カウンセリングとは?
カウンセリングとは、悩みや不安についてカウンセラーと対話をすることで解決の糸口を掴むためのものです。
カウンセラーは基本的に相談者の悩みを傾聴します。相談者はカウンセラーと話すことで頭の中を整理したり、問題点を見つけ出したりしていきます。
このような一連のプロセスを通して、相談者が抱える問題を解決し、健全に生きていけるようにサポートするのがカウンセリングの役割です。
カウンセリングの目的
カウンセリングの目的は、相談者が考え方を整理したり、新たな気づきを得たりして悩みを解決していくことです。
カウンセリングを受ける方の悩みは、仕事や家族関係、過去のトラウマなど多岐にわたります。
相談内容により、カウンセリングの最終的な目的は変わってきますが、相談者のストレスや悩みを改善し、より良く生活するための手助けをするという点では一致しています。
カウンセリングの流れ
カウンセリングは大まかに、初回面談→アセスメント面談→継続面談→カウンセリングの終了、という流れで進んでいきます。
それぞれの段階について詳しく見ていきましょう。
それぞれの段階について詳しく見ていきましょう。
- 初回面談(インテーク面談)
カウンセリングにおける初回面談のことをインテーク面談とも呼びます。
初回の面談では相談者が抱える悩みや問題を確認するほか、家族構成や生い立ち、どういう支援を望んでいるかなどを把握していきます。
カウンセラーは初回面談により今後の支援の方針をたて、どのようなアプローチをしていくかを決定します。
初回面談は、その後のカウンセリングをスムーズに進めるために最も重要な過程です。
- アセスメント面談
初回面談の内容をさらに深く掘り進めたり、さらなる情報共有のためにアセスメント面談を行うことがあります。
アセスメント面談を行うことで、より詳しい支援策をたてて解決への道筋を探るのです。
初回で充分な情報収集ができていれば、アセスメント面談は行わずに次の継続面談へと移ります。
- 継続面談
初回面談・アセスメント面談で問題解決の方向性を決定したあとは、継続面談で実際に解決に向けて取り組んでいきます。
具体的には、心理療法に取り組んだり、事前に話し合った改善策に取り組んだりします。
カウンセリングが進んでくるこの頃は、カウンセラーと信頼関係が築けてより深い話し合いができる時期です。
- カウンセリングの終了
カウンセリングを終了するのは、相談者が自分で問題解決に取り組めるようになったときや、ストレスが改善されたときです。
カウンセリングの終了時点は相談者によって異なりますが、カウンセラーは相談者が自信をもって日常に戻れるようにサポートします。
日本ではまだカウンセリングが一般的ではないこともあり、相談者はカウンセリング自体を不安に思っていることもあります。
カウンセラーは、相談者が安心して相談できるよう信頼関係を築くことが重要です。
しっかりとした信頼関係を築くことでカウンセリングの中期には、より深い相談ができるようになり、さらなる気づきやサポートに繋がっていきます。
カウンセリングの方法
カウンセリングはカウンセラーとの対話を基本としますが、その他にもさまざまな手法を用いて相談者の状況を把握し、問題の解決に繋げます。
ここではカウンセリングで使われる手法について説明します。
認知行動療法
認知行動療法とは、物事のとらえ方(認知)に働きかけて悩みを改善していく心理療法です。
「認知」は、今まで学んできたことや経験から形作られます。これは考え方の癖のようなものです。私達はこの認知の仕方によって物事の解釈や感情が大きく変わります。
この認知に歪みがある場合、起こった出来事をネガティブに受け取りやすくなり、正常な判断ができなくなるのです。
認知行動療法では、この認知の歪みを整えてストレスを軽減することを目的としています。
EMDR
EMDRとは、PTSDなど過去のトラウマが原因となる精神疾患の治療のために確立された、比較的新しいカウンセリング方法です。
相談者は、トラウマとなった過去の出来事を思い浮かべながら、カウンセラーが左右に振る指を眼球だけで追います。
とても単純な作業ですが治療効果は高く、この方法を繰り返すことで比較的早い時期にトラウマの解消が期待できます。
EMDRは脳の情報処理のプロセスを利用した手法であり、相談者の負担が少ない画期的な治療法といえるでしょう。
しかし、EMDRを行うためには専門的な知識が必要であり、誰にでもできるものではない点に注意が必要です。
グループ・カウンセリング
グループカウンセリングは、複数の相談者が集まって行うカウンセリングです。
1対1で行うカウンセリングのように個々人の深い話はしにくくなりますが、同じような経験をした相談者が集まることで、自己理解が進んだり、行動の変化に繋がりやすくなります。
心理療法の多くは保険が効かないため、費用が高額になりやすいのですが、グループカウンセリングは比較的低料金で受けることができます。
箱庭療法
箱庭療法は、砂の入った箱にミニチュアを置いて自由に遊ぶことで、心の中を表現する治療法です。
自分の気持ちに気づくのが苦手な方や、気持ちを表現するのが得意でない方に適しています。
以前は、主に子供に用いられていましたが、現在では子供からお年寄りまで幅広く用いられています。
表現の幅が広いことや作品を客観的に見られること、無意識のものを表現できることなどがメリットです。
心理検査
心理検査とは個人の特性や性格の傾向、知能、発達などを客観的な指標で確認するための検査です。
人には自分が意識できている部分と意識できていない部分(無意識)があります。
心理検査では意識できている部分だけでなく、無意識の部分も把握し、平均値と比較することで、自分の傾向を客観的に確認することができます。
これをもとに自己理解を深めて問題の解決に役立てていくのです。
また、心理検査は治療効果の確認や、より適したプログラムに修正するためにも使われます。
カウンセリングの効果はあるのか
カウンセリングには実際にどのような効果が認められているのでしょうか。
カウンセリングの基本はカウンセラーによる傾聴です。話すこと自体に気持ちをスッキリさせる効果があるほか、悩みを言葉にすることで状況を整理するのに役立ちます。
相談者は自分の悩みや気持ちをしっかりと聞いてもらい、理解をしてもらうことで自信がつき、問題に向き合えるようになるのです。
また、カウンセラーは専門的な観点からアドバイスをしてくれることもあります。自分とは違う視点の意見を聞くことで、新たな気づきにつながります。
このようにプロのカウンセラーからの支援を受けることは、さまざまなメリットがあり、問題の解決に向けた大きな力となるでしょう。
カウンセリングは誰がおこなうの?カウンセリングに必要な資格とは?
カウンセリングを行うために必ず必要な資格はありませんが、一般的には「公認心理師」や「臨床心理士」など、心理系の資格をもつカウンセラーが行います。
公認心理師は比較的最近できた資格で、心理系のなかで唯一の国家資格となります。
臨床心理士は民間の資格ですが、今のところ公認心理師と大きな役割の違いはありません。
心理系の資格は他にも、スクールカウンセラーや精神保健福祉士、メンタル心理カウンセラーなど数多くあります。
カウンセリングが必要な人とは?
カウンセリングはどのような人が受けるものなのでしょうか。
悩みはあるけれどカウンセリングを受けるべきかわからない、と感じることがあるかもしれません。
また、カウンセリングはうつ病などの精神疾患の治療のためのもの、というイメージを持つ方もいるでしょう。
結論としては、何らかの悩みや苦しみを抱えていて現状を改善したいと思う方であれば、誰でもカウンセリングを受けることができます。
次にカウンセリングが必要な方の例を挙げます。
- 家族や職場、学校でのトラブルや悩みを抱えている
- トラウマを抱えている
- 将来について悩んでいる
- 自分の性格や性質を理解したい
- 精神疾患を抱えているが、薬物療法だけでは効果が十分ではない。または再発の可能性がある
このような悩みを抱えている方は一度カウンセリングを受けてみても良いでしょう。
カウンセリングが受けられる場所と料金
カウンセリングに対応できる機関は、病院やクリニック、公共機関、民間のカウンセリングルームなど、数多くあります。
また、どこでカウンセリングを受けるかによって料金やカウンセラーの資格の有無などに違いがあります。
ここではカウンセリングを受けられる場所と料金について解説します。
医療機関
精神科や心療内科のなかには、治療の一部としてカウンセリングを行っているところもあります。
しかし、すべての精神科や心療内科でカウンセリングを受けられるわけではありません。
医療機関で受けるカウンセリングというと、保険診療と思われがちですが、保険が適応されるのは医師の診断により必要性が認められた場合です。
そのため、一定の条件を満たす場合を除いては自由診療となります。
医療機関で受けるカウンセリングが保険適応になるのは、主に以下の条件に該当する場合です。
- 気分障害で認知行動療法・精神分析療法を受けたとき
- 特定の精神疾患で通院・在宅精神療法を受けたとき
- 標準型精神分析療法を受けたとき
保険診療になる場合はかかった料金の1〜3割の負担になるため割安となりますが、自由診療の場合は1回(60分)あたり5,000〜10,000円ほどの料金がかかります。
民間の機関
民間企業が運営するカウンセリングには、さまざまな形態があり、対面で行うカウンセリングの他に、メールや電話を使ったオンラインカウンセリングもあります。
カウンセリングの形態をご自身の状態に合わせて選べることがメリットといえます。
民間のカウンセリングでは、カウンセラーの資格有無や、カウンセリングの内容に違いがあるため、予約の前に詳細を確認をすると良いでしょう。
料金は対面でのカウンセリングで1回(60分)10,000円前後のところが多いようです。
公的機関
国や自治体が設置する公的な機関でもカウンセリングを受けられることがあります。
- 保健所、精神保健福祉センター
不安や悩み全体について、保健師や精神保健福祉士などの専門家に相談できます。
- 児童相談所
18歳未満の子供に関するあらゆる相談を受け付けています。
- 療育センター
子供の発達に関する悩みを受け付けています。
発達に問題がある子どもに対して療育を行う機関でもあります
- 教育相談所
児童に関する相談を幅広く受け付けています。
いじめや不登校など学校に関する相談から、進路や就職の相談にも対応しています。
- 女性センター
「女性の地位向上」や「女性の社会参画」を目的とする機関です。
女性が抱える問題全般を相談できます。DVにも対応しています。
公的機関では、内容により相談先が別れています。どの機関に相談すべきか分からないときは、市役所などに問い合わせてみると良いでしょう。
公的機関でのカウンセリングは基本的に無料で受けられます。
カウンセリングの効果はどれくらいの期間で実感できる?意味がないと感じたら?
カウンセリングは、数回で終了することもあれば数年に渡って継続することもあるため、効果が実感できるまでの期間は一定ではありません。
相談の内容や相談者の状況、カウンセリングの頻度により大きく変わってくるものです。
しかし、カウンセリングを受けていて意味がないと感じる場合、いくつかの理由が考えられます。
まず1つ目は、カウンセラーとの相性です。
相談者はカウンセラーと信頼関係を築くことで安心して対話ができ、理解してもらえたという感覚を持つことができます。
この感覚が問題に向き合っていくために必要不可欠です。
しかし、カウンセラーとの相性が合わなかったり、カウンセラーが未熟だったりする場合、信頼関係を築くことが難しくカウンセリングの効果を感じにくくなります。
この場合は、カウンセリングの進め方について見直すか、悩みに合わせてその分野を得意するカウンセラーを選ぶなど、今後の対応を検討する必要があるでしょう。
2つ目は、相談者がカウンセリングに期待をしていなかったり、自ら進んでカウンセリングを受けていない場合です。
カウンセリングは相談者とカウンセラーが対話を繰り返すことで問題を整理したり、新たな気づきを得たりしていくものです。
そのため、相談者が能動的に参加していない場合は効果を感じにくくなります。
3つ目としては、変えられない部分を変えたいと望んでいる場合です。変えられないものの代表として、「他人」や「生まれ持った性質」があります。
カウンセリングに期待できることは、悩みや状況を整理すること、相談者自身の性格・性質を理解することです。
そして、そこから新たな気づきを得て問題の解決に取り組んでいきます。
カウンセリングには、変えられる部分と変えられない部分があることを理解したうえで進めていくことが大切です。
Q&A
カウンセリングとは何をする?
カウンセリングで主に行われることは、カウンセラーと相談者の対話です。カウンセラーは基本的に相談者の話を傾聴します。
相談者は話をすることで状況が整理できたり、問題を客観的にみることができるようになります。
また、肯定的に理解を示してもらうことで自己肯定感が上がり、前向きに問題に取り組めるようになるのです。
このように、カウンセリングではカウンセラーとの対話を通して、抱えている問題に向き合い、解決の糸口を探していきます。
カウンセリングはどんな人が受けるべきですか?
カウンセリングが必要となるのは、悩みを解決したいと思っている方、ひとりでは問題の解決が難しいと感じている方です。
深い悩みを持ち続けていると、場合によっては精神疾患につながることがあります。
ひとりで悩みを抱えて苦しい思いをしている方は、ぜひ一度、カウンセリングを検討してみてください。
心療内科とカウンセラーの違いは何ですか?
心療内科とカウンセラーの一番の違いは治療を目的にしているかどうかです。
心療内科では、ストレスや心理的な原因で起こる心身症に対して、薬物療法や心理療法を用いた「治療」を行います。
一方でカウンセラーは、相談者の悩みに寄り添うことで問題の解決をサポートすることを目的としています。
心療内科でカウンセリングを行うこともありますし、カウンセリングで心療内科など医療機関を案内されるケースもあるでしょう。
しかし、両者は「治療」を目的にしているのか「悩みの解決」を目的にしているのかという部分で異なります。
カウンセリングで何を聞かれるのでしょうか?
カウンセリングは、相談者が悩みや気持ちを話すことが主体となります。
話の内容が決められているわけではないので、辛いと感じていることや考えていることは何でも伝えてかまいません。
順序立ててうまく伝えようとする必要もありませんし、話したくない事を無理に話す必要もありません。
話に詰まったときはカウンセラーが適切な質問で導いてくれるばずです。
相談者は、悩み事について素直な気持ち・正直な気持ちをカウンセラーに伝えると良いでしょう。
まとめ
ここまで、カウンセリングの効果や方法、どのような人がカウンセリングを受けられるのかについて説明してきました。
カウンセリングは、プロのカウンセラーが相談者に寄り添いながら、悩みの解決を目指していくものです。
人生で、悩みを全く持たずに生きることはできません。悩みを放置しても解決しにくいだけでなく、うつ病や適応障害につながることもあります。
日常に悩みを抱えている方であれば誰でもカウンセリングを受けることができるため、つらい気持ちをひとりで抱え込んでいる場合は、一度カウンセリングを検討してみてください。