認知症の人はなぜ徘徊する?原因と実態・対策を徹底解説
徘徊は認知症の症状の1つ
徘徊は認知症の症状の1つで、行動・心理症状(周辺症状・BPSD)に分類されます。
認知症の行動・心理症状(周辺症状・BPSD)は、お薬などで症状を軽減できるケースがあります。
また、認知症になったからといって、すべての人が徘徊するわけではないことを知っておきたいですね。
さらに認知症の人の徘徊は、周囲の人から見るとどこに行くのか、なぜ出かけてしまうのかがわからないケースがほとんどです。
しかし、当事者にとっては明確な理由があるため、徘徊を止めることはとても難しいのが実状です。
たとえば買い物したり誰かに逢ったり、仕事をしたいと外出したものの道に迷ったり、今いる場所や時間がわからなくなったり、出かけた目的がわからなくなったり、昔の生活をしていると勘違いしていたり…と、いろいろな理由が隠れているのです。
お一人おひとり異なる徘徊の理由が少しでも理解できると、徘徊を回避できるきっかけづくりや行方不明になった際の早期発見につながるかもしれませんね。
認知症の徘徊の実態~警視庁と愛知県警の調査から紐解く~
警察庁の報告によると行方不明届が出された認知症の人の数は、2022年に全国で1万8,709人です。
2012年からの10年で約2倍に増えています。
しかし、これは行方不明届が出された人数。
実際に徘徊している方の数はもっと多いと考えられます。
あまり報道されてはいませんが、警視庁の報告によると徘徊が原因で行方不明になった方のうち、残念なことに491人の死亡が確認されています。
そのため、認知症の徘徊に気付いたら、一刻も早く見つけることが重要です。
行方不明になってから時間が経てば経つほど、遠くに行ったり、体調を崩したり、最悪の場合死亡してしまう可能性が高くなるからです。
これは、生存者の発見時間と志望者の発見時間をまとめた愛知県警の報告でも明らかです。
徘徊が原因で行方不明になった場合は、早く気付き、通報して、捜索を開始することが、とても重要なのです。
また、徘徊が原因で行方不明になった時間帯は、以下のとおりです。
日中が一番多く、8~16時の8時間で60%の人が行方不明になっています。
しかし、20~翌4時までの8時間でも、約10%の人が徘徊が原因で行方不明になっていて、夜間でも徘徊による行方不明のリスクは少なくないのです。
行方不明になった際の移動手段としては、約70%が徒歩でした。
また、自転車や自動車で徘徊してしまった人も約10%ほどおり、さまざまな方法で徘徊し行方不明になっているようです。
参考:
令和4年における行方不明者の状況 警察庁生活安全局人身安全・少年課
第2章 認知症高齢者の徘徊の実態 認知症高齢者の徘徊対応マニュアル 愛知県警
徘徊する認知症の人への対応
では徘徊についてどのように対処すればよいのでしょう。
徘徊をする人にしてはいけない3つのNG行動とその理由、対処方法を紹介します。
- NG行動1 徘徊=問題と考える
- NG行動2 行動を抑制する
- NG行動3 気持ちを無視したその場限りの行動
NG行動1 徘徊=問題と考える
前述のとおり周囲から見れば、理由なく徘徊しているようにみえても、本人にはさまざまな理由があります。
例えば、仕事や買い物に行きたい、今いる場所が落ち着かない、居場所がないと感じている‥。
不安や恐怖、孤独感が徘徊の誘因となっているケースも多く、本人の気持ちを和らげたり落つかせたりすることで、徘徊が減ったりなくなったりするケースもあります。
徘徊を問題行動と考えず、なぜ徘徊してしまうのか考えてみるようにしたいですね。
NG行動2 行動を抑制する
徘徊をやめさせたいと、部屋や家に閉じこめたり、行動を制限した対応をする方も少なくありません。
しかし、これは手段を制限するだけで、徘徊そのものを辞めたいという気持ちには繋がらず、窓からでかけるなど予想外の手段・方法で出ていってしまうことも…。
なぜ徘徊するのかを考え、原因を取り除くほうがより効果的な対応といえるでしょう。
NG行動3 気持ちを無視したその場限りの行動
徘徊をしないようにすることは、簡単なことではありません。
出かけたいという衝動はなかなか抑えられませんし、一度抑えられても長くは続かないことがほとんどです。
そのため、本人の気持ちを無視したその場限りの行動は避け、気持ちや理由に応じた対応がおすすめです。
認知症の徘徊に困ったら~最新技術を活用した対策~
認知症の徘徊を完全に止めることはできません。
しかし、さまざまな方法を取り入れることで、徘徊を未然に防いだり早期発見につながったりする可能性が高くなります。
- 生活リズムをつける
- 本人の気持ちや徘徊の理由を理解する
これらの対応をすることで、本人の生活にメリハリがつき夜間よく眠れるようになって、夜の徘徊が減るかもしれません。
また、本人の気持ちや徘徊の理由を理解することで、不安や焦燥感が軽減され、徘徊したい理由がなくなる可能性が高くなります。
また、本人が開けにくいように自宅の鍵を交換するケースもありますが、窓や他の出入り口から出かけてしまうケースもあるため、注意が必要です。
認知症の人の徘徊対策におすすめの2つの方法をご紹介します。
- 人感センサーをつける
- GPSをつける
1つ目は、人感センサーを付けることです。
人が通ると音や光で知らせる人感センサーを付けると、知らない間に出かけてしまったということが減らせるかもしれません。
2つ目は、GPSをつけることです。
GPSを装着したからといって、認知症の人の徘徊をゼロにできるわけではありません。
しかし、GPSは知らない間に徘徊してしまったときに、現在地を把握し早期発見に繋げるために有効なアイテムです。
靴や携帯電話、財布、鞄などご本人がいつも持ち歩く物に、装着するのがおすすめです。
GPSを装着せずに外出したり、GPSの電池が切れていたりして位置情報が特定できないということがないように注意しましょう。
鍵や人感センサー、GPSなど複数のアイテムを組み合わせ、認知症の人の徘徊予防と徘徊時の早期発見に繋がるような対策がおすすめです。
まとめ
認知症の人の徘徊は、認知症にともなう症状の1つです。
認知症による徘徊は、患者さんが抱える不安や過去の記憶、現在の環境への混乱から生じます。
徘徊をする人の理由や目的、方法は一人ひとり異なりますし、全く徘徊をしない認知症の人もいて個人差が大きいです。
徘徊の予防には、日常生活のルーティンの維持、安全な環境の提供、アイデンティティを確保するためのアイテムの使用が効果的です。
出かけたいというご本人の気持ちや目的などを理解し寄り添うことで、出かけたい衝動を軽減し、その結果、徘徊の頻度が減る可能性があります。
万が一の徘徊時には、迅速な対応が重要となり、ときにGPSセンサーや周囲の人々との連携が有効です。
さらに、認知症の治療をおこなうことで、徘徊を減らすことに繋がるかもしれません。
介護をされている方にとっては、患者さんを見守りつつ、自身の心身の健康管理も怠らず、サポート体制を整えることが大切です。