が現れます。
抗うつ薬の副作用:眠気
鼻炎の薬などで眠気の副作用があるのをご存じの方も多いのではないでしょうか。
これにはヒスタミンという成分が関与しています。
ヒスタミンは覚醒・興奮作用に関わっていますが、鼻炎の薬などはこのヒスタミンを抑制する作用があるために眠気が現れます。
抗うつ薬にもこの抗ヒスタミン作用を有するものが多くあり、眠気が生じることがあるのです。
特にNaSSAは眠気の訴えが多い新しい抗うつ薬ですが、この副作用の眠気を利用して眠前に投与することもあります。
抗うつ薬の副作用:不眠
不眠になる原因には、セロトニンとノルアドレナリンが関係しています。
セロトニン5HT₂受容体が刺激されると深い睡眠が妨げられて睡眠が浅くなり、またノルアドレナリンは覚醒作用があるため不眠の症状が出ることがあります。
SSRIやSNRIといった比較的新しい薬は、セロトニンやノルアドレナリンだけに作用するため不眠の副作用が出やすい一方、古い三環系抗うつ薬は、覚醒する作用を持つ抗ヒスタミン作用をもつため、比較的不眠の副作用は少ないです。
抗うつ薬の副作用:体重増加
体重増加の可能性が高いと指摘されているのは、NaSSAのミルタザピンです。
ミルタザピンはうつや不安の症状に対する効果に優れていますが、満腹感を生み出すヒスタミンという物質の働きを抑え、5HT2cという受容体の食欲を抑える働きもブロックするため食欲を増進させてしまいます。
この他にも三環系や四環系の抗うつ薬は体重増加の副作用が現れることがあります。
抗うつ薬の副作用:性機能障害
性機能障害には、性欲亢進、性欲低下、勃起障害、射精障害などがありますが、高頻度で出現するうえにQOLへの影響が大きい副作用です。
抗うつ剤による性機能障害にはセロトニンが関係しています。
セロトニンは、気分を落ち着かせリラックスさせる作用があるため、性欲も必然的に落ちてしまいます。
さらに、勃起には血管の調整を担うアドレナリンの作用が必要になりますが、これがブロックされることで勃起不全や射精障害になることがあるのです。
抗うつ薬の副作用:悪心・嘔気、下痢
悪心・嘔気、下痢はセロトニン再取り込み阻害作用による副作用で、特にSSRIでよくみられる副作用です。
服用を続けると数日で消失する場合が多いですが、症状が続く場合や嘔吐がある場合は医師に相談してください。
SNRIとSSRIの違いは?
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は主にセロトニンだけを増加させるのに対して、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)は、セロトニンだけでなく、ノルアドレナリンも増加させる薬です。
セロトニンを高めるSSRIは、不安感や抑うつ気分を改善する効果が高いので、不安感が強い人や落ち込むなどの症状が強い人に効果的です。
一方でSNRIは、気力や意欲を制御するノルアドレナリンも高めるため、やる気が出ない、倦怠感が強いという方に効果的です。
また、抑うつ感よりも、倦怠感が強く動かないなどの身体症状が目立つ方もSNRIの使用がすすめられます。
健康な人が抗うつ剤を飲んだらどうなる? [8]
SSRIを健康な人が服用するとセロトニン症候群などの副作用を引き起こすことがあります。
セロトニン症候群は、セロトニンが増加することで、精神症状として、不安になる、混乱する、いらいらする、興奮する、動き回るなどの症状が、神経・筋症状として手足が勝手にぴくぴく動く、震える、体が固くなるなどの症状が、自律神経症状として汗をかく、熱がでる、下痢になる、脈が速くなるなどが見られることがあります。
SSRIで見られやすいもので、急に精神的に落ち着かなくなったり、体がぴくぴく動いたり、汗が出てきて脈が早くなるなどの症状が見られた場合は、副作用を疑うことが必要です。
健康な人が薬を服用することはしないようにしましょう。
抗うつ剤は飲まない方がいい?
インターネットで様々な情報を収集できる現代、「うつ病が薬をやめたら治った」「抗うつ剤でハイになる」「抗うつ剤は脳にダメージがある」など医学的な根拠のない情報もあるようです。
また、薬物治療以外にも認知行動療法や、磁気刺激療法(TMS)などの治療法はありますが、その上で医師が抗うつ薬が治療上必要だとして処方しています。
つらい症状を緩和するため必要なものですので、自己判断でやめず必ず医師の指示に従って服用するようにして下さい。
抗うつ薬の副作用で太るのか?それはなぜ? [9]
抗うつ薬には、体重増加の副作用が報告されている薬があります。
NaSSA、三環系、パキシル、四環系とSSRI、SNRIの順で太りやすいと言われています。
体重増加の理由は以下の3つです。
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抗ヒスタミン作用による食欲増加
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抗5HT₂C作用による食欲増加
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セロトニンによる代謝抑制作用
もう少し詳しく解説します。
①抗ヒスタミン作用による食欲増加
ヒスタミンは視床下部にある満腹中枢を刺激する物質です。
抗うつ剤にはヒスタミンをブロックするものが多く、満腹中枢の刺激をとめてしまうので満腹感が得にくくなります。
さらに、ヒスタミンがブロックされると、グレリンというホルモンが増加しますが、このホルモンは摂食中枢を刺激し、食欲を増加させる働きがあります。
②抗5HT₂C作用による食欲増加
体内には様々な受容体があり、そこが刺激されることで作用を発揮します。
中でも5HT₂C受容体は、視床下部の満腹中枢にあり、これが刺激されると満腹感を感じます。
抗うつ薬は5HT₂C受容体をブロックする働きが強いものがあり、満腹感を感じにくくさせて食欲を増加させてしまうのです。
③セロトニンによる代謝抑制作用
抗うつ剤が増やすセロトニンは精神を安定させ、リラックス状態をつくりますが、それによって身体はエネルギーの消費を抑えるようになり、代謝量が少なくなって太りやすくなります。
抗うつ薬の体重増加について
うつ病の症状には食欲減退や味覚異常、活動量の低下などがあります。
うつ病の症状が出ている時には気分が落ち込んで食事を楽しめなくなる他、空腹を感じなくなるなどで体重が減少することがあるのですが、治療を開始して抗うつ薬の効果が出てくると症状が改善されて太ってしまうということがあります。
つまり、治療効果が現れているということでもあるのです。
抗うつ薬の副作用で体重増加しやすくても、運動や食事管理でコントロールすることも可能ですので、主治医と相談しながら薬を選択していきましょう。
抗うつ薬を飲むと性格が変わる?感情がなくなる?
SSRIを含め、うつ病に用いられる薬は患者さんの性格を変えるというものではありません。また、抗うつ剤で感情がなくなるということはありません。
セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質を増加させるもので、精神状態を安定させるものです。
服用において不安なことがあれば、主治医や薬剤師に相談するようにしましょう。
抗うつ薬の強さは?強さランキング [10]、 [11]
抗うつ薬の強さについては三環系>SSRI=SNRI=NaSSA>その他>四環系の順だといわれています。
三環系抗うつ剤は、一番歴史の古い抗うつ薬で強力な抗うつ作用がありますが、副作用も強いため現在はバランスの良いSSRI、SNRIが多く使用されています。
四環系抗うつ薬は効果はマイルドですが、その分副作用も出にくいです。
効果の出方には個人差がありますが、オックスフォード大学Andrea Cipriani氏がまとめた抗うつ薬メタ解析論文を参考にランキング化すると表のようになります。
順位 |
商品名(成分名) |
第1位 |
トリンテリックス(ボルチオキセチン) |
第2位 |
レクサプロ(エスシタロプラム) |
第3位 |
リフレックス(ミルタザピン) |
第4位 |
トリプタノール(アミトリプチリン) |
第5位 |
パキシル(パロキセチン) |
Q&A
抗うつ薬について、多くの方が感じる疑問についてお答えします。
この記事を読んで解決しない疑問については、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
抗うつ薬の代表例は? [12]、[13]
現在一般的に使用される抗うつ薬は、SSRIまたはSNRIです。
昔は三環系抗うつ薬と呼ばれるタイプが主でしたが、三環系抗うつ薬は、口渇や便秘、眠気、ふらつきなどの副作用が強いためあまり使われなくなりました。
とはいえ、SSRIでは吐き気、SNRIでは尿閉といった副作用が起こる場合がありますが、三環系抗うつ薬より弱いです。
軽いうつ病では薬物治療の前にまず、考え方や生活環境を調整する認知行動療法などが行われ、並行して行われる薬物療法では不眠や不安、焦りなどの症状を緩和する睡眠薬や抗不安薬を服用したりします。
それでもうつ病の症状が改善しない場合や、日常生活に影響を与えるほどの症状がでている場合はまず、SSRIまたはSNRIが処方されます。
しかし、SSRIやSNRIで効果が見られない場合は増量やほかの抗うつ薬への変更が検討されることがあるようです。
最強の抗うつ薬は何ですか?
ランキングのところで先述した通り、オックスフォード大学Andrea Cipriani氏による抗うつ薬のメタ解析によると、有効性は2019年に発売されたトリンテリックスが最も高いとされています。
従来のSSRIの働きに加えてセロトニン受容体を調節する作用を持っており、この働きにより感情をコントロールするセロトニンのみならず、ストレス刺激に関与するノルアドレナリンやホルモン分泌や睡眠に関与するヒスタミンの遊離を促進する働きもあります。
つまり複合的な効果を期待できるといえるでしょう。
また、SSRIに比べて副作用が少ないという報告もあり、総合的に判断すると現段階ではトリンテリックスが最強の抗うつ薬といえるでしょう。
また抗うつ薬でよく用いられるSSRIの中では、パロキセチンが副作用も多いが効果も高いといわれているようです。
抗うつ薬が効いてくるとどうなる?
抗うつ薬のほとんどが、即効性はなくある程度の期間継続することで効果があらわれるといわれており、およそ10日から2週間前後で効果が見られることが多いようです。
効いてくると徐々にイライラや不安を感じることが減ったり、抑うつ気分が改善したりします。
抗うつ剤と精神安定剤の違いは何ですか?
安定剤は、苛立ちや不安感、緊張感を緩和する作用があるのに対して、抗うつ薬は、うつ状態を改善する薬で、意欲低下や抑うつ感を改善する薬です。
作用機序は明確に異なりますが、不安を和らげる点などで効能が重複する側面もあります。
まとめ
うつ病かなと思われる症状がある方は一人で抱え込まず、医療機関を受診することをおすすめします。
精神科医や臨床心理士によって、ストレスをうまく解消する方法や物事の前向きな受け止め方などのアドバイスを受けながら、薬物治療などの治療を受けることができます。
うつ病の治療では、十分な休養や環境調整、カウンセリングなどの治療を行ったうえで必要に応じて抗うつ薬が処方されますが、抗うつ薬は一般的に半年以上の十分な期間、十分に効果が発現する量を服用することが必要です。
急に服用をやめたり医師の指示なしに減量して服用したりすると、うつ症状が改善せず慢性化してしまうことがあります。
抗うつ薬が処方された際には、主治医の指示通りしっかり服用するようにして下さい。
参考文献
[1]うつ病とは - 原因、症状、治療方法などの解説 | すまいるナビゲーター
[2]3 うつ病の治療と予後:ご存知ですか?うつ病 - こころの耳
[5]抗うつ薬の分類とその特徴について - 杉浦こころのクリニック
[6]抗うつ薬の種類や効果、副作用、正しい使用法について - NHK
[7]【精神科医が解説】抗うつ剤によくある副作用と対策とは?
[8]セロトニン症候群 - 22. 外傷と中毒 - MSD Manuals
[10]抗うつ薬の強さランキング 人気の処方薬や副作用の少ない薬を紹介
[11]うつ病の薬物治療 最新(2018年)の抗うつ薬の比較|川崎市の高津 ...
[12]うつ病のアルゴリズム治療